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第5話 たくさんの勇者の存在とベールカー王国史

今回は、異世界の歴史のお勉強が含まれます。

 では、勇者についてのお話をしましょう。


「勇者についてなんて、説明必要かな? 私でも分かるよ。この世界を救うために召喚された人のことでしょ」

 その通りですが、一応、ご説明をさせて頂きます。


 勇者とは、あなたの元いた世界からこちらに転移させられた方のことで、あなた達の代は三度目の召喚でした。毎年、あなたの世界の一クラス単位で召喚をおこなっているため、百名以上の勇者がこちらの世界にいます。

 あなたの職業は勇者ではありませんでしたが、転移させられて来たという定義からすれば、あなたも勇者様です。


「なんで私はシーフだったの?」

 職業は勇者、剣士、魔法使いなど、個人によって違います。あなたは、たまたまシーフとなったのです。ただ、シーフは万引きのようなスキルを持ち合わせてはいません。

「万引きはスキルじゃないよ!」

 窃盗罪ですね。

「分かってるじゃん!」


 スキルは、勇者全員にもれなく一つ無料で与えられている異世界能力があります。

「応募者全員サービスみたいなノリだなー……」

 あなたのリバースという異世界能力は、特定の発動条件で使用出来ます。使いかたを間違えなければ、一気に有利になる素晴らしい力となるでしょう。

「そういうのに限って、使い勝手が悪いんじゃない?」

 それは使ってからのお楽しみです。

「ふーん……」


 異世界能力を制御するのが、異世界道具となります。

 先ほど、ドロワーズをご覧になったあなたを興奮の渦に巻き込んだサキュバス型フィギュアがそれです。

「その説明の大部分は不要だよね」


 異世界能力を使うには、魔力が必要となります。異世界ステータスと違い、数値では表せませんが、あなたの魔力は質が非常に高いです。

 また、あなたの魔力の総量はそこそこあり、さらには異世界道具のバス子の魔力量も含まれるため、魔力切れにはなることはありません。


「魔力切れになったら、やっぱり魔法が使えなくなるのかな?」

 それだけではなく、あなたの体力が1だということも関係してきます。魔力切れになったら気絶する可能性がありますので、お気をつけ下さい。

「どう気をつければいいのか分からないけど、覚えておくね」

 よろしくお願いします。


 ちなみに、ベールカー王国の二十代の男女では、ステータス数値の平均はおよそ10前後となります。レベルを上げれば能力値はご自身の素質にも左右されて変動しますので、1が低いということだけ分かれば、とりあえずは大丈夫です。

「今の説明がなくてもそう思ってたよ」


 お次は、勇者が召喚された理由をお話しましょう。


 もちろん魔王討伐のためです。

「うん、知ってた」


 軽くこちらの世界の歴史について、語らせて頂きます。


 このベールカー王国は島国で、代々王様が国を治めていました。


 ある日、国土の北側で魔王軍が魔族の国の建国を宣言し、進撃を始めてからは、魔王軍との交戦の時代に突入しました。

 魔王軍側が仲違いで各地に戦力が分散したこともあり、長年、戦況は拮抗したまま、現在に至っております。


 三年ほど前に、ベールカー王国側は異世界召喚の魔法をついに編み出しました。


 異世界から別の人類を呼ぶことによって、その人類が強大な能力を持つ者……勇者になるということを発見したのです。以来、一年ごとに勇者を集団で召喚しています。

「年に一回なのは何か理由でもあるの?」

 はい。召喚では膨大な魔力を必要とするからです。


 本日おこなわれた三度目の勇者召喚によって、さらなる戦況の優勢が期待されます。今年は、一発逆転の能力を秘めたあなたも召喚されたのです。近いうちに魔王軍を撃破し、この国が全ての国土を回復するのも時間の問題でしょう。


「バス子さんがサキュバスなら、魔王側の悪魔なんだよね? 私が魔王系シーフだから、魔王系の異世界道具が与えられたの?」

 いいえ。バス子は魔族の一種ではありますが、あなたの道具で、あなたの奴隷です。

 一方であなたも、魔王とは関係のない勇者様です。


 あなたの味方のバス子は、あなたさえお望みでしたら、あのフィギュアの体も、お捧げいたしますよ?


「あー、そういえば、さっきのフィギュアさ、……私がこんなこと言っていいのか分からないけど、サキュバスなのに、胸部の膨らみが全然なかったよね」


 は?


「今っ! 殺意に近い声が出てたよバス子さん!」


 あなたのご意見に対して、申し上げます。

 お胸は大きくても邪魔なだけですし、あなたのお手を取って強引にお胸へとぴったりきっちりと密着させれば、大きいか小さいかは関係なくなるに違いありません。


 失礼なあなたは、あなたの最後の味方さえも失望とさせようとするのでしょうか? 失望は憎しみを生みます。憎しみで胸が引き裂かれそうな思いになる! 胸が! お胸がッ! 膨らみが全然なかった最低限以下のお胸がッ!

「そういうつもりで言ったんじゃないのっ、ごめん!」


 あなただって、ぺったんこじゃないですか。


「もうちょっと言葉を選んでほしかったな! そもそも私は人間なの! サキュバスじゃないから胸部なんてどうでもいいの!」


 そうですか。

「さっきから言いかたが冷たい!」


 それで、再び歴史のお話に戻りますが、現在の国王様は、即位してすぐに、王妃様を魔王軍にさらわれてしまいました。それから三十年もの間、王妃様は消息不明となっています。


 国王様は王妃様を愛していました。救出をしようと何度も試みたものの、内政の問題もあり、未だに王妃様の救出を出来ていないことに心を痛めているようです。そのため、あなたが魔族の手下だと疑われた時に、急に態度を翻したのでした。


 どうか、国王様をあまり責めないで下さい。


「……あの最低の王様にも、まあ事情があったんだね」


 ですが、あの国王様は異世界から招いたあなたをこんな牢に幽閉するなどという、あり得ない大失態を犯しました。

 また出会う機会があったら、あの最低な王様をブッコロスべきです。

「かわいい声で物騒なこと言わないでよ!」

 かわいいなんて褒められてしまいましたぁ~!

「それで結局、王様をどうすればいいの?」


 お互いに嫌い合っているでしょうから、今は放置で構いません。

 あなたは、魔王を倒すことに専念して下さい。魔王さえ倒せば、召喚時の契約が完了しますので、勇者達は元の世界に戻ることが出来るはずです。


「あの王様の利益になるのは納得がいかないけど、ひとまず、魔王討伐が目標ってことでいいんだよね」

 はい、そうです。


「まあ、南君……ハム君がやってくれるでしょ。他にも優秀な人がいるでしょうし」


 ただ、昨年と一昨年の勇者の方々は、それなりに成果は挙げているものの、魔王軍はまだまだ健在です。魔王の支配する魔族の国は北側にありますが、そちら以外にも別の魔族が支配する地域が東西南北にいくつも点在します。

「ざまあみろと言いたいところだけど、この国、もう詰んでない?」

 ですから、たくさんの勇者様のお力を必要としているのですよ。


 とりあえずあなたは一週間、不本意でしょうがこちらの牢屋で過ごし、一般の人材オークションで落札されるのを願って生き続けましょうか。

「一週間もこんなところで過ごすの? あの端っこにある簡易便器しかないって、マジで信じらんない!」


 あなたのお漏らしシーンなんて見たくもありませんが、我慢いたします……。


「漏らさないよっ! トイレだけでも牢屋の外のが使いたいんだけど!」

 それは難しいでしょうね。

「無罪の人間がその程度の願いすら叶えてもらえないの?」

 はい。一週間、大変でしょうが、頑張って下さい。


 さて、お次は冒険者についてです。

「切り替え早いね!」

まともなお手洗いがないという状況は、大変辛いですよね……。


最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

次回は冒険者のご説明となります。

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