第46話 プレートをつけましょう
自動車のエンブレムは、イギリス車だと左右に翼が生えているものが多いです。
「魔物用のプレートはどれになさいますか?」
職員さんが辞書のように分厚い書物を持って来て、複数のプレートの見本の描かれたページを見せてきます。
登録された魔物には、服従していることを知らせるためのプレートを、見える部分に装備する義務があるのです。
プレートは、長方形や円形、星形もあれば人を真横にしたような形もあります。これらのプレートから、良さそうなものをお選び下さい。
「どうしよう……」
あなたは見本を見比べ始めました。
「じゃあ、これでいいかな」
上部三点が尖った少し横長の冠型で、色はシルバーのものをあなたは指差します。
「表記はパーティー名のアルファベット式でよろしいですか?」
職員さんは、冒険者パーティー名をアルファベットでプレートに刻印するのかと聞いています。
「はい、それでお願いします」
プレートの刻印は冒険者パーティー名でなくても構いませんが、冒険者パーティー所属の魔物だったら、パーティー名が一番無難です。
「しばらくお待ち下さい」
職員さんは席を立ち、奥の戸棚へと向かいました。
あなたは、大人の対応をしましたね。先ほど怒りを感じた相手にも、丁寧に敬語で返したのです。
「私はまともな人間だから当然だよ」
さて、戻って来た職員さんは、ご注文のプレートを手にしていました。カウンターの上にプレートを置いて、人差し指で文字を刻みます。その間、彼女の指は金色の魔力の光に包まれていました。
「出来ました。どうぞ」
あなたは職員さんから銀色の冠型プレートを受け取りました。眼鏡ほどのサイズで、中央の左から右にかけて、SuccuRiverSと黒字で刻まれています。大文字と小文字がきちんと使い分けてあるのが高評価点です。
そちらを、パスちゃんの頭の正面に装着して下さい。載せればくっつきます。
「おお! ほんとだ!」
「どうですか、上様……」
「思ってたよりかわいいよ、パスちゃん!」
プレートはティアラのような形状ですので、パスちゃんが小さなお姫様みたいになりましたね。
あなたは愛娘の成長を喜ぶ母親のような笑顔でしたが、こちらの世界ではプレートは隷属化の象徴です。現地人のミリーナさんはあまり良いお顔をしていませんでした。
「これでその魔物は登録済みとなりましたが、人権が得られたわけではないということを、念のためにご忠告しておきます。人間に襲われても保証は一切ないので、お忘れなきようにお願いします」
職員さんはそのように述べて、申込書の控え二枚を渡してきました。
あなたは受け取った控えを便利な収納魔法で収納しようと右手を後ろに回しましたが、スカートの内側に入れる必要があることを思い出し、ひとまず、持ったままにします。
「……バス子ちゃん。この国だと魔物は嫌われているのに、なんで登録が出来るの?」
登録費で儲かるからです。
「やっぱお金か!」
それに、嫌われているからこそ、人間よりも魔物が劣った存在だとプレートではっきり示せることが、この国の人間にとっては誇らしいのでしょう。
「この国、最低だよ」
あっ、それとは別の理由もありました。
こちらの町フレイトでは、王都に比べて魔物に対する好感度が高いのです。
「え、そうなの?」
はい。かつて、強力な魔物と契約を交わした魔物使いが、町の発展に貢献した歴史があります。
あなたもご存じの通り、魔物さんはかわいい女の子姿の場合が多く、一部のフレイト町民は魔物と仲が良いのです。もちろん、嫌っている人もいますけれど。
「その嫌っている人というのは、恐らく私の敵だろうね。この国の人間はマジで信用出来ないから気をつけなくっちゃ」
あなたの確かな経験論でした。
プレートは好きな車のエンブレムを参考にしました。
今回も最後までお読み下さり、ありがとうございます。




