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第44話 あなたは報復を目の当たりにする

今回は第44話となります。

4が2つ続くものと言えば、イギリスで最も伝統という言葉が似合うスポーツカー、モーガン4/4(フォー・フォー)がすぐに思い浮かびます。

伝統という言葉は好きですが、悪しき伝統というものもあります。ベールカー王国の膝蹴りは、まさにそれでしょう。同じ伝統でも、全然違いますね。


個人的には、今回の話はモーガン4/4のようにかっこいいと思っています。

「ああ、本当に大丈夫そうですね、合格にしてあげます。このポーションの使用料はサービスにしときますね」

 職員さんは倒れたパスちゃんのおなかへと、安物らしき小瓶のポーションをポタポタと垂らしました。

 終始あなたが職員さんを(にら)んでいたのは、当然の反応です。


「魔物の安全証明、おめでとうございます」

 決しておめでたいなんて雰囲気はありませんでした。


「パスちゃん、ごめんね! こんなところ来なきゃ良かった!」

「だいじょうぶなのです、上様……」

 あなたはパスちゃんが立ち上がるのをお手伝いしました。パスちゃんのお洋服は濡れていたものの、ポーションの効果なのか、大きな痛みはなさそうです。


「それでは、書類を記入してから提出して下さい」

「その前にひとつだけ」

 ミリーナさんがそう言った直後、――驚くべきことが起こりました。


 今度はミリーナさんが職員さんに向かって膝蹴りをしたのです。


 重い衝突音とともに、職員さんがその場で崩れ落ちます。


「ああ、すみませんでした、あなたがギルドの職員ではなく勇者様の配下を蹴るためだけに変装した邪悪な魔物であるかどうかを確かめようとしただけです。こちらは私物のポーションですので、お代は一切要りませんよ」

 棒読みでミリーナさんは述べて、やはり安物らしき小瓶のポーションをポタポタと垂らすのでした。


「ミリーナさん、今の……」


「今の私の行為……冒険者ギルド内における抗議のための蹴りは、相手に後遺症の残る程度ではない場合、公的に認められています。冒険者ギルドにわざわざ(おもむ)いて交渉し、水晶で確認した以上、蹴りまでする必要はありませんでした。ですよね? 職員さん」


 ミリーナさんに睨まれた職員さんは、起き上がってからも肯定はしませんでしたが、否定もしませんでした。


「リバー様のお足を汚れさせるほどのことではありませんでしたし、私の服を着た……リバー様の大切な配下を、目の前で蹴りつけるような相手を見逃せるほど、私は愚かではありません」


「ありがとう。ミリーナさん」


「いいえ。お礼なら、暴れずに耐え切ったパスちゃんにして下さい」


「そうだね、痛いのを我慢してくれてありがとう、パスちゃん」


「上様のお役に立てるのならば、妾はいくらでも頑張れるのです」

「頼もしいよぉ、パスちゃ~んっ!」

 あなたは思わず屈んで、パスちゃんに抱きついて頭を()でてしまいました。


「では、書類の記入をどうぞ」


 いつの間にかカウンターの向こう側に戻っていた職員さんが、カウンターに申込書とボールペンを置きました。彼女は膝蹴りされることに慣れているのか、全く動じていないようです。声も冷静沈着でした。


 パスちゃんが膝蹴りされてご気分の優れないあなたでしたが、カウンターの申込書に目を向けました。

ミリーナの膝蹴りは今回が四度目です。

一度目は、リバーが来るのが遅かったから。

二度目は、リバーが有り金全てで剣一本しか買わなかったから。

三度目は、リバーがフィギュアのスカートを覗いていると疑われたから、でした。


今回の膝蹴りは、初めてリバー以外に向けられた一撃です。

あなたは、今回の膝蹴りにはスカッとしたのではないでしょうか?


……注意喚起として、現実では膝蹴りをしてはいけません、と、念のため書かせて頂きます。

今回も最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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