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第41話 あの時に伝えられなかった言葉

劣化しないのは、伝えたかったけど伝えられなかった切ない記憶。

今回もサキュリバーズ、スタートです。

「……ミリーナさん。もう、私に膝蹴りはしない?」

 あなたは弱気なお声でご確認をします。


「もちろんです! むしろ私のことは何度でも蹴って構いません! 私はそれだけの過ちを犯したのですから! どうかお願いしますっ!」


 ミリーナさんは頭を大きく下げました。左右の三つ編みが垂れます。

 彼女の反省具合は、恐らく本物なのでしょう。


「でもミリーナさんはさ、私のこと……嫌いじゃないのかな?」


「……正直に申し上げると、何度か頭に来ることはありました」

「やっぱり!」


「ですが、異世界から召喚された勇者様でしたら、こちらの世界で不慣れだったのも納得出来ます」

「その飲み込みの早さを出会った時に発揮してほしかったよ!」


「むしろリバー様が最初に勇者様だと名乗って下さっていれば、私どものほうも円滑(えんかつ)にご対応出来たのですが」


 そう聞いて、あなたは不安を抱いたようです。


「それはつまり、私が勇者じゃなかったら、ここで待ってたってこともなかったの?」


「いいえ。もしリバー様が勇者様でなくても、ターボポーションのお礼はしたでしょう。私はこれでもザンダレー伯爵の娘、ミリーナ=ザンダレーです。助けて頂いた恩義を返さないわけにはいきません」

 右手を薄い胸部に当て、ミリーナさんは主張しました。


 ちなみに伯爵は、あなたの世界の爵位と同一です。公爵、侯爵に続く爵位で、子爵や男爵よりも上位です。


 あなたはそろそろ、この貴族の娘に(こた)えてあげるべきではないでしょうか。


「……ミリーナさんも悪い人じゃないでしょうし、ミリーナさんの膝蹴りは私のほうにも非があったしね。ミリーナさんがそれでいいなら、配下になってくれてもいいよ」


「ありがとうございます! リバー様!」

 再び頭を強く下げるミリーナさんでした。


「でも、私のほうは、やっぱり仲間だと思わせてもらうね。短い間だったけど、一緒にいた人を急に配下扱いするなんて気が進まないから」

 あなたは心が清らかでした。まさに素晴らしき勇者様のお手本です。


「分かりました。勇者様の貴重なご意見ですから、私もその点は妥協しましょう」


「あとさ、別に敬語じゃなくて、これまで通りで構わないんだけど」


「リバー様がどうしてもとおっしゃるのでしたらお従いしますが、勇者様は全ベールカー国民が敬うべき崇高な存在です」

「本当? 私、これまで何度も酷い目に遭ってきたけど」

「それはリバー様が素性を隠していたからではないでしょうか?」

「でも、あのクソ国王とか、私のことを知ってる連中は、私の職業が魔王系シーフだったからって、すっごく雑な扱いだったよ」

「……魔王系、なのですか?」


 あなたは余計なことを明かしてしまいました。異世界職業が魔王系シーフだと知られてから、あなたの異世界生活がどん底になったのですよ?

「あっ……」


 大失敗をしたあなた……かと思われましたが、ミリーナさんは以前のようにあなたへと冷たい視線を向けたりはしませんでした。


「私はどうやら人生最大の失態をしてしまったようです」

「え、それってどういうこと?」


「あっ、いえ……個人的な話です。職業に魔王系とつくのでしたら、あまり言いふらさないほうがよろしいかと思います」

「う、うん、気をつける……」


「とにかく、私はリバー様に対しては敬語を使わせて頂きます。リバー様は私に、さらに恥の上塗りをさせるおつもりなのですか?」

 ミリーナさんのご意志は固そうです。


「じゃ、敬語はいいや。私のほうは、もうミリーナさんに敬語は使わないけどいい?」

「はい。もちろん構いません。……今後もよろしくお願いします、リバー様」


 あなたは、ちょっと嬉しそうでした。


「よろしくって、会ってから初めて言われたね」


「え、そうでしたか?」


「うん」


「まあ、確かに、最初にお会いした時のリバー様は、……とても汚かったので、よろしくお願いしますとは言えなかったです。すみませんでした」


「いや私だって同じ立場だったら、囚人服を着た怪しい女によろしくお願いしたくないから、全然気にしないでいいよっ」

 あなたは両手を振って否定しつつ、おっしゃいました。愚かな人間の貴族に対して、勇者様のあなたは大変お心が広いのです。

「私の上げとミリーナさんの下げが激しい……」


「ところでリバー様。そちらの魔物ですが」


「魔物じゃなくてパスちゃん」

 あなたはミリーナさんに訂正を求めました。


「……パスちゃんは、どうしてリバー様とご一緒にいるのですか? あの襲って来たロードオクトパスですよね?」

「ええっと……色々あって、私と一緒にいることになったの。すっごくいい子だから、仲良くしてあげてね」

「はあ……」


「聞くのです、人間。妾こそが上様の第一の配下、パスちゃんなのです」

 パスちゃんはブレザーの裾をスカートのように上品につかんで名乗りましたが、下半身が危なかったです。白いステータス画面で危険な部分は隠しました。


 ミリーナさんがお顔を赤くしています。


「このような強力な魔物まで配下にされたリバー様はすごいですが、第一の配下は私です! 私のほうが、つきあいは長いのですから! 今日のお昼過ぎに現れた魔物風情が偉そうにしないでほしいわ!」

「いや、ミリーナさんと出会ったのもまだ昨日のことだし、膝蹴りしてきたし、野宿まで強要したよね?」

「……すみません」

 ミリーナさんは極端なぐらいに委縮します。


「どちらが第一の配下はさておき、この魔物……ではなくて、パスちゃんには、私の服を着せることにしませんか? そのような格好では、目に毒です」

「そうだね」


「しばらくお待ちを……」

 黒い円形の異空間をミリーナさんは平らな胸部に発生させ、予備らしきお洋服と、学生の上履きに似た靴を出しました。

 やせ型のミリーナさんはパスちゃんよりかは背が高いのですが、あなたに比べればずっと小さいです。なので、パスちゃんが彼女のお洋服を着るにしても、サイズはあまり問題ないでしょう。


「では、私がパスちゃんに着させるので、リバー様はあちらを向いていて下さい」

「私が手伝ってもいいけど」

「そっ、それはいけません! 駄目ですッ!」


「……うん、分かった」


 あまりにも強く拒否されたので、あなたはくるっと回って背を向けました。



今回、リバーとバス子には、パスちゃん以外のもう一人の仲間、ミリーナが加わりました。リバーとミリーナが少しは打ち解けられて、良かったです。


最後までお読み頂き、ありがとうございます。

次回は、テコ入れのお色気回となります。

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