第39話 裾を引っ張られるあなたは、明石焼きが食べたい
今回はたこ料理のお話も含んでいます。
あなたはたこ焼きと明石焼き、どちらが食べたいですか?
どちらも……という答えも、ありです。
パスちゃんは食べないで下さいね。
では、フレイトの町に戻りましょうか。
半裸のパスちゃんに、着るためのスクール水着を買ってあげるのが良いです。
「なんでスクール水着?」
タコさんは水の生き物さんだからスクール水着が似合います。
「いや、スク水じゃなくても、かわいい服でいいんじゃないの、パスちゃんなら」
お忘れですか?
かわいいお洋服担当は、お人形のバス子なのです。
「そうだったの?」
はい、かわいいバス子です。
「パスちゃんもかわいいじゃん」
否定はバス子もしません。
「どうでもいいけど、バス子ちゃんとパスちゃんって、呼び名が似てるね」
名前に『子』がついている分、バス子は日本出身のあなたに、より近いでしょう。
「子がついたら西洋風ファンタジーっぽくないんじゃないかな……」
あなたは遺跡から離れ、パスちゃんのもとに向かいました。
木の横でじっと立つ小柄な彼女は、ずっと同じ格好のままでお待ちしていたようです。
「ごめんね、パスちゃん。お待たせ」
「……上様」
背の高いあなたを、パスちゃんが見上げます。
「ご質問があるのです。上様は、独り言を愛する孤独なお方なのですか?」
「いや、そうじゃなくてね、私の中にはサキュバスのバス子ちゃんって子がいるんだよ」
あなたがそうご説明すると、パスちゃんは大きな青い瞳で、じぃーっとあなたを見つめました。
「……妾も、上様の中に入りたいのです」
「わっ!」
パスちゃんがあなたの体操着の裾を引っ張りながらお顔を入れます。
「ちょっと待って、ダメっ、だめぇ~っ!」
「駄目ならやめるのです」
ひれのついた頭が出て来ました。パスちゃんはあいかわらず素直なお子様です。
あなたは体操着の裾を直しながらハーフパンツの内側に入れました。それから、町に向かおうとしたようですが、進む方向で悩んでしまいます。
「町って、こっちの方角で合ってるのかな?」
「妾には分からないのです」
「まあ、歩いて行けば、そのうち着くよねっ」
バス子には分かりますので、そのままお進み下さい。間違っていたら、正します。
あなたが行こうとした時、パスちゃんがお手を出してきました。あなたはその意味をご理解し、お手を握ります。
お二人で仲良く並んで、森の中をお散歩するように歩き始めました。まるで、あなた達は母親と娘のようです。
「私、そんなに歳じゃないんだけど」
確かにあなたは女子高生と全く同一のご年齢ですが。
「それそのものだよ」
今は、ハーフパンツを穿いた勇者様です。
「ハーフパンツは要らなくない?」
お脱ぎになるのですか?
「そーいう意味じゃないよ!」
良かったです。ずっとハーフパンツを穿いたあなたを見ていられます。
「……私とパスちゃんが親子と言うのなら、バス子ちゃんは、監視カメラだよね」
そこはせめて、盗撮カメラとおっしゃってほしかったです。
「いやそう言おうか一瞬迷ったけどバス子ちゃんに配慮して言わなかったのに!」
盗撮はいけません。ご注意を。
「上様。妾も、上様とお話がしたいのです」
「うん。それじゃ、なんの話がいい?」
「上様は……、たこ焼きと明石焼き、どちらがお好みなのです?」
「……ちょっと怖い考えが思い浮かんじゃったんだけど、パスちゃんは材料にしないからね」
「はい。妾は、おだし汁さんにつけて食べる明石焼きさんが、食べたいのです」
「共食いじゃないの、それ。というか、明石焼きってこっちの世界にあるのかなぁ?」
本場の兵庫県明石市では卵焼きと呼ばれる、温かい郷土料理の明石焼きは、こちらにもありますよ。アカッスィヤキィと発音しなくても伝わりますので、大丈夫です。
「誰がそう英語風に呼んだの?」
さあ……。分かりません。
「……またひとつくだらない謎が生まれたけど、食べられるのなら、明石焼きもいいなあぁ」
卵たっぷりのふわふわで美味しいお料理、明石焼き。あなたがそれをお食べになられるためには、何が必要でしょうか? もちろん、お金です。あなたがお金を全く持っていないことが悔やまれますね。
「そうだった。お金ないんだよね、私。町に行っても、その先どうしよっか……」
「ロードオクトパスの妾が保存食なのです」
「……気持ちだけで嬉しいよ、パスちゃん」
あなたの苦難はまだ続きそうでした。
明石焼きは、美味しいですよね。
たこ焼きは昔スーパーの地下で売っていたのが美味しくて、かなり食べていました。あと、たこ焼き味のポテトチップスも好きです。最近は見かけない……。
明石焼きやたこ焼きを食べる時には、この作品やパスちゃんのことでも思い出して下さい。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。




