第29話 まるで悪夢のような怪物
戦闘開始です!
あなた達ご一行は、草原からランドクラーケンの出現位置とされる険しい森に向かっていましたが――。
突如として、地上から巨大な黒い物体が宙へと飛び出しました。
軽やかに空高く舞い上がったその巨体によって、太陽の光が遮られたかと思うと、その主が大きな音を立てて草原上へと落下します。
その巨大な怪物は、生物でしたら本来は陸上におらず、空からやって来るなんてことは、余計にあり得ません。
色は白ではなく、まるで闇のような黒一色。
頭部は三角ではなく、丸い形状。
そして、足は八本。イカさんならば、足八本に加えて触手が二本の、合計十本でしょう。
予想は当たりでした。
恐ろしい魔物、ロードオクトパスの出現です。
「嘘……」
ミリーナさんを始め、全員が驚いています。
あなたもびっくりしていたのは、頭部だけでも十メートル以上はあるかという大きさからでしょうか。
ロードオクトパスは、あなた達の前で立ち塞がるように鎮座しています。このような大きさで、よく今まで身を隠せていたものですね。
「……ミリーナよ。私の目が確かなら、コイツはタコじゃなイカ? ……いや、ふざけている場合ではないか」
「まずいわっ、スターリングさん! ロードオクトパスはコンドル級の冒険者パーティーでも倒せないって聞いたことがあるの! 私達じゃ無理よ、逃げましょう!」
「待て、案ずるな、ミリーナ。私達は最下位ランクのビーバー級冒険者パーティーだが、私は自称、ビーバー級最強の騎士だ! 巨大タコごときに遅れは取らん。行くぞッ!」
「スターリングさん! ああっ、もうっ!」
威勢良くスターリングさんが飛び出して、ミリーナさんも急いで続きます。
グッティさんがあなたに視線を向けます。
「リバー! 出番よ! 今回も囮になりなさい!」
「いやムリでしょ、あんなデカいの相手になんて!」
「行きなさいって言ってんのよ!」
グッティさんに背中を押されるも、あなたは抵抗します。その間にもスターリングさんが斬りかかったり、ミリーナさんが剣を振って魔力の弾をぶつけたりはするものの、巨大な魔物には効果がなさそうでした。
大ダコはあなたの存在を見つめるように、ぎょろりと青い目を向けました。人間の頭よりも大きな円形で、黒以外の唯一の有彩色のため、実に強烈な印象があります。
あなたもグッティさんも恐怖心に支配されました。
「とっ、とにかく! 囮でもそうじゃなくてもいいからアナタも加勢しなさい! 私はもっと間合いを取るから頑張ってよね!」
グッティさんは逃げるように後退しました。
「絶対まずいけど、やるしかないよね……」
あなたは観念したように両手を太ももの後ろに回し、収納魔法で大剣を取り出します。あいかわらず重そうですが、どうにか構えを取りました。
あなたは剣を振るうのもひと苦労でしょう。こちらからは攻撃をせず、どうにか剣で攻撃を防いで、お時間稼ぎをお願いします。敵の攻撃を数発耐えられた頃には、リバース能力を発動出来るでしょう。
「えーっ! そんなに耐えられないよぉーっ!」
幸い、ロードオクトパスは無害なあなたに対して全く攻撃をして来ないので、スターリングさんとミリーナさんが交戦している間は、ひとまず待機で問題ないです。
「くっそう! 全然剣の攻撃が効かないぞ! ふざけるなっ!」
スターリングさんがロードオクトパスの足に斬りかかっているのですが、全く効果がなさそうでした。
「きゃああああっ!」
ミリーナさんが吸盤つきのタコ足に捕まってしまいました。人の胴体ほどの太さがある足からは抜け出せそうもありませんね。
「どうしよう、早く助けないと……っ!」
リバース能力が発動出来れば、助けられます。もうしばらくお待ち下さい。
「しかたがない、奥の手だッ!」
スターリングさんは剣を投げ捨てました。その直後、スターリングさんが――なんと巨大化します!
「うそーっ!」
あなたもそれにはびっくりでした!
ファンタジーで冒険者が巨大化って作品は、あんまりないと思います。
最後までお読み下さり、感謝します。ありがとうございました。




