第24話 牢屋を出ても、変わらない
リバーの苦難は続きます。
暗くなった空の下で、あなたがミリーナさん達三人と町の宿泊施設に入ろうとしたら、ミリーナさんに制止をさせられます。
「あっ、リバー。あなたは今夜、野宿だから」
「……え? 野宿?」
「だって当然でしょう? もうリバーはお金を持ってないし、戦闘でも役に立たない人の宿泊費を出せるほど、私達に余裕はないの」
あなたは目の前にいる少女達との間に、見えない壁があるように感じていました。
「えっと……、冗談ってわけでは、なさそうだね」
「冗談で言うわけがないでしょう。明日の朝八時に、ここで集合ね」
「何それ……っ!」
あなたは納得出来ません。
「――野宿なんてしてたら、夜盗とか魔物に襲われちゃうかもしれないじゃない! それに私だけになったら、逃げちゃうかもしれないんだよっ!」
「別にいいんじゃない?」
グッティさんがあなたの抗議をかわします。
「別にアナタなんかがいなくても変わらないし。落札したお金がムダになるのはもったいないって思うけど、それ以上に損をするぐらいなら、逃げてもらって結構よ。そう遠くないうちにお尋ね者になるでしょうけど」
「なあ、リバー。野宿もいい経験になるぞ。私も冒険者になりたての頃は、よく野宿をしたもんだ」
「私はスターリングさんと違って野蛮じゃないの! ミリーナさんやグッティさんは野宿したことってあるのっ?」
「私達は野宿をしないように、計画的に冒険してきたの。リバーみたいに所持金を全部使って、武器を買ったりなんてしないのよ」
ミリーナさんは冷たくあなたに言い放ちました。
「早く行きましょう、ミリーナにスターリングさん。こんなところで役立たずの相手をするのは時間の無駄だわ」
グッティさんが真っ先に宿屋へと進み、ミリーナさんが続きます。
「じゃあな、リバー。明日になったら、野宿の感想でも聞かせてくれ」
スターリングさんもポニーテールを揺らしながら行ってしまいました。
立ち尽くしていたあなたは、やがて宿屋に背を向け、その場から離れました。
どこへ行くわけでもなく、少ない街灯を頼りに歩いた末に、あなたは町の端っこにまで来てしまいました。町の内外を隔てる石造りの壁が見えます。こちらの町フレイトも首都ロンドニア同様、防御のために築かれた城壁があるのです。
あなたは草原上で、体育座りをしました。
「どうしてこうなったんだろう?」
あなたは、とても気落ちしています。
「異世界にいきなり連れて来られて、一週間も牢屋暮らしをさせられて、やっと仲間とパーティーを組んで、これからみんなで成長していくみたいな展開を期待してたのに、野宿なんて……」
あの方達の態度は、許せませんよね。せめて、あなたの今後のご活躍を見越して、お宿代ぐらいは渋らずに出すべきでした。
「夕食だって、お金がないから食べられなかったし……。早く、家に帰りたいよぉ……」
あなたは涙を流します。
そんなあなたに、このようなことを言うべきではないかもしれませんが……。制服を着た状態でそのように座るのは、はしたないです。
あなたは無言で座り直し、じゅうぶん過ぎるぐらいにスカートを両手で押さえました。
泣きやんだ後に、あなたは夜空を見上げました。
静かな夜空は悪気もなく、美しく星の光を際立たせています。
「あー、ひどいよねー。あの人達」
不意にあなたは言い出しました。
あの人達とは、ミリーナさん達ですね。
「うん。スターリングさんはともかく、ミリーナさんとグッティさんは最初から私を敵視してたみたいだし。そもそも、一番の実力者はスターリングさんなのに、リーダーはミリーナさんって、なんか変だよね」
恐らく、スターリングさんが後から、ミリーナさんとグッティさんの二人パーティーに加わったのでしょう。
「あの二人とは仲良くなれそうもないし、スターリングさんは……あれはあまり関わってはいけない感じの、危ない人だと思う。今のところ、まともなのはバス子さんだけだよ」
あなたはため息をつきます。
「異世界に来たらさ、神様にすっごく強力なスキルを授けられて、美少女ヒロインとたくさん出会って、毎日が楽しくなるもんじゃないの?」
神様にすっごく強力なスキルは授けられていませんが、あなたのヒロイン枠にはバス子がいます。
「でも、フィギュアだしなぁ……」
現実社会はそう簡単に上手くいかないとの、神様の啓示なのでしょうね。
「バス子さんってサキュバスなのに、神様を信仰してるの? 悪魔なんだよね?」
はい。悪魔だとしても、神様には敬意を払っているつもりです。
「バス子さんってさ、サキュバスっぽくないね。あっ、悪い意味じゃないよ。フィギュア見た感じなら、文句なしに美少女だし、言葉遣いも丁寧だし」
ありがとうございます。
あなたの良き相棒でいられれば、サキュバスであってもなくても構いません。
そんなバス子から、あなたに助言をいたします。明日が良くなることを信じて、今夜は耐えましょう。
「でも、このままだと、誰かに襲われて、明日を迎えられないかもしれないよ?」
その点に関しては、問題はありません。
「えっ?」
あなたが幸運な理由をおひとつだけ挙げるとするならば、あなたは『あるお方』のご加護を受けているということです。
「それってバス子さんのこと?」
いいえ、違います。あなたからすればあまりにも小さくて、素晴らしいお方です。
とにかく、あなたの御身の保証は安全だと思われます。
今夜は申し訳ありませんが、こちらでお眠り下さい。
「こんなところで寝られるかな……」
牢屋と大差はないでしょう。
「そうかも」
あなたはふふっと笑いました。バス子は少し、安堵します。
「異世界に来てもう一週間以上、まともな場所で寝てないよね。マジで意味分かんないけど……、おやすみなさい、バス子さん」
はい、おやすみなさいませ。
どうか良い夢を……。
仲間に野宿を命じられる、非常に辛い場面でした。
今回も最後までお読み下り、ありがとうございます。




