第21話 体操着姿で素振りをして知った真実
体操着! 体操服! 白! 紺! 白! 紺!
では、今回もスタートです!
「ところで、他の魔法の練習はしなくていいのかな?」
魔法の練習もしたいところですが、剣の素振りを先にしませんか?
「どうして?」
魔法剣を振るえなければ、剣に魔法を宿した攻撃が出来ません。収納魔法が使えたのですから、他の魔法も使えるはずです。
よって、魔法は後回しにしても構わないでしょう。
「確かに剣の扱いのほうが大変そうだもんね……」
魔法剣を再び異空間から出す前に、まずは準備運動をおこないましょうね。準備運動は大切なのです。
「意味あるのかなー、準備運動」
あなたは疑問に思いつつも、両手両足を動かし始めました。体操着姿で、筋肉をほぐします。
あなたの運動するお姿が素晴らしいです。動くたびに、体操着が愛を語りかけてくるような気がします。
「気のせいだよ」
あなたをずっと見ていられます。
「いつもじゃん」
手足を伸ばしたり、体を反らしたりするあなた。ハーフパンツは芸術の域です。
「下しか見てないような……。そろそろ、いいかな」
あなたは収納魔法を発動させて下さい。
「うん。……いくよ」
少し屈んだあなたはハーフパンツの太もも裏部分に集中し、黒い異空間を発生させました。
成功です!
では、バス子があなたの魔法剣を中から出しましょう。……行きます!
どたんっ!
はい、出ました! 芝生の上に剣が落下します。
「言いかたが悪いけど、トイレで用を足した後みたい」
恰好よりも、実利です! あなたは剣を拾い上げ、素振りを開始して下さい!
「よし……」
あなたは慣れない手つきで……、どうにか素振りをしました。
もう一回、素振りをおこないました。
剣先を下に向けて体を支えます。
「……なんでこんなの買っちゃったんだろう?」
ついに、あなたは気づいてしまいました。
「これ、持ち上げるのだけでもキツいし、振るだけでも危険な気がするよ。どうしよう……」
そうです。力のあまりない女性のあなたでは、剣を上手く振るえないのでした。
あなたはミリーナさんに魔法剣と言われてそちらに興味を惹かれたのが、大きな間違いだったのでしょう。
今になって思うと、拳銃とか、軽い武器を買うべきでしたね。
「買った後の後悔がすごい……」
ですが、買ってしまったので今さらもう遅い、なのです。
大きな重い剣でも軽々と振るうことの出来る、『武器重量軽減化』というスキルがあります。スキルと呼ばれる特殊能力は、レベルを上げるとともに特定の条件を満たせば、習得が可能です。それまでは、現状の握力で振り回せるようにしましょう。
「スキルなしで振り回せたらスキルは要らないよね? それに、スキルのためにレベルを上げるにしても、結局は剣を振るわなきゃいけないでしょ? うーん……、マジで失敗だった気がする」
その後も素振りを続けますが、あなたには不向きで、上達はしそうにありませんでした。
「リバー。グッティとスターリングさんが戻って来たわ」
三つ編みのミリーナさんがお二人を引き連れて、こちらにやって来ました。
「魔法は使えるようになったの?」
「はい。とりあえず、収納魔法だけは」
あなたはお尻側の収納魔法を開き、持っていた魔法剣を中に入れてみせました。
「おお、すごいじゃないか、リバー。私でも収納魔法は使えないんだぞ」
「えっ、そうなの? スターリングさんって、レベル25だってミリーナさんに聞いたけど」
「私は強くても、人には向き不向きがあるのだ。しかし、変な場所に出来たのだなー」
「わっ!」
スターリングさんの右手が空間出入り口を通過する際、あなたはくすぐったいような感触に驚きます。
「おっ、ミリーナやグッティの収納魔法よりも中が広そうだぞ! すごいなリバー」
当たり前です。そのために、バス子の角に近い場所に設定したのですから。
スターリングさんが手を引っこ抜いたので、あなたは収納魔法を閉じます。
「ほらな、二人とも。リバーはすごい力を秘めていたんだ。こいつを仲間にするよう進言した優秀な私を褒めるがいい」
「別に収納魔法の容量が少し多いからって、そんなにすごくはないじゃない」
グッティさんがスターリングさんに言い返しました。
「そうだな。ペチャパイの真ん前に発生させておいて、そのペチャパイ程度しか容量のないグッティは、かわいそうだな。同じ胸の無さでも、リバーのほうが収納魔法では勝っていたわけだ」
スターリングさんに侮辱されたグッティさんは、あなたをきつく睨みます。
「ちょっと収納魔法の容量で勝ったからっていい気にならないでほしいわっ! 囚人の分際で!」
「いい気になんてなってませんよ……っ」
薄い茶色のロングヘアで魔導士の格好をした、それなりにかわいらしい少女のグッティさん。そんな彼女から明らかに突き放された態度で怒鳴られ、あなたは困惑します。余計なことを言い放ったスターリングさんは、本当に害悪でしかありません。
「あっ。ミリーナさん、教科書を返しますね」
あなたは話題を変えるとともに、ベンチに置いていた教科書を拾い上げました。
「その教科書なら、私はもう使わないからリバーが持っていていいわよ。時間がある時にでも読んで役立てて」
「はい、ありがとうございます」
「リバーよ。ミリーナの収納魔法は鞄二つ分ぐらいだぞ。収納魔法の容量はペチャパイに左右されないというのがまた立証されて良かったな、グッティ」
笑顔でスターリングさんはグッティさんの肩を叩きます。
パーティーメンバーに煽られるグッティさんは、全然良いというお顔ではありませんでした。
スターリングさん、ひどいです。
今回もお読み下さり、ありがとうございました。




