第18話 あなたは異世界ハーフパンツを見た!
ハーフパンツ、スパッツ、短パン、ブルマ。体操着なら、あなたはどれが好きですか?
お金を得たあなたは大至急武器屋を見つけ、魔法剣を買い求めました。
魔法剣は通常の剣とは違い、切れ味ではなく魔法の付与が重視される、どちらかと言えば杖や木刀に近い武具です。あなたが買った魔法剣は刃の部分が太く、長さは一メートルに満たないものでした。銀色の刃には魔力塗装が施されており、柄部分には黒い文様が入っています。
武器の入手後、あなたはご宣言通り、ミリーナさんの元へとすぐに戻りました。
そしてあなたは笑顔で、重そうにして持っている金属質の魔法剣を見せつけます。
「ミリーナさーん! 買って来ましたよーっ!」
「……それを?」
「はい!」
「他には?」
「えっ、これだけですけど」
「いくらだったの?」
「五万ビルのをどうにか値切って、予算内の三万千五百ビルで買わせてもらいました」
「――馬鹿じゃないのッ!」
あなたはまたも膝蹴りされ、魔法剣とともに地面に横たわってしまいます。
「なんで……っ!」
「なんでじゃないわよ! なんで防具も補助装備もなしで剣しか買ってこないのよッ!」
「いや、お店のお姉さんにこれを勧められて……」
あなたは倒れた状態で弁解しました。
「どうせ初心者と思われて、向こうが持て余していた在庫を売りつけられたんでしょうっ! そのぐらいのものなら、渡したお金の半値で買えるじゃないの!」
ミリーナさんのご様子から察すると、あなたは相当の無駄遣いをしてしまったようです。
すみません。バス子は武器の知識を持ち合わせておらず、お店の方のおっしゃることを鵜呑みにしてしまいました。
「バス子さんのせいじゃないよ、私のミスだし……」
あなたの見立てでは、新品のテレビゲーム機一台分ぐらいの値段で立派な魔法剣を買えるのであれば、妥当……というものでした。
立ち上がろうとあなたが動いたところで、ミリーナさんの下半身に穿く紺色のものが気になりました。それは膝まである茶色いプリーツスカートの丈よりも、ぎりぎり短かったのです。
「はーふぱんつ?」
あなたはつい、お声を出しました。
「何見てるのよっ! この変態ッ!」
スカートの裾を押さえながら、ミリーナさんはお顔を真っ赤にしています。女子が恥ずかしがるしぐさは、異世界でも共通のようですね。ただ、こちらの世界でも、重ね着のハーフパンツで顔をここまで赤くする人はあまりいないと思います。
ミリーナさんが倒れているあなたを踏みつけるほどの鬼畜さんではなかったので、その点はほっとしました。
あなたはスカートから目を逸らし、剣は地面に置いたままで立ち上がります。
「ミリーナさんも下にハーフパンツを穿いているんですね」
「悪いッ? スカートの中が気になっていたら戦闘に集中出来ないでしょうっ?」
「それならスカートを穿かなければいいんじゃ……」
ミリーナさんからずっと睨まれるので、あなたはその件に関して触れるのをやめます。
「一応聞くけど、リバーは収納魔法を使えるの?」
「……使えません」
「でしょうね。今からリバーは、収納魔法と初歩的な魔法を使えるようにしておいてくれないかしら。私が使っていた教科書を貸してあげるから……」
ミリーナさんの平らな胸部のすぐ前に、黒い円形の出入り口が出現します。そちらに右手を入れて、ソフトカバーの書籍を取り出しました。その後、異空間は何事もなかったように閉じられて消滅します。
今のが収納魔法です。
「あのっ、収納魔法って、誰でも使えるんですか?」
「誰でもってわけじゃないわ。だけど、冒険者なら鞄一つか二つ分ぐらいの収納魔法が使えて当然よ。この教科書に、習得の仕方が載っているわ」
ミリーナさんが教科書をあなたに差し出しました。
「ありがとうございます、ミリーナさん」
「リバーって字は読めるのよね?」
「中を見てもいいですか?」
「ええ」
あなたが受け取った教科書には、こちらの世界ではベールカー語と呼ばれる、あなたの知る日本語とそう変わらない言語で書かれていました。
「これなら大丈夫そうです」
「そんな持ち運びに不向きな剣を買ったんだから、せめて収納魔法ぐらいは使えるようになってよね」
「はい、頑張ります!」
あなたは両手を拳にして答えました。
お互いスカートの下にハーフパンツを穿いた女子達のやりとりでした。
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