第13話 あなたを落札したビーバー級冒険者パーティー
前回、リバーはオークションで落札されました。
ステージの裏手で、落札者さんとなる三つ編み少女がオークションの係員に手数料……落札額の十パーセントの三千五百ビルを支払っていました。彼女以外にも二人の少女がいます。お知り合い同士でしょうか。
紺色の髪をポニーテールにした騎士風の少女が、あなたに目を向けます。
「よう兄ちゃん。いや、姉ちゃんか? まあどっちでもいいや。私はスターリング。このビーバー級冒険者パーティー『MGS』の要で副リーダーだ。よろしく!」
彼女は銀色に輝く鎧や重そうな鉄のブーツを装備していますが、ミニスカートを着用しています。
「あっ、えっと……、私は、……リバーって言います。こちらこそ、よろしくお願いします」
「なあ、リバー。年も近そうだし、私には敬語を使わなくてもいいぞ。仲良く行こうじゃないか」
「じゃあ……、そうさせてもらうね」
スターリングさんは、あなたほどではありませんが、三人の中では最も背が高いですね。逆に、あなたと違って胸部は豊満でした。
「私は、グッティ」
神官のような白と青、金色の衣装を身にまとった少女が名乗ります。薄い茶色のロングヘアの彼女は、パーティーの回復役だと思われますね。白いフードつきの上着にロングスカートという、あまりお肌を露出しない見た目です。なお、フードはかぶっていませんでした。
手数料のお支払いを終えた少女がこちらに来ます。彼女はダークグリーンの長い髪を左右で三つ編みにした、まじめそうな方でした。
「私はミリーナ。この冒険者パーティーのリーダーなの」
オークション参加者だった三つ編み少女のミリーナさんは、剣士の類でしょう。長袖とスカートを身に着けた軽装で、茶色いブーツを履いています。
ミリーナさんだけでなくグッティさんも、お顔の左右の髪だけを三つ編みにされていますね。バス子も含めて、三つ編み率が大幅に上昇しました。あなた、バス子を入れると五名中三名で、六十パーセントです。
それと、スターリングさん以外の全員が胸部は貧相でした。よって、こちらの比率は八十パーセントという驚異の高さを誇ります。並ぐらいの女子がいないのが、むしろ奇跡でしょう。
「二人とも、よろしくお願いしまーす」
愛想を振りまくあなたは、ミリーナさんとグッティさんの不快感に気づいてしまいます。どうも三つ編み貧乳のお二人は、年長に見える騎士のスターリングさんに比べ、あなたを嫌うような目で見ていました。仲間になったにもかかわらず、よろしく、とも言っていないので、あなたと仲良くするつもりはないのでしょう。
「……あのさぁ」
リーダーのミリーナさんが、あなたに侮蔑の表情を向けてきます。
「その臭い、どうにかならないの? 悪臭がすっごいんだけど」
「あっ、すみません。そうですよね、臭いですよね、ははは」
「まあいいじゃないか、ミリーナ。こいつは見かけがひっどくてボロ雑巾みたいだが、きっと役に立つ仲間になるさ。私の人を見る目は確かなんだ」
そう言ってスターリングさんが少し背を反らし、胸部が強調されました。
「本当? 私もグッティも、こんな汚い人を仲間に入れるなんて反対だったのよ? スターリングさんが私にこの人を落札させたんだから、どうにかしてよ」
「んー。それなら、どこかで体を洗って来させよう。川だから、川でいいんじゃないか。それで問題ないだろう?」
「逃げたらどうするの?」
「お金を渡さなければいいじゃないか」
「それだと契約違反になるじゃない」
「まったく、まじめなやつだなー、ミリーナは。じゃあ、こうしよう」
スターリングさんは良い案が思いついたと言いたげに人差し指を上げ、ミリーナさんのお財布を奪い取りました。
「ちょっと借りるぞ」
「言ってからにしてよ、もう……っ」
ミリーナさんの財布内から、スターリングさんがたくさんの紙幣を取り出し、数えます。それをあなたに差し出して来ました。
「リバーよ。オークションの落札額から手数料を引いた分は、お前の持ち分となる。つまり、この三万千五百ビルはお前のお金だ。この分に見合う以上の働きをするか、今日から最低一ヶ月、私達に従事するかのどちらかまで、お前の契約は続く。当然、途中で逃げたら契約違反だ。安価な賞金首になれるぞ」
「いや、私、逃げるつもりはないから……」
「私はリバーのことを信用していないわけではないのだが、こいつらの不安を取り除くために、そのお金を私に預けてくれないか?」
「……うん」
あなたは一旦受け取ったお金をスターリングさんにお返ししました。
「よし。お前はお前の意志で、私にお金を託した。ということで、もしリバーが逃げたりしても、私達に金銭的な被害はほとんどないのだ。安心してリバーは体を洗って来い!」
「あっ、私、お城に着替えを置いてきちゃったから、ついでに取りに戻ってもいいかな?」
「お前、お城から来たのか。まぁ、全然構わないぞ」
「そんなこと言って、逃げるつもりじゃないでしょうね?」
ミリーナさんがあなたを睨みながら言いました。グッティさんも、無言で同様のことを語っているように思えます。
「ほんとに逃げるつもりはないんで。じゃあ行って来ますねっ!」
あなたは慌ててその場を後にしました。
お城までのご案内は、もちろんバス子にお任せ下さい。
そちらの道を直進してから、お次の角を右です。
「バス子さんは本当に万能だなぁ~」
褒めて下さるあなたは、なるべく早く戻るおつもりなのでしょう。走るのが速いですね。
「中学の時は陸上部だからねっ! それなりには走れるよっ!」
異世界の首都で疾走するあなたなら、すぐにでもお城にたどり着けると思います。
ミリーナ、スターリング、グッティが登場しました。
リバー、バス子を加えた五人で、日常系アニメのオープニングみたいなものをやらせてみたいですね。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。