第12話 人材オークションであなたは
オークション開始です!
あなたは野外のオークション会場の、ステージ裏手にいます。
こちらは、ベールカー王国の王都ロンドニアに三ヶ所ある民営オークション会場の一つです。そこであなたは、順番が回って来るのを待っていました。手錠はすでに外されています。
「よーし次は、恐るべき闇の囚人を紹介しよう! さあ、来い、お前の出番だぞ!」
あなたをここまで連れて来た男性オークション司会者に呼ばれ、あなたは渋々ステージ上に進みました。
「この長身を武器とする謎の戦士は、幾多もの運命に見放され、長い間、城を徘徊するという、なんとも数奇な人生を歩んで来た! 実力は未知数だが、不確定だからこそ、将来の著しい成長が期待出来るんだッ!」
男性の喋りは、あなたと接していた時よりもはるかに熱が入った調子でした。
「この悟りを開いた特別な人材の新たな道を、ともに模索してくれるという芯の通った者には、ぜひとも入札を願いたい! では、皆よ、何か質問はあるか!」
お一人、挙手がありました。
「よっしゃあそこのお嬢さん! なんでも聞いてくれたまえ!」
「……その人は、人語を理解出来ますか?」
「人語かぁ? どうだぁ、喋れるのかぁ?」
男性司会者はわざとらしくあなたに聞いてきました。
「いや、何回か会話したので知ってますよね?」
「知ってるかって聞いてるんだよちゃんと答えろや!」
「ぐぉッ!」
あなたは男性に膝蹴りされ、美少女とは思えないうめき声を出します。倒れそうになるのを、どうにか堪えました。
「俺はな、滅多に蹴ったりはしないんだ。この俺に蹴られたことを光栄に思うんだな」
司会者は顔を近づけ、脅すように小声で喋っていました。痛がるあなたは、きちんと聞き取れなかったかもしれません。
あなたが膝蹴りされたのを目撃した、オークションの参加者さん達。中には、司会者に不信感を抱く人もいたようです。慌てて司会者は陽気な表情を作りました。
「ああ、ちょっとしたトラブルがあったが、大丈夫だ問題ない! こいつは実演の通り頑丈で、人語も堪能で、大変お買い得だ! 他にまだ質問のある参加者はいるかぁっ?」
あなたが痛みに苦しむ中、次の挙手は出ませんでした。
「では入札開始だ! 一万ビルからスタート!」
「一万ビル!」
質問をした三つ編みの少女が最初に応じました。
「一万千!」
男性が入札しました。
「一万二千!」
また別の男性が入札です。
「一万三千ビル!」
少女がさらに値上げします。
「一万八千!」
二人目の男性が大きく出ました。
「二万二千ビルですわ!」
淑女が入札しました。
「二万八千!」
三人目の男性が参加です。
「三万五千ビル!」
最初の少女が再入札し、高値更新が止まります。
「三万五千ビルでいいなぁ! よし、落札! お嬢さん、あんたはいい買い物をしたな! おめでとう!」
「……売られた?」
はい。あなたは、あちらの少女に落札されたのです。
「国公認の人身売買で売られたというのは、はたして良かったのか、悪かったのか……」
とはおっしゃるものの、ひとまず、あなたはほっとされていました。
オークションでどんどん入札されて金額が吊り上がるのは、見ていて楽しいですよね。
自分が参加者だったら地獄ですが。
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