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第1話 あなたは異世界を救うために来たのです!

初投稿です。

よろしくお願いします。

 あなた達は異世界に召喚されました。


「え? ……何?」


 お耳を疑うあなたはもちろん、他の方達も動揺しているご様子です。


 こちらは、王宮内の大ホール。

 あなた達にとって、こちらは異世界と呼ばれる世界。


 あなた達は、魔法で召喚されたのです。


 国語の授業中に高校二年の生徒が一クラスごと一気に召喚されたため、学生の人数は四十人ほどいます。詳しい数は知りません。


「正確には三十七人だけど」


 そうですか、ご指摘ありがとうございます。


 今頃、唯一教室に残された国語の先生は唖然としているでしょうね。

「それはそれで気になるけど……、私の頭の中で喋っているあなたは、誰なんですか?」

 あなたの女です。

「えっ? 全然知らない人ですよね?」

 どうもあなたは混乱しているようです。

「そんなことないって!」


 あなたのお名前は、八意帝護(はちいていご)様ですね。


「そうだけど……、なんで知ってるの?」

 あなたについての簡単な情報は、すでに根本的に与えられているからです。

「言いかたが迷惑メールの翻訳文みたい……」


 女性のあなたは、『ていご』という男性的なご自身のお名前を、嫌っているようですね。しかしながら、あなたは今後、異世界名を名乗るので、本名はどうでもいいのです。

「異世界名って何ですか?」

 お教えしましょう。利き手の親指と人差し指をくっつけた後、広げて下さい。あなたにだけ見えるステータス画面が表示されます。


「わぁ……ホントだ……。まるでゲームみたい。この表示方法って、異世界系の漫画とかアニメで多いけど、こんなのがホントにあったとは」


 あなたの異世界名は、『ブラックリバース』です。

「リバースって、裏返しとかそんな意味だよね? ブラックリバースか。意味分かんないけど、まあ悪くはないかな」


 あなたの異世界能力は『リバース』です。

「攻撃でも跳ね返すの?」

 いいえ。

「否定された!」


 あなたの異世界職業は『魔王系シーフ』です。

「剣士とか魔法使いじゃないんだ」

 盗みは犯罪です。

「初っ端からシーフって職業に悪いイメージなんだけど!」


 あなたに与えられた異世界道具は『淫魔人形』です。

「いかがわしいアイテムだ! シーフだから盗んだのッ?」

 いいえ。淫魔人形は、このあなたに届く素敵な声がそうなのです。

「自分で素敵とか言ってる!」

 あのですね……、あなたのお手伝いをする、献身的なお人形ですので、よろしくお願いします。

「うん……、よろしくお願いします」


 では、続けましょう。あなたの異世界レベルは1です。

「ザコじゃん!」


 あなたの異世界ステータスは体力、攻撃力、防御力、素早さの全ての異世界数値が1です。

「なんでも異世界ってつけりゃいいってもんじゃないでしょ!」


「さっきからなに独り言ってんだ?」

 茶髪のかっこいい男子が、こちらに近づいて来ました。


 ちなみにあなたは黒髪で、ゴムを用いて後ろで一つに束ねています。なお、身長百八十センチという長身のあなたは、その男子よりも背が高いです。


「あっ、南君。こうやってちょっと手を動かすとね、ステータス画面が出るんだよ」

「こうか……おお! すごいな! ん、なんだこれ? 異世界名『レッドハムスター』?」

「ダサい!」

 あなたは南という男子の異世界名を侮辱しました。


「必殺技は『ハムスマッシュ』らしい」

「南君、必殺技までハムスターみたいじゃん! なんで人間の姿のままなのっ?」

「そういう八意はなんなんだよ?」

「ブラックリバースだけど」

「八意のほうは、ブラックバスなんじゃないのか?」

「自分がハムスターだからって私のほうも生き物にしないでよ」


「というかさ、レッドハムスターとかブラックリバースって、競走馬みたいな名前だよな。異世界にも競馬ってあるんだろうか?」

「異世界ならドラゴンでレースするんじゃない?」


 あなたと南さんがお話をしていると、奥の扉から王様がやって来ました。集まるあなた達の前に来て、足を止めます。


「異なる世界からやって来た勇者達よ、こちらに注目せよ! 私は、この世界最大の国家の一つ『ベールカー王国』を束ねる君主だ! これより、王の権限によって、勇者オークションを開催する!」

 王様が荘厳な声で言います。

「まずは手をこのように動かして、各々のステータスを確認してほしい!」


 あなたと南さんを除いた皆様も、ステータス画面を確認します。


「げっ、オレの異世界名、『ラビラビット』とか言うのッ? アイドルグループっぽいぞこれ! 絶対男向けじゃないだろ!」

 絶望する男子。


「わぁ! 私のレベルは最初から20! すっごーい!」

 喜ぶ女子。


「異世界道具『白いアンスコ』って、何に使えばいいの?」

「穿けばいいんだよ、あどはちゃん! 黒いパンツの上から!」

「別に私、黒なんて穿いてないし!」

 盛り上がる二人組。


 他のクラスメイト達も、様々な反応を示しています。


「なあ、ブラックリバース。俺の職業、『歴戦の勇者』になってるんだけど」

「えっ、早くも私をその名で呼ぶなんて、もうこの世界に慣れたの? それとも、歴戦の勇者になってるぐらいなら、何度も異世界に転生とか転移をしたことがあるのかな?」

「いや、今回が初めてだよ。そもそも、勇者って職業なのか? ブラックリバースはどう思う?」

「あのさ、その異世界名で呼ばなきゃいけないの?」

「せっかくだからな、そっちのほうが楽しいじゃん」

 清々しく歴戦の勇者様はおっしゃいます。


 あなたも、異世界名を使いこなしましょう。


「じゃあ、レッドハムスター……長いからハムでいい?」

「おお! シェイクスピアの悲劇ハムレットみたいでかっこいいじゃないか!」

「ハムレットって、確か最後死ぬんじゃなかったっけ?」

 あなたは呆れるように言いました。


「ハムレットとするべきか、それとも加工食品のほうハムとするべきか、それが問題だ」

「南君って意外と文学少年だね!」

 ちなみにそのハムレットの広く知られる日本語訳は、『生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ』です。


「俺がハムなら、八意のことはリバーって呼ぼう。リバーは川だからな、俺がハムレットならお前は三途の川だ」

「死ぬほうに持ってかないでよ! 死亡フラグみたいじゃないの!」

 死亡フラグとは、死亡がほぼ確定する前兆を意味します。例えば、二時間サスペンスの真犯人に対し、秘密を握った者がお金を脅し取ろうとする……みたいな出来事が死亡フラグでしょう。大抵の場合、脅した人間は犯人に殺されてしまうのが、二時間サスペンスのお約束です。


「……俺のレベルが86なんだけど、リバーはいくつだ?」

「なんなのその不公平! 私なんかレベル1だよ!」

「ああ……すまん。その……頑張れ」

「赤点取った時みたいな慰めはやめて!」

「取ったことあるのか?」

「あるわけないでしょーッ! 例えだって!」


「皆の者よ、確認は終わっただろうか!」

 王様が大声を上げたので、あなたはそちらを向きましょう。


「君達をこの世界に召喚したのは、この地にはびこる最低な魔王軍、そして愚かで最低な魔王をせん滅してほしいからだ!」

「やっぱり魔王退治なんだ……」

 あなたの世界では、異世界に行って勇者が魔王を倒すことは定番なのです。


「元々の世界から強制的に召喚してしまったことを申し訳なく思ってはいるが、どうか受け入れてほしい! もちろん、魔王どもを倒したら元の世界に戻すことを約束しよう! 君達若き勇者は、それぞれに与えられた能力や道具を駆使して魔王軍と戦い、奴らを撲滅するのだ! 君達にはそれをやり遂げる力がある! その中でも、特に秀でた能力を持っている最強勇者は……君だ!」


 王様はハムさんを指差しました。


「……え? 俺?」


「君の名を聞かせてくれ」


「俺は……歴戦の勇者、レッドハムスターだッ!」


「南君ノリノリ過ぎる!」

 思わずあなたは口出ししました。


「素晴らしいぞ! これまで我が国は此度も含めて三度、勇者達を召喚したが、これまでの勇者よりもはるかに初期レベルが高く、気配からして凄まじい! 勇者達よ! 勇者レッドハムスター殿に、盛大な拍手を!」

「「おおおおぉー!」」

 クラスメイトの皆さんが拍手をし、あなたも義理程度に応じました。


「優秀なのは彼だけではない! 君達全員が、素晴らしい力を秘めている! 経験値を増やしてレベルアップをすることで、もっともっと強くなれるぞ! ……ん? そこの背の高い君、レベルはいくつだ?」

 王様が急に声色を下げて、あなたに聞きました。

「ええっと……、レベル1なんですけど……」


 レベル1と聞いて、周囲がざわめきます。

 あなたの本当の名字は八意ですが、クラスメイトの中ではレベルが八位どころかビリなのです。馬鹿にするように笑うクラスメイトも何名かいました。


「そうか……道理で君だけ妙な感じがしたわけだ。それで、君の職業は?」

 再び王様に問われたあなたは、自動で消えていたステータス画面を出して確認します。


「魔王系シーフです」


「なんだとッ!」

 王様の表情が憎しみに染まったのが見て取れました。


 静寂が支配し、不穏な空気が漂います。

 先ほどまであなたのレベルで笑っていた方々が黙り込むほどの、緊迫感でした。


お読み下さり、ありがとうございます。

お楽しみ頂けたのでしたら幸いです。

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