男子校に入学したはずなのに、入りびたるのは女友達の下な件
どうも皆さんおはこんにちばんは、怪物mercuryです!
周りの人々が進路についてまじめに考えてる中、自分だけふわっとしていて、もうなんか、もうなんかです。
諦めて、今日はコーヒーを飲みます(イミフ)
やっぱりここか。体育倉庫についた俺は、中をのぞくと、レイナとユウリが遊んでいるところを無事発見した。
レイナもユウリも、俺が苦手な女子だが、奇遇にも二人とも出会ったのちに先に立ったのが恐怖心であったために、友達となれた。
「おっす。入るぞ。」
ちなみに、二人は何をして遊んでいたかというと、共有した体を使って、先に手を地面についた方が負け、という文字通りの独り相撲を取っていた。
というかレイナ、それ、自分の体だって気が付いていないよな?
「うひゃぁ!」
「これでワタクシの勝ちですのぉ!3連勝ですのぉ!
おいカヅキ、お前のせいでまた負けたじゃないか。
そんなの関係なく勝ちですのぉ!
うるせぇっ、それよりカヅキ、なんか用か?」
相変わらず一つの体でうるさくなれる燃費の悪い(いや、良いのか?)さまを見せつけてくれる。
「悪かったよユウリ。今日は単に遊びに来ただけだ。」
「やっとお姉さまが愛をくださいますのね!
やめろ走るな、だきつこうとするな!」
体が面白い形にねじくれている。少しの間引き合ったあと、ユウリ側の腕からボキッと音がして、レイナが抱き着いてきた。怖い怖い。おそらく、人生で最も怖いハグにカウントされるだろう。今までの一位、カオリにやられた鯖折を抜いての堂々の一位だ。
片手がだらんと垂れ、顔が半分だけ泣きながら抱き着いてくる様は、そんじょそこらのホラーなんて目じゃない怖さがある。
「お、おい、落ち着けレイナ。大丈夫かユウリ!?」
「わたくしは落ち着いていますわぁ!お姉さまのそばがワタクシの最も落ち着ける場所ですものぉ。
あ、あたしは大丈夫だ。ただ、痛みって何年ぶりだろうと思って、痛いっていいなぁって。」
うわぁ、なんて声かけるのが正解なのかわからない。
「ユウリ、あなたこの良さがわかりますのぉ!?今すぐちょうきょ……もとい、快楽を教え込んで差し上げますわぁ!
違う違うそうじゃない、やめろ、やめろ、やめてくれぇ!」
俺は耳をふさぎ、後ろを向く。しゃがみ、目をつむる。時折、それでも聞こえてくる、ギャーとかボキッとか言う音は幻聴だ。そうに違いない。
数分後、幽霊になりかけたレイナを見て卒倒したのだった。
「カヅキ、カヅキ!大丈夫か!」
ユウリの声が遠ざかっていった……。
ヘアッ!
気合というのは大事だが、それ以前に、昔カオリにチョークスリーパーを甘掛けされ、ポイっとされたときに、自分で落下を加速させ、頭に地面を打つことでその衝撃で目を覚ますという方法が使えた。
今日はさっき会ったのもあり、やたらとカオリに絡む事態が多い気がするが、変なことの予兆とかじゃないよな。
「お前ら、驚かすときはもっとソフトにだな……。あれっ?」
俺のトチ狂った挙動と復活を見せられた、レイナだけが失神していた。
「ユウリは驚かないのな。」
そう声をかけると、
「なぁに、旧日本軍はもっとえげつない目覚ましだったぞ?」
と答えられる。
「旧日本軍って、お前一体、なんさブフッ。」
気絶している自分の半身(いや、宿主?)で殴ってきやがった。
「重くていてえブフッ。」
「お前なぁ。女性に対して聞いちゃいけないのは数字だ。
いいか?女の体重は愛と反比例、電話番号は『相手への信用』、年齢は男の目に映された数字なんだ
よ。」
「俺は女子は苦手だからむしろ避けてもらった方がいい!女子とはかかわらない人生を送りたいんだ!」
「こんなところでよくそんなことを言えるよな……。」
「何の話だ?」
「いや、こっちの話。言ったらうちがレイナに怒られる。」
何のことかはわからないが、とりあえず放置でいい案件だろう。
「お姉さまぁ、ワタクシは元気ですわぁ。」
相変わらず血みどろの中から声が聞こえる。おまえ、そんなんだといつか死ぬぞ?ほんと。
「そういえば、授業まであとどのぐらいなんだ?ここには時計がないからわからないんだが……。」
「あとマイナス5分ですわぁ!」
「もう始まってるじゃねえかっ!」
そう突っ込んで俺は体育倉庫を飛び出す。
おっと、一つだけ言い忘れてた。
「お前らのおかげで元気出たよ!ありがとうな!」
「妹分がお姉さまを気遣うのは当然ですわぁ!」
なんだと、ユイより優秀じゃねぇか。
走りに走り、ようやく教室についたころには、授業が始まってすでに8分が経過していた。俺が、
「すみませんトイレで遅れましたー。」
と教室にはいると、家庭科のおばあちゃんの先生が、
「いいのよ、いいのよ、わかっているわ。」
と言いながら遅刻を取り消してくれた。入学式の時もそうだったが、なんでみんな体調不良に優しいのだろう。男子校はもっとスパルタだと思っていたが。
それでも、ここに自爆を並べるつもりはない。そうしてくれると言われたら、素直に恩恵にあやかるべきである。
「大丈夫なの、カヅキ?しっかり休んだ方がいいわ。」
ずっと俺を心配してくれていたユウキがひそひそと声をかけてくれる。
コロコロ……。さすが元バスケ部のコントロール。アオイは何かメモを丸めて、俺の筆箱の中にぴたりと入れてきた。席結構離れていると思うのだが。
「元気出せよ。今日の帰り、部活の見学でも行こうぜ。」
ありがたい。けど、運動部は嫌なんだよなぁ。男子校の運動部って、どうあがいても汗臭くなるじゃん。せめてここが女子校だったらなぁ。
グルルルル……。
おなかが小さく鳴り、昼飯すら食ってないことを思い出す。バッグの中にこっそりと手を入れようとして、チャックが開いており、そこからカロリーメイト(半分、食いかけ)が差し出されているのに気が付
く。
そのカロリーメイトには手が付いており、バッグの中から伸びている。
あいにく、いくらバッグがでかいほうだからと言えど、このようなバッグの中に無断で忍び込める相手を俺は一人しか知らない。
俺は黙ってそっとバッグのチャックを閉じた。
「やっと終わったー!早く部活見に行こうぜ!二人は何部を見に行きたい!?」
「そうだなぁ、私は、文芸部とか、家庭科部、書道部なんかいいと思っていたんだけど……。」
とユウキが言うと、
「あたしはやっぱり運動部かなぁ。バスケ部か、バスケ部か、バスケ部?」
「私は運動しない部活なら何でも……。」
アオイと俺が続ける。
「あ、そういえばカヅキ?」
「ん?どうしたのユウキ?」
「さっき、お師匠様にお願いして、化粧落とし持ってきてもらったんだけど、どこにいるか知らない?」
……。
「し、しぃらないでございますわよぉ?」
慌ててバッグの中に手を突っ込むと、謎の生き物に噛まれた。非常に痛い。
「どこに行ったのかしら。」
申し訳ないが、なるだけ早く渡してほしい。すると、歯が離れたバッグから、ボトルをひょいと手渡さ
れる。
「あー、私持ってたわー。落としてくるわー。」
大根芝居に突っ込むようにバッグに蹴られた。
「婚約者を、監禁、拉致。」
(それしかないが)個室の便器の上に正座させられ、壁の上に座るユミコに怒られている。化粧を落とした直後だった。
「あれは俺は……。いえ、すみません。」
正座をし、謝る俺に、
「弟子が待ってる。」
と、怒るのが面倒だと言わんばかりに言ってきた。マジありがとうユウキ様。
「待って。」
相変わらず、高いところから見下ろしてくるのが好きなようで、呼び止められる。
「降りれない。」
こいつはあほか。
ここまで読んでいただきありがとうございます!いかがでしたでしょうか!
この前気が付いたんですけど、僕ってお寿司好きですね。一作目にも出ていました。さすがにレイナの手作りではありませんが……。
いつか、大感謝祭的な何かをやりたいなぁ。
次回は部活見学するお話です(多分)