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生まれてから12年がたった。
この間に私の周りの状況について分かったことがある。父親がいない。この事にすごく驚いたが、お母さんに聞いたところ、私が生まれる数ヶ月前に交通事故で亡くなったそうだ。そのため、お母さんが1人で私を育ててくれた。いつも忙しくしており、体調を崩すこともあるので、手伝いなどを積極的にやるようになった。
「お母さん、野菜の皮むき終わったよ。」
「あら、ありがとう凛ちゃん。いつも、手伝ってくれて助かってるわ」
「大丈夫だよ、楽しいし」
私は、いつもお母さんの手伝いをしているため、家事の能力は、大学生だった前世より高い気がする。将来のためになるし、出来る様に頑張ろう。
「よし、できた。凛ちゃん、冷めないうちに早く食べましょう」
「うん」
前世よりも貧しい生活かもしれないが、私は、お母さんと2人でいるこの生活が好きになっていた。
「ねぇ凛ちゃん」
「?どうしたの?」
お母さんが箸を置いて私の方に顔を向けた。
「私も忙しいし、手伝ってくれるのは嬉しいけど。友達と遊んだりしなくて大丈夫なの?」
「えっ、だ、大丈夫だよ。」
「本当?友達の話全然聞かないから心配で」
「学校で会ってるし大丈夫だよ。お母さんは、気にしないで」
「遊びたくなたら、遊んでいいからね」
と、お母さんは言い、また、食べ始めた。
私は、
(どうしよう、私友達いないし。)
と、焦っていた。
翌朝、
「いってきます」
「いってらっしゃい。気をつけてね」
住んでいるアパートを出て学校に向かう。
まず、私の住んでいる場所は、海に面しているところで、大きな漁港があり、漁業が盛んなところだ。また、海水浴場があり、今は、一月で冬だが夏になると海水浴に来た人で賑やかになる。私はこの場所が好きだ。
海を見ながら15分ぐらい歩くと私が通っている小学校についた。
靴を履き替えて教室に向かう。
私の学年は、3クラスあり1クラス30人で分けられており、私のクラスは、6年1組だ。
教室に入り、先生に挨拶をして席に座るり、図書室で借りた本を読み始めた。
「おい、ボッチ。先生にだけ挨拶かよ。そんなんだからボッチって言われるんだよ」
と、隣にいた男子生徒にからかわれる。
「 おはよう」
「 」
「あははー、全員に無視されてやんの。」
「キャハハ、もう武志君、笑わないであげなよ。友達いないから仕方ないじゃない」
私の事を馬鹿にする2人は、宮本武志と沖本志保。
宮本の父は、国会議員で、沖本の父は、この市の市長と権力を持っており、誰も逆らう事ができない。
私が標的になったのは、宮本の命令を断ったからだ。彼の命令は、鞄を彼の家まで運べというもので、私は、買い物に行かないといけなかったため断った。それに対し、彼は、怒り、3年生の時からいじめられるようになった。
いじめといっても、小学生の考えることなので大したことがなく、気にしなかった。
ただ友達を作れないことは、悲しかった。
二月になり、卒業が近づく中、悲しい出来事が起きた。
「コホコホ」
「お母さん、大丈夫?病院行った方がいいんじゃない」
「大丈夫よ。いつものことよ」
「でも、いつもより咳がひどいよ」
「そうかしら、でも、顔色悪くないでしょ」
「そうだけど」
「なら大丈夫よ。ほら学校遅れるわよ。きつくなったら病院行くから」
「わかった。無理しないでね。いってきます」
「いってらっしゃい」
これが、お母さんとの最後の会話になった。
先生が休みで授業が自習になった際に、女性の先生に呼ばれた。この先生は、保健室の小早川千代先生といい。私が一番好きな先生だ。いつも優しい笑顔でお話をしたり悩みなど聞いてもらったりしていた。そんな先生が焦った表情で私を呼んでいる。
「先生、どうしたんですか?」
「北条さん、しっかり聞いね。」
「えっ、はい」
「あなたのお母様が倒れられたの」
「えっ」
時が止まったように感じた。
「今、病院に搬送されて手術をしてる。でも、もう長くないかもしれない。私が連れて行くから急いで病院に行くわよ。カバンを持って入り口まで来て」
「は、はい」
私は、急いで教室に戻りカバンを持って教室から出ようとすると、
「おいおい、今授業中だぞ。帰るのかよ」
宮本に邪魔をされて、出れなくなった。
「ちょっと!退いてよ」
「俺は、勝手に帰ろうとする奴を止めてるだけだぜ。おい、こいつが勝手に帰らないように捕まえようぜ」
宮本が手下である数人の男子生徒に命令し、その男子生徒が私を囲み、私は、捕まえられた。
「ちょっと、離してよ。お母さんが大変で、病院に行かないといけないの。」
「あ?お前の母ちゃんよりも俺の命令の方が重要だろうが。俺の父ちゃんは、偉いんだぞ。なら俺も偉い。」
「は?」
私は、何を言ってるか、分からなかった。お母さんの命よりも彼の命令が重要だなんて理解出来なかった。ただ、女の子である自分が数人の男子に捕まえられてることに、恐怖心を感じ始めた。頭の中がぐちゃぐちゃになったその時、
「何をやってるんだ、お前ら」
と、怒鳴り声が聞こえた。そこには、小早川千代先生とその旦那さんの小早川和成先生の姿があった。
「北条さんの帰宅は、認められています。和成さん、私が連れて行くので、後のことは、お願いします。」
「まかせろ」
私は、千代先生に連れられ、病院へと出発した。
「北条さん、ごめんなさい。私が着いて行くべきだったわ。」
「大丈夫です。助けてくれてありがとうございます」
「無事で良かったけど今は急がないとね」
と、病院へと急いだ。
病院へと着くと看護師の方に案内をされて、病室に案内された。
そこには、医師が1人とベットに横たわっているお母さんがいた。
私は、医師に震えた声で聞いた
「あの、お母さんは?」
「 1分前に亡くなりました。」
「何で❗️今日の朝は、いつもより顔色が良かったのに」
「たぶん、君に心配をかけないよう化粧をしていたんだろう。」
そのことを聞いて頭が真っ白になった。
気がつくと目に入ってきたのは、知らない天井だった。
「ここは? あっ、病院、お母さん」
すぐにベットから降りたら足に力が入らず転んでしまった。痛みに耐えていると若い看護師さんが慌ててやってきた。
「良かった。凛ちゃんだっけ。いきなり倒れて、3日も起きなくて慌てたよ。」
「あの、お母さんは?」
「それについては、私が話してもいいかな」
と、スーツをきた中年の男性がやってきた。
「あの?あなたは?」
「私は、二階堂守。君の母、北条紗季の兄で、君の叔父になる」