7 初デート
ホットコーヒーのSサイズ。一番安価なメニューを注文し、窓際のカウンター席に座る。茶色い液体に砂糖を加えてかき混ぜながら、目的の人物を待つ。
デートの待ち合わせ場所としては、ちょっと意外感があるかもしれない。目に付きやすい建物の前で合流する方が普通だろう。しかし、初夏の日差しはだんだんと厳しくなっている。もし炎天下で相手を待たせるようなことがあってはならないと、慎重を期した結果だった。
彼女が店内に入ってきたのを見て、村上は軽く手を振ってみせた。茶目っ気のある笑顔を添えるのも忘れない。
「ごめん、待たせちゃったかな」
隣の席に座った怜奈が、少し申し訳なさそうに言う。今日の彼女は白いブラウスを着ていて、メイクにもいつもより手間をかけてきたように見えた。
「今来たところさ」
常套句で応じてから、手にしたガラス製のコップの中身が少なくなっていることに気づく。実際のところは、初デートということで張り切りすぎたせいか、十分以上前に喫茶店に到着してしまっていた。
前回会ったとき連絡先を交換したのを機に、村上は怜奈をドライブデートに誘ってみたのであった。断られたらどうしよう、と心配する気持ちもなくはなかったが、彼女は案外あっさりと承諾してくれた。まんざらでもなさそうだった。
「それじゃ、行こうか」
「うん」
さっさとコーヒーを飲み終え、席を立つ。トレーとコップを返却口に置き、村上は怜奈を連れて喫茶店を出た。近くの駐輪場に停めておいたバイクを押し、車道脇へと動かす。
「ところで、今日のドライブってどこへ向かう予定なの?」
興味津々といった風で、怜奈が尋ねる。行き先は秘密、着くまでのお楽しみということにしてあった。
「さあ、どこだろう」
村上はからかうように言い、彼女の分のヘルメットを手渡した。漆黒の二輪に跨り、スロットルを握る。
自分の趣味に怜奈を付き合わせるつもりはなかった。つまり、摩天楼の立ち並ぶ大都会を猛スピードで駆け抜ける暴走族を演じるつもりはなかった。
村上は心持ち速度を抑え、景色を楽しめるくらいのスピードでバイクを走らせた。今日のコースは、事前に地図と格闘しながら検討に検討を重ねたものだ。都内の名所を遠巻きに眺めつつ、自然を感じることもできるルートになっている。目的地へ向かう過程を楽しめなければ、良いデートとは言えないと思ったからだ。
道中、腰に回された細い腕をいつも以上に意識してしまっていた。怜奈も二人乗りにだいぶ慣れてきたようで、最初の頃のような怯えは感じられなかった。今は純粋にドライブを楽しんでいる。
(何故俺は、こんなにも彼女に惹かれるのだろう)
道中、村上はふと疑問に思った。当たり前すぎて、これまでは逆に全く脳裏をよぎらなかったことだった。
頭に浮かんだのは、自分が出会った女性たちとは違うということだ。大学で村上が出会った悪友たちは皆、女遊びも上手かった。そのうちの何人かは村上にも相手を紹介してくれたが、長続きはしなかった。
何というか、精神的な意味で関係性を深める段階までいけないのだ。彼女たちの多くは、容姿が整っていて遊び慣れた男を求めていた。自分のために惜しみなくお金を使ってくれる者、大きな性的快楽を与えてくれる者を求める者もいた。けれども、誰一人として村上の内面を見ようとはしなかった。話題が合ったとしても、せいぜい「好きなアーティストが同じだった」とか、そういうありふれた類のものでしかない。本当の意味で自分を理解してくれた者は誰もいなかった。
だが、怜奈は違った。前回エドワードに召集をかけられた際、村上は彼女と簡単な身の上話をした。そして悟ったのだ。怜奈と自分は本質的な部分で同じだということに。人生に退屈し、能力者としての異能を手にしたことでそれを紛らわそうとしている。怜奈となら、エドワードの仕組もうとしている陰謀にも一緒に立ち向かえるような気がした。
多分、初めて出会ったときから無意識に感じ取っていたのだろう―彼女の言葉を借りるなら、自分たちは「似た者同士」だということに。
運転中はあまり話ができなかったが、赤信号で止まるたびに会話は弾んだ。怜奈は目にしたもののほとんどを物珍しそうに見て、すごい、すごい、と感嘆の声を漏らしていた。
「へえ、あれが都庁なんだね。思ってたよりもずっと高い」
その台詞に引っかかりを感じて、村上は首だけで後ろを振り向いた。
「今までに、都内を観光したことはあんまりない感じか?」
「まだ全然だよ。三月にこっちに来たばかりだから」
はにかんだように笑った彼女の言葉に、村上はようやく合点がいった。おそらく怜奈は、大学入学を機に地方から上京してきたのだ。自分とは随分違う景色が見えているのかもしれないな、と思う。
彼女が告げた出身地は、関東内陸部にある温泉地として有名な街だった。何年か前、スパイダーがその付近に出没したとかで騒ぎになっていたのを覚えている。
束の間物思いに耽った村上を、怜奈が焦ったように見た。
「あっ、村上君。青信号、青信号」
「…おっと。すまない」
普段なら絶対にしないミスだった。後続車が数台しかいないから良かったものの、もっと混んでいたらクラクションを鳴らされてもおかしくはない。
やはり、彼女と一緒にいると自分はどこか揺さぶられてしまう気がする。そんなことを考えながら、村上は目的地を目指してやや速度を上げた。
「ここが目的地?」
きょろきょろと辺りを見回して、怜奈は首を傾げた。鬱蒼と茂る木々に挟まれた谷を、幅の広い川がゆったりと流れている。近くに人家はなさそうだった。
「そうだ。まあ見てな」
ヘルメットを脱いでバイクから降りると、村上は河辺へと歩き出した。丸っこい石の転がる岸でスニーカーを脱ぎ、口の中でそっとコマンドを唱える。
「まだ三浦には見せてなかったよな。これが、俺の能力だ」
そう言って水面に両足を乗せ、そっと右足を前に出す。水の上を滑るように動いた彼を見て、怜奈は目を丸くした。
「すごい。忍者みたい」
かっこいいだろ、と笑みを浮かべてみせてから、村上は川の水面に立ったまま彼女を手招きした。
「こんなものじゃないぜ。もっとすごいドライブを見せてやる」
少し戸惑った様子を見せてはいるものの、怜奈はすぐに彼の元へ駆け寄った。自然とその足元に視線が向く。指示した通り、ちゃんとサンダルを履いてきてくれていたことにほっとした。
村上の能力は、足の裏から波動を発して自身の肉体を水の上に浮かべるというもの。アメンボの持つ水を弾く特性も受け継がれているらしく、いくら水面を滑走しても村上が濡れることはない。靴が多少水を吸うくらいは起こり得るが、その程度だ。
同伴者にまで能力が及ぶとは思えなかったため、水がかかっても問題なさそうな服装をお願いしていたのだった。
スケートの要領で岸に戻った村上は、怜奈の腰に手を回し、その華奢な身体をそっと抱き寄せた。さすがに驚いたらしく、彼女は微かな恥じらいの表情を浮かべた。
「わわっ」
「しっかり掴まっててくれよ」
怜奈を連れ、村上は再び川へ向かった。彼女の腰に回した左腕に力を入れ、怜奈の足先が水面にぎりぎり触れない高さまで持ち上げる。バランスを崩さないよう細心の注意を払い、水面に足を乗せた。
「よし、行こう」
明るい声音で言い、村上は川の上をゆっくりと滑走し始めた。まずは円を描くようにぐるりと回り、ウォーミングアップから。徐々にスピードを上げ、複雑な軌跡を描いていく。八の字、急カーブなど何でもござれだ。密かに練習を重ねていた彼には、これくらい何でもなかった。
ただ一つだけ難しいのは、怜奈を抱き寄せたまま水上を移動することだ。彼女の体重を支え、バランスを保ちながら滑らなければならない。今までに重いものを持って滑ってみたことは何回かあるが、人を連れて滑走するのはこれが初めてだった。
「上手だね、村上君」
怜奈はすっかり、この未知の体験に夢中になっているようだった。スリル満点のコースを辿ってみせるたびに可愛らしく歓声を上げ、ぎゅっとしがみついてくる。村上の考えたデートプランはいささか突飛なものだが、概ね上手くいっているように思えた。能力者同士である二人だからこそ、実現できた時間だった。
「まあ、それなりに練習したからな」
気取らずに応じ、村上は水面をくねくねと蛇行して滑った。かと思えば一転して直線的なコースを辿り、怜奈をきゃっと驚かせる。さらに難易度の高いコースを設定し、次はそれに向けて滑り始める。
しかし、それが良くなかったのかもしれない。幸福感に包まれ有頂天になっていた彼は、一瞬ながら注意力を欠いていた。進行方向に流れてきた流木に気づかず、勢いを緩めぬままそちらへ滑走してしまったのだ。
怜奈と話すのに夢中で、気がつくのが遅れた。幹の太さはさほどでもないが長さは相当なもので、行く手を塞ぐように横たわっている。
進行方向を切り替えるのも間に合わず、村上は流木に足を取られ、前のめりに倒れた。それに伴って、怜奈もバランスを崩してよろめく。腰に回していた手が衝撃で離れた。
(しまった…)
咄嗟に両の手足を前に突き出す。村上の能力はアメンボの特性を忠実に再現していて、手のひらも足の裏と同様に「水に浮き、その上を滑る」という異能を発揮できるのだ。もっとも、手でも同じ能力を発動できると気づいたのはつい最近だし、人間が二足歩行である以上腕まで使って滑ることはまずないのだが。
ともかく、彼はそうやって何とか川に落ちずにすんだ。波動を発さない手足以外から着水した場合は、普通の人間と同様にずぶ濡れになっていただろう。
いや、それよりも彼にはやるべきことがある。村上は怜奈の姿を探し、必死で周囲に視線を巡らせた。
ぷはっ、と水面から顔を出した彼女は、見事にずぶ濡れになっていた。今度ばかりは、笑顔とは言い難かった。
「…村上君の、馬鹿」
頬を膨らませ、怜奈はちょっと拗ねたようにこぼした。
「ごめん。本当にごめん。俺が不注意だったせいだ」
自分のタオルを貸してやり、村上は彼女が体を拭くのを手伝おうとした。
「大丈夫。一人でやるから」
その手を振り払って、怜奈はそっぽを向いてしまった。横顔を見ると、涙目になっていた。
「…私だって、今日のために頑張ってお洒落してきたのに。これじゃ台無しじゃない」
「ごめん」
これで何回目かも分からない。村上はまた頭を下げ、精一杯に誠意を示そうとした。
目元をごしごしと擦り、ありがとう、と怜奈がタオルを返してくる。当然ながら、まだ機嫌が直っているようではなかった。
「埋め合わせになるかは分からないけど、家まで送るよ」
「そんなこと…」
口を開きかけて、怜奈は口元を押さえてくしゃみをした。心なしか、少し震えてもいるようだった。季節は夏に変わろうとしているが、夜になればさすがに冷えてくる。いつの間にか、辺りは暗くなってきていた。
「…体が冷えてもいけないし」
付け加えると、怜奈は黙って頷いた。
何度も話しかけようと思った一方で、村上には振り向いて怜奈と目を合わせる勇気がなかった。腰に回された手は僅かに湿り気を帯びていて、背中に押し当てられた身体も冷たかった。
彼女の住むアパートへ向かう途中、彼らは一度も口を利かなかった。
家にお邪魔するのは、そういえば今回が初めてだった。アパートの前にバイクを停め、村上は怜奈に付き添って階段を上った。彼女の部屋は二階にあり、一人暮らしらしかった。
部屋に入ってすぐ、怜奈は奥の方へ引っ込んだ。衣類を用意すると、バスルームへと向かう。
「シャワー、浴びてくるね」
それだけ言うと、彼女は扉を閉めた。素っ気ない態度だが、当然かもしれない。
十分ほど待っていると、怜奈は風呂から上がったようだった。身に纏っているのは薄いネグリジェのみで、上気した顔と相まって扇情的な雰囲気を醸し出していた。
何か思い詰めたような表情で、彼女は近づいてきた。床に適当に座っていた村上の隣に腰掛け、硬い声音で切り出す。
「さっきはごめんなさい。私、ちょっと言い過ぎちゃったかもしれない」
恥ずかしそうに目を伏せる姿は、いつもの彼女だった。
「帰り道で色々考えてたんだけど、村上君を責めるのは違うんじゃないかなって。だって、今日のことも私を楽しませようと思って計画してたんでしょう?それが運悪く上手くいかなかったからって、私が怒るのも変だよね」
「いや、そんなことないって。今日のは完全に俺のミスだ。自分の能力を使いこなせなかった俺が悪い」
慌てて首を振り、村上は言った。革財布から千円札を何枚か取り出し、テーブルの上に置く。
「服を濡らしてしまった、せめてものお詫びだ」
「いいよ、全然。服なんて、洗濯すればいいんだし」
遠慮してなかなか受け取ろうとしない怜奈の手に、村上はそっと千円札を握らせた。
「それじゃ俺が納得できないんだ。受け取ってくれ」
そして静かに立ち上がり、もう一度頭を下げる。彼自身、何度謝っても足りないくらいだと感じていた。自分のせいで、華やかなものになるはずだった初デートがめちゃくちゃになったのは事実だ。
「本当にすまなかった。今度、改めて埋め合わせをさせてほしい」
そう言って、村上はこの場を立ち去ろうとした。怜奈と長い間向き合っていられる自信がなかったからだ。
「待って」
しかし、彼女はそれを望んでいなかった。怜奈は窓の外をすっと指差し、苦笑いしていた。
「…雨宿りでもしていったら?」
見れば、窓ガラスを大粒の雨が叩いていた。
激しい雨音にも気がつかなかったほど、自分の心は怜奈とそれに関する出来事に向けられていたのだなと思った。
結局、シャワーを貸してもらうことになった。
村上は気を遣って断ろうとしたのだが、「私ほどじゃないけど、村上君も服濡れてるじゃない。温まってから帰った方がいいよ」と怜奈に強く勧められた。今日、これ以上彼女の機嫌を損ねたくはなかったこともあり、承諾した次第である。
熱い湯を浴びると、少しは気分がリフレッシュされた気がした。乾燥機で乾かしてもらった服に着替えて、バスルームを出る。
村上に気づいていない様子で、怜奈は机に向かい、何か一生懸命に書いているようだった。授業の課題でもしているのだろうか。いや、それはないだろう。手書きのレポートなど時代錯誤にもほどがある。
ちょっとした悪戯心がはたらいて、村上は音を立てずにバスルームのドアを閉めた。抜き足差し足で机の後ろに忍び寄り、不意にぽんと肩を叩く。
「何書いてるんだ?」
「ひゃ、ひゃあっ⁉」
まるで子猫のように飛び上がって、怜奈はぱっとこちらを振り返った。頬に朱が差していて、机に広げたノートを懸命に手で隠そうとしている。
「村上君、お風呂出たのなら教えてよ」
「悪い悪い。ちょっと驚かせてやろうと思って」
「もう、意地悪」
悪びれずに答えると、彼女も「しょうがないな」という風に笑った。屈託のない笑顔だった。
「…で、何を書いてたんだ?」
本題に戻るべく、村上が続きを促す。やや逡巡したのち、怜奈はおもむろに口を開いた。
「詩を書いてたの」
「詩を?」
出会ったばかりの頃、趣味を尋ねると彼女は同じことを答えた。不吉な言葉を口にするような言い方がやけに気にかかって、今もそのときのことは記憶に残っている。
「読んでみたいな、それ」
ノートに手を伸ばしかけると、怜奈は作品の綴られたそれを手で守るようにした。
「私、趣味で何となく書いてるだけだから。全然クオリティも高くないと思うし、それに…」
「それに?」
「今まで、誰にも見せたことがないの。昔から少しずつ書き溜めてはいるんだけど、自信がなくて」
躊躇いながら、俯き気味に明かした彼女を見て、村上は合点がいった。だからあのとき、怜奈は自分が「詩を書いている」と言うのを迷い、忌み嫌ったのだ。それは彼女にとって、自分の汚点とも呼ぶべきものを晒すに等しい行為なのだ。
「だったら、俺に見せてよ」
気負わず、何てことなさそうに言った村上を見て、怜奈は意表を突かれたように目を見開いた。
「一緒に川に落ちた仲だろ。駄目か?」
「誰のせいでずぶ濡れになったと思ってるの」
あはは、と可笑しそうに笑って、怜奈は小さく頷いた。それから、少し恥ずかしそうにノートを差し出してくる。
「じゃあ、お願い」
「おう」
詩集を受け取り、村上はベッドの端に腰掛けると早速読み始めた。
「とりあえず、前半部分は読んだよ。面白かった」
微笑み、ノートを怜奈に返す。
「ほんと?嬉しいな」
ぱっと顔を輝かせて、彼女は言った。多分、他人に自分の書いた作品の批評をしてもらったのはこれが初めてなのだろう。
そもそも、誰にも見せたことのなかった詩集を村上に見せたこと自体、かなり勇気を要したに違いない。いや、村上を特別な存在だと認めていたからこそ可能となったのか。
「どういうところが良かった?」
わくわくした様子で問うてくる怜奈は、いつになく活き活きとしていた。カマキリの異能を発揮しているときにもこんな表情をしていたな、とふと思う。
「そうだな。表現の仕方がすごく丁寧で、優しい感じがした」
村上に文学の心得はないから、授業中、急に先生に指された高校生みたいな拙い答えしかできない。けれども、彼の感じたことは確かに彼女へ伝わったらしかった。怜奈は嬉しそうに顔をほころばせている。
彼女の作品は、主に自然の美しさ、世界の片隅にある幸せを謳ったものが多かった。一つ一つの描写が丁寧で美しく、穢れのない彼女自身の内面を表しているかのようでもあった。作品の質もなかなかに高く、何かの賞に応募すれば、それなりに選考に残ったりもするのではないかと思わせられるほどだった。素人目にもそれくらいは分かる。
「初めてだな。私の詩を読んでもらって、感想を聞くのって。何だか、すごく心が温かくなった気がする」
照れたように微笑む彼女は、とても綺麗だった。
窓の外へ目をやると、雨は先ほどよりも勢いを増していた。生憎、今日はレインコートを持ってきていない。バイクで帰るには少々しんどそうに思えた。家の方向が同じとはいえ、怜奈と村上の家はそこそこ離れているのだ。
「雨、止まないな」
ぽつりと呟く。怜奈も外を見やり、表情を曇らせた。
「もうしばらく、ここにいてもいいか」
時刻は真夜中に近づこうとしている。その台詞が暗に意味するところを察して、怜奈がかあっと赤くなる。少し間があって、彼女はちょっと恥ずかしそうにこくりと頷いた。
「…私も、村上君と一緒にいたい」
見つめ合った二人は、どちらからともなく唇を重ねた。
怜奈が処女であったことを、村上はその夜知った。
今回はややアダルトな内容となりましたが、これは、蓮と渚がいつまでも友達のままであった前作と対比した結果です。ヒロインが主人公と同じく能力者である点も、前作との差別化を図りました。
二人の今後にも注目していただけると幸いです。