表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/47

46:<日曜日> スパイスカツカレー

 楓が正社員になって一ヶ月が経過した。

 風が心地よい季節、洋燈堂は相変わらず好調だ。

 最近の変化といえば、理さんがスパイスに興味を持ち始めたことだろうか。

 効能面が気になるみたいで、本を買ってきて自分で調べている。

 ちなみに、今日は休日なので雛ちゃんがバイトに来ており、理さんは休みだ。

 でも、休憩時間には顔を出してくれる。


「染のカレーによく入っているクミンは、食欲不振や消化不良に効くらしい」

「そうですね。私も食欲がない時期がありましたけれど、染さんのカレーは食べられましたから」

「ターメリックは肝機能障害や二日酔い、血流障害の改善にいいようだ。軟膏に混ぜて皮膚疾患の改善に使う方法もある」

「漢方薬では『鬱金』と呼ばれていますね。飲み過ぎ対策のドリンクが有名です」

「……君は俺より詳しいな」

「カレーやスパイスに関しては、少しだけ先輩ですから」

 

 効能調査のほか、理さんは同じスパイスの食べ比べも気に入っている。

 スパイスはメーカーによって、味や香りが異なるのだ。

 染さんにも、お気に入りのスパイスがあるみたいだった。

 

「……もっと勉強して、現地でスパイスを選んでみたい」


 理さんがふと呟いた言葉に、近くを通りかかった雛ちゃんが反応する。

 

「じゃあ、私が先生の飛行機に同乗しますね! キャビンアテンダントとして!」


 雛ちゃんは嬉しそうに、理さんの周りをうろうろし始めた。

 元教師と生徒だからか、彼女は理さんにとても懐いているのだ。


「楓ちゃん、今日は皆も揃っているし、まかないはカツカレーにしようと思うんだ。ちょうど人数分、豚肉が余っていて……」


 キッチンの奥から、染さんが顔を出す。


「やったぁ、お手伝いします!」


 楓は早足でキッチンへ向かった。トンカツもカレーも大好きだ。

 染さんがカレーの用意をしている間、楓はカツを揚げる。

 すでに、クミンパウダーとブラックペッパーと塩で味付けされている豚肉を取り出して、衣をまぶしていく。

 それを、温度の上がった油にイン!

 すると、揚げ鍋の中からジュワァッといい音が響く。


「できあがるのが楽しみ……」


 染さんの方も順調だ。スパイスやタマネギに、すりつぶしたにんじんやトマト、チキンブイヨンを加えた、赤い色のカレーを作っている。おいしそうな香りがしてきた。

 

 正直、染さんと楓以外の二人は毎日カレーという生活に飽きるのではと思っていた。

 しかし、理さんも雛ちゃんもカレー生活が平気な様子。

 雛ちゃんは「ただで他人のご飯を食べれるなんて嬉しい!」と喜んでいるし、理さんはスパイスに凝り始めたので、むしろ、いろいろなカレーを食べたいそうだ。


 完成した染さんのカレーをお皿に盛り付け、カラッと揚がったトンカツをサクッと切って上に載せる。


「できましたよ~」


 二人でカウンターへ皿を運び、皆で並んで椅子に腰掛けた。


「いただきます」


 楓は早速、熱々のカツにかぶり付く。

 サクサクの衣に歯を立てると、ジュワッと口の中に油と肉の旨みが広がった。

 カレーとも、よく合っている。


「んっ! おいひい……」


 はふはふと、楓は次々に勝つとカレーを口へ運んでいった。手が止まらない……!

 四人は無言でカツカレーを食べ続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ