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41:<土曜日> 鶏キーマカレー

 土日の洋燈堂は、平日に輪をかけてお客さんが増える。

 今日のカレーは鶏キーマだ。

 キーマとは挽き肉を意味し、今まで洋燈堂ではカツオや豚など様々なキーマカレーを提供している。

 シンプルだけれどおいしいカレーだ。

 最後に中央に生卵を載せると完成。ゆで卵のカレーもだけれど、卵は特にカレーとよく合う。

 それから、来週の平日は期間限定でコーンカレーを加えた五色のカレーを出すことに決まった。


 <土曜日>

 本日のカレー(鶏キーマカレー)

 定番カレー(四色カレー)

 

 最近の楓は、料理も担当するようになっている。

 染さんのサポートをしながら、カレーの配合なども学んでいた。

 もっとも、染さんは、その日の天気や気分でスパイスを調合するので、決まったレシピはないのだけれど。


「楓ちゃん、今日の営業が終わったら、仕事について伝えたいことがあるんだ」

「わかりました」


 返事をして、楓はチャイを作り始める。

 染さんに出してもらって感動したチャイを、今では自分で作れるようになった。


 ランチの時間が終了する頃、店の扉が開いて誰かが楓の名前を呼ぶ。


「楓」

「えっ……?」

「あなた、カレー屋で何をしているの?」


 荷物をたくさん手に持ち、唖然とした表情で店内を見回しているのは……実家にいるはずの母だった。

 目の前の光景が信じられず、楓は客の食べ終わった皿を手にしたまま硬直する。


「お母さん、どうしてここに?」

「どうしてもなにも、楓の引っ越し先を確認しに来たのよ。ラインを送ったでしょう? あなたがいないから、お昼を食べてしまおうと思って、近くの店に来たら……」

「ごめん。仕事中で、見ていなかった」


 というか、来るなら前日に知らせておいて欲しい。

 こちらにも、準備というものがあるのだから。

 楓の実家は、田園風景の広がる田舎にあり、事前連絡という文化が浸透していない。

 

「で、カレー屋で何をしているの」

「見てのとおり、働いているけれど……」


 答えつつ、楓は大変動揺していた。

 なぜなら、心配させたくないという一心で、母には前の仕事を辞めたことを全く伝えていなかったからだ。

 

 幸い、楓の実家には優秀な妹と弟がいる。

 だから、自分など、どこで何をしていても、彼らは気に留めないと思っていた。

 まさか、実家から遠く離れたこんな場所に、母が来るとは考えてもみなかったのだ。

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