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34:<木曜日> 牛・豚・鶏のカレー

 店の休業日、楓は染さんと、出かけることになった。


(買い出しじゃなくて、一緒にご飯だなんて。他店の偵察とはいえ、デートみたい……いや、これはあくまでカレー研究の一環。浮かれては駄目だ)


 ぐるぐると回る思考に悩まされつつ、楓は会社員時代に着ていた綺麗めの服に袖を通す。向こうの気持ちはどうであれ、染さんと一緒にいられるのは嬉しい。

 休日だし、髪も少し巻いてみようと気合いが入る。

 車を止めている倉庫へ移動すると、ちょうど染さんが階段から下りてくるところだった。


「おはようございます、染さん」

「おはよう、楓ちゃん。いつもと雰囲気が違うね」


 気合いを入れすぎただろうかと不安になっていると、染さんがふわりと微笑んだ。


「可愛い」

 

 その言葉に、心臓がバクバクと早鐘を打ち始める。

 浮かれては駄目だ。染さんは普通に「可愛い」と言えてしまう人なのだから。

 これは、七五三でめかし込んだ子供を「可愛い」と褒めているのと同じなのだ。

 自分を戒めつつ、車の運転席に乗ろうとして、染さんに助手席へと追いやられた。


「今日は僕に運転させて」


 買い出しのときは交代でハンドルを握っているけれど、車は染さんのものだし、彼の言葉に甘える。

 天気は快晴で、お出かけ日和だ。


「どこのカレー屋さんに行きましょうか?」

「そうだね。この間のカレーフェスで、一番行列ができていた店はどうかな。あの店、売り上げも一番だったみたいだし、参考になるものがあるかもしれない」

「いいですね、そこにしましょう」


 目的地も決まり、いよいよ出発だ。

 開店の少し前くらいに着いて、店が開くとすぐ入れるのが理想。

 

(でも、人気店だから、並ばなければいけないかも)


 車で三十分の距離に、目的の店がある。

 もともとは、洋燈堂のような小さなカレー店だったらしいが、爆発的に人気が出た今では二号店や三号店、四号店までできている。ちなみに四号店は、超有名な大型ショッピング施設の中に入っていた。

 楓と染さんが訪れたのは、もちろん一号店だ。

 建物は一番古く、こぢんまりとした店で、ごみごみした駅前のわかりにくい路地に建っている。

 居酒屋やらスナックやらに混じって、人気のカレー屋は店を構えていた。

 

(洋燈堂並に、不親切な立地)


 けれど、違うところもある。

 開店前にもかかわらず、店の前には長蛇の列ができていたのだ。

 その数、実に二十人ほど。


「すごい行列ですね。お店、まだ開いていないのに」

「さすが、フェスの売り上げナンバーワンの店だね」


 最後尾に並びながら、店の扉や看板に張り出されているメニューを確認する。

 開店前だけれど、メニューの表示だけは出しているみたいだ。


 カレーメニュー


 A:濃厚ビーフカレー

 B:豚のスペアリブカレー

 C:鶏つくねカレー

 

 二種、三種、合い掛けできます。

 売り切れ次第終了。

 テイクアウトできます。


 当たり前だけれど、表示の仕方が洋燈堂と違う。

 売り切れ次第終了というところもだ。

 楓は染さんと、ドキドキしながら開店を待った。

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