第一章
第九話
~街のミスコン~
私は学校に入る前に、梓にミスコンの会場に引っ張られて連れてこられていた。
まぁでるからには本気でやりますけども。
控え室に行って、衣装に着替える。
「梓~エントリーナンバー21番だって~」
梓「うん。じゃあ、外で見てるね」
すっかり優しいキャラに落ち着いた梓は、紳士の笑顔でそういってくれた。
「うん!」
ちょっくらやりますか!
~ミスコン中~
終りっと!まぁワースト10に入ってるだろうな~。
司会の人が順位を発表していく。
司「それでは一位の発表です!この街で一番可愛いのは~・・・桜庭結菜さん!!すっぴんで一位に輝きました!!何という強さ!!←」
ふぁっ!?一位!?ワーストじゃなくて!!?
梓「ほらね~いったっしょ?(笑)」
マジすか・・・。賞金もらえたからいっか!←
にしても一位・・・これは、明日学校がうるさそうだな(苦笑)
ってか、なんで梓今日ミスコンやること知ってたんだろう・・・。
あ。
「すでに七時半まわってる!?」
梓「そーいえば暗いね」
そーいえばって・・・。天然?
梓「天然に天然って言われたくない」
なぬ!?え、てか口に出してなくない・・・?もしかして梓、エスパー!?(バカ)
梓「ちなみに俺はエスパーじゃないからね」
エスパーだ!!(バカ)
梓「だって、結菜は感情が表に出やすいから・・・」
え~?そうなのかなぁ。まぁでも、いろいろ考えたりすんのめんどくさいから特になにも考えずにポンポン表に出しちゃってるだけなんだよな~。
ってあ!時間!!
梓「そーだね、帰ろうか」
「今そんなに表情変わってなくない?」
梓「今のは普通に声に出てた」
マジすか・・・。その後何事もなかったように家に帰った。
私は、そこでようやくあることを思い出す。
あ。授業丸一日サボってた・・・←
第十話
~翌日~
梓「おっはよー!」
開口一番に真夏の太陽に負けないくらいうるさく自己主張してくるような声で挨拶をしてきた梓は今日も楽しそうだ。
私は梓がキャラ作っているのを把握済みなので、適当に
「おはー」
と返しておいた。
梓は私の『キャラ作っているうちは仲良くする気ありません』的な空気を感じ取ったのか、近くまで寄ってきて
梓「外でどうやってキャラ戻せっていうんだよ」
とみみうちしてきた。
周りはそれを見て「カップルだ!」と確信したらしく(そういう声が聞こえた)キャーキャー騒ぎ出した。
私は梓の服の袖をひっぱり、少しかがんでもらってこう言った。
「梓のせいであらぬ誤解が確信に変わっちゃったじゃん!バカ」
それを聞いた梓は、少しにやっとして上目遣いで(上を見上げるから必然的にそうなる)少し頬を膨らませて怒ったような顔をする私を見やると周りのみんなにこう告げた。
梓「俺の片思いだよ~」
!!?
・・・は!?
梓、いま片思・・・いやいやきっと聞き間違いだろう。
「梓、今なんて・・・」
梓「俺の片思いだよ~っていったよ??」
・・・聞き間違いであってほしかった←
教室に着くと、かくして公衆の面前で告白した彼とされた私は注目の的。
私はこの手の視線がすごく苦手だ。
なるべく気にしないようにして席に着き、違うクラスなのになぜか普通に私の席までついてきた梓に
「いや自分の教室いきなよ(笑)」
といってみた。
なんとなく聞く気はないだろうなと思ってはいたけど←
・・・案の定梓はニコッとしただけで動こうともしなかった←
・・・。
「梓~。どうせ休み時間になればまたはなせるんやからいいやろ?クラス戻りな」
あ。方言使っちゃった(汗)
やば・・・。・・・まぁいっか!←
梓「ちょっと待って、結菜って方言・・・かわいすぎるんだけど!」
・・・・・??
「別に方言なんて使っても使わなくてもかわいくないやろ・・・(照)」
あ、またつい方言が・・・。
梓「・・・ごめん」
え・・・(ギュッ)・・。!!?
「えっと・・・なんで私抱きしめられとるん?(照)」
梓「あ、ごめんついかわいすぎて」
ふぁ?ふぁっ!?
「かわいくないし!ていうか答えになってないやん(笑)」
ってかよく考えたらこれクラスで・・・あ。(チラッ)
当然のように全く遠慮せずガン見しているクラス一同の皆さん。
・・完全に存在忘れてた・・・・・←
モブ1「もう付き合っちゃえよ」
モブ2「そうだね。うん。付き合った方がいいね」
!?
「いやちょっと待って!」
モブ・梓「「「??」」」
「まず私、梓のことそーゆー目でみたことないんやけど・・・」
シーン←
・・・。いやだってさ!?ついさっき梓が私のこと好きって知って、いきなりそんなこと言われたって・・・。
モブ1「あー春川君これ結構刺さったんじゃない?」
モブ2「なー」
えー!いやもうしゃーないとしかいいようが・・・←
梓「あ。じゃあさ、結菜。「ん?」・・・試しに付き合って「え?」あ、いや。じゃあさ、俺のこと、そーゆー目で見てよ、これから」
「ん~・・・わかった」
・・・ん?なんでみんな、梓のこと可哀想・・っていう目で見てるの?(主人公は天然です)
まぁ、わかんないこと考えたってしょーがないよね!!←
にしてもまさか梓が・・・っていうか。
(そもそも、好きってどんな感情なんだろう??)
第十一話
~モヤモヤ~
梓に公開告白(?)されてから数日がたった。
梓は私といつも通り接してくれているけど、正直言って『そーゆー目』っていわれても・・・って感じなんだよなぁ・・・。
どーしたもんか・・・←
「梓~あのs モブ「梓君!!」・・・」
割り込んできやがったな!?←
とまぁそれはどうでもいいとして、
梓「どうしたの?」
モブ「ね~梓君、ちょっと相談したいことがあるんだけど・・・」
梓「ん、いーよ。いってみ?」
モブ「ほんとに!?ありがとう梓君!!」
なんだこの私を遮ってやったぜへっみたいな感じの梓好き好きオーラ全開のモブは(笑)←
でも、梓もなんか楽しそう・・・?
(モヤッ) ・・・・・?
モヤ?
なんだろう・・・なんかすごくモブのことぶっ飛ばしたい←
別に普通に梓と話してるだけなのにな~。
どうしちゃったんだろう、私。
「・・・梓!」(グイッ)
梓「え?結菜・・・?」
梓の驚いたような声を聞いて、私は無意識に梓のことを引き寄せてしまっていたことに気づいた。
・・・え?
っなんで私、こんなこと・・・!?
自分で自分に問いかけながら、私は必死に言い訳を探す。
「これ運ぶの手伝ってってさっきから何回もいってるんだから無視しないでよ・・・(うるうる←)」
梓「!?マジで!?ごめん・・・全く気づかなかった(ショボン・・・)」
口をついて出た嘘を本気で受け止めて反省している梓。
・・・いや、こっちこそごめん←
言ってないんだから聞こえてなくて当然だよ梓・・・。
でも、なんで引き寄せちゃったんだろ・・・?
何でかわかんないけどすごくモヤモヤしてるし・・。
とりあえず、梓に荷物を運んでもらってから←(都合よく運ぶものあったw)
梓がまたあのモブのところにもどって会話を始めたのを見て、またモヤモヤし始めた私の肩を誰かが叩いた。
ふりかえると、そこには誰もいなくて・・・!なんてことはなく。
普通に美乃里がたっていた。
美「やほ、結菜。どしたの?そんなに考え込んで」
いつも通り私と一緒に行動してくれている美乃里。
「ねぇ美乃里~」
美「ん~?」
美乃里ならこのモヤモヤの正体知ってるんじゃないかな?
・・・説明中・・・
美「そっか、そんなことが・・・。まぁ、話を聞いた後でのざっくりとした決断は、『ヤキモチ』だね(笑)」
ヤキモチ・・・ってあの、好きな人に対する・・・!?あ、好きな人に関わる同性に対するだった(どっちでもいい)
え・・・!?
「ヤキモチ・・・!?」
何を根拠に・・・?
美「結菜の行動のすべてを見て、その感情は一般的にヤキモチって言うんだよ」
!?
ここにもう一人エスパーが!?
美「あ、私はエスパーじゃないからね」
エスパーだ!!(バカ)
美「だって結菜って感情が表情に出やすいんだもん」
あ、梓にも言われたな、同じこと。ミスコンの時だっけ?そんなに出やすいのかなぁ・・・。
ってそんなことどうでもよくて!←
ヤキモチ・・・?え、だっておかしいじゃん、それじゃあ私、梓のこと・・・!?
いやいやいやいや。
私が梓のこと好きなわけない。
っていうか、『そーゆー意味』の好きってなに?友達の好きと何が違うの?
私が永遠と同じことを考えていると、美乃里はあきれたように
美「わかんないならわかんないでいーんじゃん?いつかわかるときがくるよ」
といってきた。
(なるほど!!←)
私は一人納得して考えるのをやめた。
第十二話
~自宅謹慎!?(長め)~
昼休み。私達はいつも通り食堂に向かっていた。
そして、石廊下にさしかかったとき。
_ドカッ バキッ!_
!!?
人を・・・殴る音!?
?「~~!~!!」
なんか怒鳴る声も聞こえるし・・・!!
美「喧嘩!?」
私達は石廊下から飛び出し、音が聞こえる方に向かう。
つきあたりを曲がった先にある中庭に駆けつけた。
そこには、5・6人の人が倒れていて、その奥の倉庫の前の石階段に座っている人とその手前に立っている人がいた。
・・・。
もう喧嘩の勝敗ついてんじゃん(笑)
1対6で1が勝ち!?
めっちゃ強いやん、いいな私も強くなりたい←
ってかてか、この転がってる6人って、ガラ悪いって有名な三年じゃん!?
よけいにすごいな・・・たぶんあの立ってる人が倒したんだろうな、誰だろ??
こちらに気づいたのか、その人はふりかえって・・・ !!!?
あ・・・梓!!?
「梓!?なんでこの人たちぶっ飛ばしたの!?←」
梓「結菜・・・。あー。ちょっと腹立つことしてやがったから思わず・・・」
キャラ作ってない・・・っていうか梓、未だに凄く怒って・・・!?
梓は持っていた空き缶を片手で握りつぶして、地面を睨んだ。
こんなに・・・怒っている梓は初めて見た。
まだ怒りがおさまらない様子の梓は、転がっている中の一人を蹴り始めた。
(さすがに・・・!?)と思った私は、梓の名前を鋭く何回も呼んだ。
でも・・・。
梓にはまるでなにも聞こえていないような様子だった。
もうこんなの・・・これ以上梓にやらせたくない。
梓「結菜・・・」
私は我に返ったような梓の声を聞き、ほっとして腕を解いた。
って、ん?・・・・・・!!?
私今梓のこと・・・!?
私が一人で動揺していると、梓に抱きしめられた。
・・・・!!!??
梓「結菜」
「ど、どーしたの梓。何があったん?」
驚きを必死に隠しながらできるだけ穏やかな声を心がけながらたずねてみると、
梓「実は・・・」
少し哀しげな目を陰らせ、梓は状況を説明し始めた。
・・・説明中・・・
梓に聞いた話をざっくりとまとめると、こういうことらしい。
梓は、例の六人の先輩にものを盗られたという友達のためにとり返すタイミングを見ようとして影でこっそりうかがっていたらしい。
そのとき六人の先輩方は中庭に行き、
偶然植物に水をあげていた二年男子の先輩にカツアゲを始めたらしい。
そのうえ何回も蹴ったり殴ったりしているのを見て我慢の限界が来た梓は・・・ということだそうだ。
梓の腕の中から解放され、すぐそばにあった倉庫の前の石階段腰掛けた私は、
梓に隣に座るようにジェスチャーし、美乃里に縮こまっていた人と一緒に先生を呼んできてもらうことにした。
「・・・・・」
梓「・・・・・」
中庭に二人になってからしばらくたち?(たった気がしただけかも)そろそろ私が沈黙に耐えられなくなりそうだったとき。
梓が、ポツリとこぼした。
梓「この・・・先輩たちは、・・俺が昔・・・・つるんでた奴らだった」
・・・!!
梓「俺は、あいつらからしたら”裏切り者”。すごく怖くて辛かった。あの頃は・・・!」
『あんなに、仲良かったのに』そう言いたかったんだろう。
私は、”そういう経験”があるわけではなかったけど、なんとなく、梓が傷ついているのはわかった。
泣きそうなのを我慢して?震えている梓を思わず撫でてしまう。
「梓。もし泣きたければ 泣いていいんやよ?・・それとも、私は梓にとって頼るに頼れない相手だったん?」
梓が息をのむ気配がした。
次の瞬間、ギュッと強く抱きしめられた。
梓は、”泣く"とまではいかいけど、涙がにじみかけているようだった。
私は彼を『支えたい』と思った。
「梓。梓・・・」
梓「っ・・・。結菜、ありがと。もう大丈夫」
私はもう一度梓をギュッとしてから体を離した。しばらく抱き合っていた(?)からか、
梓はだいぶ落ち着いたようだった。
そのまましばらく雑談をした私達だった。
(梓が私に心配かけないように演技してくれてるのはわかったけどスルーした)
第十三話
~自宅謹慎!?Part2~
まだ雑談を続けていて、その時間を普通に楽しんでいた私に、梓がふいに満面の笑みでこう告げた。
梓「うん。やっぱり俺、結菜のこと好き!」
・・・!
梓「”恋”あるいは”好き”がわからない結菜からしたら、変な奴かもしれないけどね(笑)」
照れたように薄く頬を染めた梓に、私は思わず口走ってしまう。
「ねぇ、梓。梓の言う”好き”って、他の異性と楽しそうにしてたらモヤモヤしたり自分だけを見てほしくなったり、抱きしめてもらいたくなったりする??」
あ・・・。
梓「・・・!!/// (コクッ)」
・・・・・・・。
「やっぱりめんどくさそうだなぁ・・・”恋”とか//」
梓が少し遠慮したからなのか大事そうにキュッ・・っと抱きしめてきた。
私は少し驚いて梓から体を離す。
そこにタイミングよく・・・
美「結菜!先生呼んできたよ~?」
美乃里が帰ってきた。
あ・・・・。
先「事情を聞かせてもらえる?」
・・・説明中・・・
先「なるほど。ま、まぁ・・やむを得なかった(?)事情がある(のかもしれない)のはわかったけど・・・。実際に六人気絶させちゃってるし、処分何も無し、とはいかないかな」
そんな・・・。
梓「そうですよね、俺はどうすればいいですか?」
梓・・・。
”当たり前のこと”というように顔色一つ変えずに平然と頷いた梓。
先生は梓の過去を知らないから、梓のつらさを何も理解していない。
・・・だからといって先生に勝手に過去をしゃべって同情させたいわけじゃないし、(ていうかむしろそんなこと絶対しない)でも・・。
私は、梓のこと、この学校の中では一番理解しているつもりだ。
だから、梓のつらさを考えると(本人に比べたら全然だけど)すごく胸が痛くなる。
私でもこんなに胸が痛いのだから、梓は胸の部分に病を患ったと錯覚しそうなほどズキン、ズキンと痛むんだろうな。
そう思うとさらに胸が痛くなる。
だけど、私は今、梓にしてあげられることは何もない。
”下手に口を挟んだら処分が重くなりかねない”。その可能性もないとは言い切れないのだ。
もちろん、カツアゲとか盗難なんかしてるあの六人のセンパイは停学になってもいいと思う。
梓の気持ちを考えると助けてあげたい。
でも、そうおもったところで私にできることは何もない。
さっきまで、幸せの絶頂にいたのに。
今は、絶望の淵にたたされているような気分だ。
まぁ、それは大袈裟かもしれないけど。
こんなにも自分をもどかしく思ったのは初めてだった。
自分で言うのも何だけど、割と何でもうまくこなしてきたから、自分が”もどかしい”なんて微塵も思ったことがないのだ。
ここまで考えて、なぜか、ふと思った。
(あぁ、私、ほんとに梓のこと好きなんだなぁ)
なんでこのタイミング!?と自分でも思うけど、まぁ思っちゃったものは仕方ないよね。
梓「菜・・・結菜!?」
はっ!←
「ご、ごめんぼーっとしてた」
あんだけいろいろ考えてたくせに、よく『ぼーっとしてた』なんていったよな(笑)
梓「ほんとに~?(笑)一人で百面相してたのに??」
そう言って意地悪く笑う梓に、私はまた無理してんのかな?と少し心配になる。
だけど、その不安も梓が私にだけ聞こえるように
梓『もしかして俺のこと心配してた?大丈夫、俺のつらさなんて結菜の”好き”でどこかに吹っ飛んだから(笑)』
と微笑みながら囁いたことであとかたもなく消え去った。
(まぁ代わりにすごく照れることになってしまったんだけど。(笑)///)
こういうことをサラッとされてしまうと、かっこいいな と感じる自分がいて、
照れさせられた(?)お返しに梓に囁き返す。
『うん。梓のことが好きだよ。辛いことがあったら言ってね、支えるから(ニコッ)』
自分が出せる限りの”深くて甘い声”。
梓の顔は初めてであったときより赤かった(笑)
やったね大成功☆←
・・・話し合い中・・・
話し合いの結果、梓は一週間の自宅謹慎になったそうだ。
私は梓に気づかれないように先生にこそっと(梓の)住所を聞いてサプライズで押しかけることにした(笑)
梓が処分を受けるのはまだ納得いかない部分もあるけど、いいんだ!
私は、家に乗り込んだときの梓の驚く顔を想像して、クスッと笑った。
~第1章END~