一対六十三
個人対集団
戦闘はむつかしい。
木の間だと戦いにくいので群れのいる木のないところに向かって走る。先頭のダーティゴブリンの首を切り飛ばし、その死体をつかんで向かってくる群れの真ん中に投げ入れる。やはり頭の弱いコイツらはその死体を目で追って俺から視線を外した。武器の変更は
「展開」
と言言いながら武器を思い浮かべる音声入力でもできるので、一秒もあれば余裕だ。武器を槍に変え、近い数体を薙ぎ払いそのまま突き出してそこにいた三体まとめて首を貫く。槍が動かなくなって好機と思って近づいて来た奴の首を蹴り抜くと嫌な音と共に飛んでいった。
瞬く間にやられた仲間を見て、怖じ気づいたのかダーティゴブリンは円を描くように俺を囲みだした。・・・いや、距離が開きすぎだ。これは・・・
奥からダーティゴブリンの魔術師の準備していた火球が飛んでくる。正直言って遅いので、槍で貫いて掻き消す。しかし遅いといっても魔術はどれくらい威力があるのかわからないので、速く気付けて良かった。ダーティゴブリンに感謝だ。・・・撃ったのもコイツらだけど。
どうでもいいことを心で呟いて殲滅再開。槍で三体まとめて貫き、そのまま振るって周りのダーティゴブリンを弾き飛ばす。石突で突いて後ろのやつの額を砕き、戻して三体貫く。後はその単調作業だ。
『 経験値3739獲得
レベルアップ 6 → 13
ドロップ 汚れた腰布×60
汚れた耳×27
小魔石の欠片×2
称号解放
〈掃除家〉
ダーティと付くモンスターへの与ダメージが少し増加する』
リザルト画面が出る。〈掃除家〉か、下層エアデの中ではそこそこ使えそうな称号だな、でも後で。次はあの三体だ。
まずは魔術師に向かって走る。掻き消せるがちまちま魔術使われたらイラつくから。しかし立ち位置的に黒っぽいやつらのうち、右の斧のやつを抜かなければならない。ダーティゴブリンとはちがって一瞬で倒すことはできなさそうなので、飛び越えることにした。相手の斧の間合いに入ったので振るわれる斧を急制止してよけ再スタート。槍を地面に突き刺し棒高跳びのように斧のやつを飛び越え、魔術師の真後ろに降り立つ。あわてて離れようとするその足を掴んで引き、倒れたところを踵で首を踏み抜く。
「展開」
そのままのっそりと振り返った斧のやつを音声入力で取り出した短剣で左胸を切り開く。痛みで動けなくなってるのもお構いなしで生々しく蠢く体内の心臓を引きずり出してお仕舞い。
最後のやつに目を向ける。そいつは俺より10センチくらい高かった斧のやつより頭ひとつ分大きく、体も一回り大きかった。身の丈ほどの無骨な両刃で、少し錆び付いた大剣を構え、そいつは吠えた。
「グガァァァァァァァァァ!!」
ラスト。
駆け足ぎみかな?