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phase.1-0 痕跡/prologue (1/○)

 意識だけが暗闇に囚われ、宛てもなく彷徨い続けていた。あらゆる概念が消失してしまった虚空の世界で彼は随分と長い夢を見ていた。



 空白の夢。始まりも終わりもない。



 鈍痛は不協和音さながら、その残響は全身を侵し、余韻が頭から離れることはない。彼の身体に宿る意識がより鮮明になると、いつしか永き夢は終焉を告げていた。


 重い瞼を僅かに上げると、外界から一筋の光が差し込んだ。ゆっくりと持ち上げられる瞼と連動し、少しずつ、しかし、着実に外界からの光が視界に溢れる。瞳孔による光量の調節が追い付かず、光の刺激によって鈍痛は強烈な一閃となって彼の頭部で反芻した。


 思わず彼は唸りを上げた。しかし、声にはならない。喉を鳴らすことさえ叶わない。


 激痛のうちに、意識がふつと途絶えて、昏い深淵へ再びいざなわれようとしたその瞬間、彼は薄れゆく現実に、その視線に、何かを捉えた。


 ベッドサイドテーブルに置かれた一枚の手紙。

 そこには一言だけ。


 『久しぶりだね』


 綺麗でどこか見覚えのある柔らかい字だった。ただの文字の羅列が文章としての意味をもつまで、彼には少しばかり時間が掛かった。


 手紙の脇にはテーブルを満たすように作りかけの千羽鶴が散らばっていた。しかし、そのことにはどうしてか直ぐには気づかなかった。



 




 


 

 


 

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