第二十三章 就寝
時刻は深夜二時。二十五番がアジトと呼んだ1軒屋の二階の寝室で、西園寺が眠っていた。その少女が眠っているベットを除き混むように二十五番と十三番が立っている。
風呂からあがると、二十五番は西園寺にもう休むように言った。西園寺は最初は遠慮していた。「お二人は寝ないんですか」と聞かれたりもした。「見張りがあるから」と素っ気なく十三番が応えても、まだ遠慮していた。
しかしベットに入ると、西園寺はすぐに泥のように寝てしまった。
「もう寝たかなー」
「みたいだな」
「全く、危機感が足りないよねー。流石、平和な日本で生きていただけあるよー」
二十五番が呆れたように言う。そして、彼女は健やかに眠る西園寺を睨みつけた。
「疲れているんだろう。いろいろあったし」
十三番がそう言うと、二十五番は十三番のことをじぃっと見つめきた。その視線は、子供のように純粋そのものだった。二十五番は不思議そうに十三番を見つめた。
「な、なんだよ」
居心地が悪くなり、思わず十三番の口から疑問の声が漏れた。
「別にー」
二十五番はそう答えると目を逸らした。それからふと思い付いたと言わんばかりに突然告げてきた。
「そういえばさー、十三番ちゃんのお父さんってこの国にいるんだっけ?会いたい?」
「…どういう意味だ?それは」
十三番は自分の声が獣の呻き声のように聞こえた。一瞬、自分が答えたと分からなかった。それほど十三番は低く、苦しい声をだした。
「別にそんな意味なんてないよー。十三番ちゃんのお父さんはこの国に亡命したんだって思い出しただけー」
「そんなこと思い出すな」
十三番は苦々しく思い、キツく二十五番に吐き捨てた。それから二十五番を睨み付ける。そして気がついた。二十五番が悲しみを堪えるような顔をしていることに。
十三番は考える。どうして二十五番がこんなに傷ついたような表情をしているんだろう。
それから二人はぽつぽつとこれからの話をした。このアジトを引き上げ、祖国に帰る準備を進めることで二人は同意した。計画をたてる時の二十五番は、いつものおちゃらけた様子とうって変わり、いつも真面目だ。それはこの日も同じだった。
しかし十三番の中で、二十五番に対しての違和感は膨れ上がっていくばかりであった。




