第十九章 責任
十三番はどこから話そうか少し悩んだ。そして簡略化して説明することにした。
「私の父親は祖国を裏切ったんだ。私は裏切り者の娘だから信用出来ないというわけだ」
「あの…、杉野さんはこの国の人じゃないんですか?」
「ああ。名前も偽名だ」
「えっと、じゃあどういう風に呼べばいいですか?十三番さんとか、ですか」
「それはやめろ。杉野でいい」
ややキツい言い方になってしまった。怯えたような様子を見せる西園寺に十三番は慌ててフォローをする。
「十三番というのはコードネームなんだが、私はあまり気に入っていないんだ」
「そうなんですか…」
ととりあえずのところ納得してみせる西園寺。
「あの、杉野さん?はどこの国の人なんですか」
聞かれるだろうと思っていた質問がやっと聞かれた。十三番は少し満足した。この質問なら答えやすい。
「西アジア共和国だ」
「それ…は」
西アジア共和国。この国の人間なら名前は知っているだろう。何をしでかすか分からない独裁国家として。国連が何度か国の虐殺行為等を注意をしているものの、大国の利害関係が絡み深く踏み込めないでいる。という認識で間違いないはずだ。
「どうして、そこの人が、私を」
思わず十三番は口をとがらせる。
「私は末端の工作員だからな。詳しくは知らない」
すねたような言い方になり、十三番は反省した。西園寺が機嫌を伺うようにこちらを見ている。おもむろに西園寺が言ってきた。
「えっと、杉野さんは日本語話せるって凄くないですか。あそこ公用語ありましたよね」
「まぁ、な」
話の変え方が急である。西園寺は機嫌をとろうとでもしていろのだろうか。しかし十三番はその発言でちょっとだけ機嫌が治った。誰だって誉められたり、感心されれば嬉しいものだ。
「あの、校長先生は、どうなったんでしょう?」
十三番は西園寺の顔色を伺った。西園寺の表情は陰っている。
「私が見た限り死んでいたな」
質問の意図がよくわからず、十三番は慎重に答えた。死んでいるのを見たじゃないかと十三番は言いたくなった。しかし西園寺の暗い顔を見ていると、なんとなくそう言うことは憚れた。
「殺した奴の正体は分からない。ただまぁ、狙いは君だろうな。恐らく校長に顔を見られるか何かしたんだろう。全く、プロの風上にも置けないな」
西園寺の浮かない顔を見ながら、十三番は適当なことを並び立てた。西園寺はほとんど反応を見せなかった。十三番の言葉など耳に入っていないようだ。そして震えるような声でぽつりと呟いた。
「私の、せいですよね。これって」




