表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
十三番と呼ばれた少女  作者: 弓 あかり
14/31

第十三章 校章

先に美咲が窓から街路樹に向かって飛び下りた。それを後ろから西園寺は見ていた。西園寺は、ごくりと唾を呑み込んで呼吸を整えるように深呼吸をした。―自分は杉野美咲を信じることにしたんだ。心にそう言い聞かせて、西園寺は美咲の隣に飛び降りた。

「いたっ」

西園寺は飛び降りた後に、そう声をあげた。上手く受け身がとれなかったのだ。足に衝撃が走る。「見せろ」と美咲は言って西園寺の足を確かめる。

そして西園寺に感心したように美咲は言う。

「捻挫だけか。運がいいな」

「ええ?大丈夫って言ったじゃないですか」

「二階といえども、打ち所が悪ければ死ぬぞ。普通は骨折するし」

「そ、そんなこと、聞いてないです」

「言わなかっただけだ。まぁ、君は体重が軽いから大丈夫だろうと思ってはいたが」

「ちょっ、ちょっと」

「まぁ、君と私では『大丈夫』の定義が違っただけだ。私は嘘はついていない」

それでも不満有りげな西園寺に気がつきつつも、美咲はそれを無視する。

「私の仲間の応援がすぐ来る」

「えっと、連絡をとりあったんですか」

「別に連絡なんてとりあってない。ただ私のこの校章」

そういって実際に左胸についている校章を外してみる。和桜の校章は安全ピンでつけるもので、美咲は外すのに苦労した。この校章は金属製なので硬い。それを西園寺に渡しながら、美咲は続ける。

「発信機になっている。私が学外に出たとなれば、仲間が何らかのリアクションをするだろう」

「へぇー」

しげしげと校章を見つめる西園寺。桜の形をした校章に興味がでたらしい。美咲は西園寺にそれで遊ばせておくに任せた。そして辺りを警戒する。

「あの、この格好目立ちません?補導されちゃいますよ」

警戒している美咲に、西園寺が至極真っ当なことを言ってきた。

「ああ、だからここで待つ。ここなら人通りも少ないしな」

私立和桜女子高校は最寄り駅というものがない。駅に出るスクールバスが朝と夕方にあり、基本的にそれで生徒達は登下校する。スクールバスは二十分ほどで駅から学校を繋いでくれている。駅から不便な場所にあるため、生徒を除けばこの周辺で出るのは不審者くらいだろう。

だというのに、足音が聞こえる。嫌な気配がする。何人か近づいてきている。誰だ。校長を殺した奴の仲間か。はたまた別の勢力か。もしくはただの通りすがりか。

美咲は今の状態を確認する。足手まといが1人。持ち物はさっきナイフを投げたため、予備のナイフはあと一本しかない。煙幕ももう使ってしまった。

さて、二十五番がくるまでどれだけ耐えられるだろうか。十三番は考えてみた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ