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十三番と呼ばれた少女  作者: 弓 あかり
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第十章 嘘

「あの…」

西園寺が何か言いたそうにしている。しかしもじもじとしていて、一向に話し始めようとはしない。ここは生徒で賑わう学食だ。西園寺の小さな声はかき消されてしまう。

「何?」

面倒に感じて、やや不機嫌そうに美咲が問いかけると

「さ、さっき、斎藤さんと何を話してたんですか?」

ようやく本題に切り出した。

「…」

斎藤がいろいろと言ってはいたが、はっきり言って美咲にとっては、西園寺の人格などどうでも良いのだ。美咲にとって気になるのは、西園寺の利用価値。そして、美咲自身がもっている情報からすると…。西園寺にここで聞くべきことは…。

美咲は西園寺に鎌をかけてみることにした。

「西園寺さんの父親が亡くなっていることを聞いた」

「…えっ」

別に真っ赤な嘘というわけではない。いちよう言ってはいた。

「あの…」

驚いたような顔をする西園寺。そしてその後には、気まずそうな顔をする。

「あの、怒っていますよね」

「なぜ?」

「えっと、あの両親共働きって嘘ついたことです」

「別に怒るほどのことじゃない。言いたくないこともあるだろうし」

これは美咲の本音だった。美咲に、いや、十三番にだって触れられたくない過去はある。

「それに嘘ではないだろう。父親が死んでいることを言わなかっただけで、両親共働きなのは本当なんだろう」

「ええ、まぁ」

納得いかない表情をしている西園寺だが、納得いかないのは美咲の方だ。思わず、言ってしまう。

「もっと強かに生きろ。こういうときは、自分は嘘をついていない、そっちが勝手に誤解したんだくらい言えばいい」

「杉野さんは強いですね」

嬉しそうに西園寺ははにかんだ。相変わらず、西園寺の喜ぶツボはよくわからない。とりあえず機嫌がいいのは好都合だ。さらに畳み掛けて質問をしようもしているところに、校内放送が入った。

『2年D組の西園寺雫さん、今すぐ校長室まで来てください』

女の声。少し緊張したように硬い。美咲はその声を聞いて、何故か嫌な予感がした。

「一体なんでしょうね。私、行ってきます」

のほほんとした西園寺。思わず美咲の口から言葉がでた。

「ちょっと、待って。私も行く」

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