序章
これが初めての投稿になります。プロットとか決めていないんですが、これからも更新を続けていけるように頑張ります。
そこは人通りもない閑静な住宅街。十三番は獲物が通りかかるのを今か今かと待ち構えていた。すると彼はやって来た。ぞろぞろと5人のSPを連れてやってきたのはこの国の人間なら子供だって知っているであろう大物政治家加藤隆三であった。加藤の外見は人のよいおじいちゃんといえるものである。しかし彼の政治手腕は百戦錬磨で、食えない狸爺というのが彼をよく知る者達の総評だ。
十三番は無邪気な笑顔を浮かべて彼に近寄る。彼女の外見はこの国の人間でいえば中学生くらいにしか見えないであろう。それがにこやかに近づいてくるのだ。警戒しろという方が無理な話である。そして彼女は歓声をあげた。
「わぁー、加藤隆三さんですか?いつもテレビで見てます。お仕事頑張ってください。応援してます」
これには加藤も相好を崩し、「ありがとう」と応じる。そこで十三番はもじもじと恥ずかしそうにし「あの…握手してもらってもいいですか?」と声をかけた。
SPは止めようとしたが加藤は「よしなさい」と言って握手をした。
若者の支持を集めることは悪いことではない。また加藤は俗にいうイケメン議員の部類ではなく女の子に握手を求められることが珍しかった。それも十三番に接近を許した理由だろうか。反抗期なのか朝の挨拶すらしてこない息子にでもこんな小さい子まで自分を慕っているのだと、自慢をしようと思った。しかしそれは叶わないことになった。
なぜなら十三番の持っているナイフが加藤の胸に深々と刺さって加藤は死んでしまったのだから。周りのSPは慌てる。しかし彼らとてプロである。すかさず加藤の延命治療をするものと十三番を取り抑えようとするものが現れた。
しかし十三番だってプロである。彼女を抑えようとした男は十三番が放った銃弾とんできて頭にあたった。サイレンサーつきなので銃声は響かなかった。加藤に救命処置をしようとしていた男は十三番がもっていたもう1本のナイフで頸動脈を切り裂かれた。
残った三人は応戦しようと銃を構えた。十三番がSPと加藤の死体を三人の方に向かって押した。彼らは先ほどまで生きていた出来立ての死体が降りかかってきたことに驚き、とっさに対応出来なかった。その隙を狙い十三番は連射した。その銃弾は死体ごと貫き三人に命中した。十三番は弱り動けなくなっている
三人を回り込んで後ろから襲う。
それから一息つくと、先ほどの無邪気な笑顔を一変させ十三番は毒づいた。
「ただ見ているだけとは楽な仕事もあったものだな、二十五番」
「えへへー、怒っている?十三番ちゃん」
気楽な口調でふわふわのパーマをかけた髪をした二十五番が電柱の影から現れた。彼女は極平凡の大学生にしか見えない。十三番がそうであるように彼女もこの国にとけ込んでいた。二十五番はそこが6つもの死体が転がっているというのに似つかわしくな爽やかな笑顔を浮かべて見せた。
「だってー、人が来ないか見張っているのも任務の一つじゃん」
「少しは援護してくれても良かっただろうが」
「あれあれー、十三番ちゃん、援護が必要だったんだ」
「っ、そういう意味じゃない」
「まぁ、結果オーライってことで」
「次はお前が働けよ」
「あぁー、それは無理かな」
「ふざけるな!この次の仕事はお前がやるという約束だったはずだ」
「だってさ、この次の仕事は十三番ちゃんじゃないとできないんだもん」
「どんな仕事なんだ?」
「それがね、よくわからないんだけどー、西園寺雫とか言う女の子を生け捕りにすることだってさ」
「生け捕り?珍しいな。我が国らしくない。というかお前でもできるだろうが」
「それがねー、この子高校生でさぁ、学校に潜入なきゃなんないの。わかるでしょう?十三番ちゃんじゃないとできない理由」
相変わらずにこにこ笑う二十五番を十三番は睨み付けた。
十三番にとって今日はいつもと変わらない1日であった。そして明日も変わらない1日だと思っていた。しかしこの西園寺雫誘拐という任務が彼女の人生を、そして世界の運命を大きく揺るがす出来事となる。十三番はそのことをまだ知らない。
まだSFっぽさはでてないんですが、だんだんSFっぽいストーリーにしていけるようにする予定です。