拾壱章─エピローグ・素晴らしい人間の姿─
健「まあこれで、全ての謎が解けたな。」
桜「どういう事?」
健「この前、こっそり御師匠様に電話したんだ。」
桜「何を?」
健「ちっちゃい頃一緒に遊んだ奴ってのは、二人いたんだ。一人は宰が言ってた、『どっかのお嬢様のような人』。そしてもう一人は多分、『そのお嬢様を船に乗せて運んできた人間もしくはその子供』。多分緒河は、後者の方の人間だ。そして前者が桜。」
桜「じゃあ私が緒河さんに感じた既視感は…」
健「きっとそれだ。そして初授業でどっかの国のお姫様の話が出て狼狽えてたのも、隠さねばならない自分の話題が出たから。俺も狼狽えたが、俺は『驚き』で、お前は話題を変えようとした点から考えて、『焦り』の狼狽えだ。滝田が『この属性の人間と出会えるとは思っていなかった』のは、戦いを好まないここの王族が、滝田の担当であるパワーウエポン科を受けるとは思っていなかったから。そしてお前の『秘密』ってのも、自分が王族であること。そしてそれを属性で滝田に気付かれてしまったことを口止めするのが、あの日残った目的。どうだ、間違ってるか?」
桜「流石ね。一つも間違ってないわ。ばれないように工夫してきたつもりだったんだけど…」
健「そして最後、お前がやたら『普通』を渇望してた理由も、そこにあるんだな。」
桜「そうね。父さんに、『日本の普通を学べば、徳の高い王になれる』と教わったから。」
健「まあそれは、御師匠様によれば、古い話らしいぜ。今はそうでもないって。大事なのは、しっかりと努力し、自分で頑張ること。日本人だからって、皆が皆、徳が高いわけじゃねぇだろ?」
桜「そうね。あたしも、父さんみたいに、なれるかな?」
健「なれるさ。努力すれば誰にでもなれる、『素晴らしい人間の姿』を、久々に見せてもらった気がするよ。」
桜「あたしは他にも知ってるわよ。他人を守るため、一生懸命になれる人。」
健「?誰だ?それ。」
桜「秘密よ、ひ・み・つ。」
健「またそれかよ。いいじゃねぇかよ。教えてくれたって。」
桜心の声『それは、あたしの、目の前よ。』




