拾壱章─轟桜、誘拐される。─
─結局、健達一行は、緒河財閥の船で、戦島まで向かうこととなった。
桜「この前はボタンひとつでひとっ飛びだったけど、案外遠いのね。」
健「っていうかこの船、はえーなぁ。学校の船とは、大違いだぜ。」
桜「前後が逆転したりしないしね。」
健「ハハハ…」
一「大変だ。」
優「何がだ?」
一「緒河さんが、行き先の指定を間違えたって。」
篝「もう、何やってんのよ~。」
優「んで、何処に着くって?」
一「もうすぐ、なんとか王国につくそうだ。」
優「何処だよそれ。戦島から、そんなに近いのか?」
一「ああ、結構近いし、戦島も、その国の領土だそうだ。」
篝「へぇー。日本領だと思ってた。」
優「まあでも、普通に考えて、日本みたいな国が、『戦島』なんて物騒な名前、つけないわな。」
一「だがその国も、日本と同じ言語を話し、文明も日本と同程度で、春なんか、本場の日本よりきれいな桜が咲くそうだ。中には、日本より昔から、桜が咲いていたという伝説も…」
健「っていうか、リサーチしすぎじゃね?」
一「ああ、俺も今、そう思った。」
篝「ってことは…」
優「道なんか、間違ってなかったんだな。あいつにとって、本来の行き先はこっちだ。」
菫「さあ皆様、センチェリア・ブルースタイン王国に、到着致しましたわよ!」
優「っていうか、パスポート大丈夫なのかよ?ビザもないんだろ?」
菫「それはご心配なく。わが緒河財閥の経済力、政治的影響力を考えれば、旅行者数人程度、パスポートもビザもなしで通れますわ!更に、いざとなれば、我々には頼もしい味方がおられますから。」
健「ふーん。まあいいか。とりあえず、もうしょうがないから、ここでの滞在を楽しもうぜ。」
─ショッピング─
優「おおこれいいじゃねぇか。おい明、よくねーか、これ。」
明「なんだそりゃ。」
優「桜の枝でできた万年筆だ。これでノートをとるなら…」
明「万年筆より、ノートをとるなら、ボールペンやシャーペンだろ。」
優「ちぇっ、しょうがねぇ。おい健、お前これ、桜にでもプレゼントしたらいいんじゃねぇのか?」
見ると、優が持ち上げたものは、桜の花びらが大量に入った、『俺の桜』と力強く書かれた小瓶だった。
健「そんなのあげて、どうしろってんだよ。」
優「まあまあ、物は試しだって。やってみろよ。」
健「っしゃあねぇなぁ。おい明、桜は?」
明「そういえばトイレ行ったっきり、帰ってこねぇなぁ。あたいが見てきてやっから、その代わり、それ買ってやるんだぞ!」
健「お、おお。」
明「大変だ!桜が失踪した!」
健「何!?」
優「犯人は緒河か!!!」
菫「言いがかりはよしてください。私には、そんなことをしなくても、勝てる自信があるのですから。」
優「とぼけてんじゃねぇ。女子トイレならお前、入れるだろ。」
菫「そんなことを言ったら、このモール内の全ての女性が、容疑者になりますことよ。」
優「くっ…」
兵士「お前が津田健か。」
健「ああ、そうだけど。」
兵士「轟桜は、我々が誘拐した。」
優「そらみろ。あいつ、お前んとこのボディガードかなんか…」
菫「違いますわ。私のボディガードは、あのように人目につく重装備は致しません。」
優「じゃあなんなんだ、あいつは。」
兵士「お答えしよう。我は、センチェリア・ブルースタイン王国の王直属兵、デミラス・フルクレアだ!!!」




