壱章─『ただの』ワンルーム?─
入学式終了。
クラス発表なども滞りなく終了し、下校となった。
桜「津田くんは、どこの寮なの?」
健「寮なんかにゃ、泊まっちゃいねーよ。」
おかしい。ここは全寮制のはずである。
何しろここは離島だし、ましてや泊まるべきホテルなどない。
そして何より、生徒に野宿させる学校など、あるわけない。
桜「そんなわけないでしょ。しらばっくれてないでちゃんと答えなさい!」
健「まあまあ、落ち着けって。確かに寮はあるけど、使ってないだけだから。」
桜「はぁ?」
常識では考えられない。せっかく寮があるのだから、使えばいいのに。
桜「何で使わないのよ?」
健「俺はここで戦闘を学ぶ。野宿にも馴れるべきだろ。」
何故そうなる。
桜「あのねぇ。いくら訓練したって、修行したって、ちゃんとしたとこで寝なきゃ、疲れがとれなくて訓練が訓練にならないわよ!」
健「でもなぁ。生まれてこの方、あんな部屋には住んだことないから、何をどうしていいのか、ダメなのか…」
桜「す、住んだことないって、あそこ、ただのワンルームでしょ!?」
健「『ただの』なんかじゃないぞ!まず囲炉裏がない時点でおかしい!」
桜「囲炉裏って…あんた、今までどんなとこに住んでたのよ!?」
健「ただのワンルーム。」
桜「…どうやら『ただの』の基準が、あたしとあなたでは違うようだからもう一度訊くわ。
どんなワンルームなのよ!!!!」
健「『どんな』って聞かれてもなぁ…
囲炉裏があり、飯食うためのまな板と机があり、畳に布団敷いて寝るだけの、ただのワンルームだよ。」
─どうやら健もそのワンルームも、ただ者じゃないらしい。




