七章─捜索─
桜「あ、そういえば」
健「ん、何だ?」
桜「そういえばあんた、『甲板に出れる』とか言ってなかった?」
健「あぁ、言ったけど。」
桜「これは『バスじゃなくて、船だ』とも。」
健「あぁ、でもそれが…あ!」
桜「そうよ、船なら、ここが客用の部屋だとして、操縦室とか、機関室とか、救命ボートとか…」
健「そうだな、隠れる場所はごまんとある。行こう!」
─操縦室─
船長がいた。
船長「おやおや、君達、ここは船乗りたちのテリトリーだよ。余所者は帰った帰った。」
桜「でも、人が一人、いなくなっているんですよ!?」
船長「きっとトイレかなにかさ。そんなに焦ることはない。ここは海の上。逃げる所なんて無いんだからね。」
─機関室─
整備士「おう、お前等、ランデブーするには、ここは危険だ。さっさと去りな!」
桜「ら、ランデブーって、そんな大層なもんじゃ…。」
健「生徒が一人、客室から消え失せた。」
整備士「そりゃきっと、トイレにでも行ったんじゃねぇのか?あ…でもそれは無理かもな。」
桜「何で?」
整備士「そりゃお前、あそこで一番早く起きたのは俺だぜ?その頃にはまだ、バスはバスのままだったしよぉ。坊主がどっか行ってる間、俺は客室の真上のこの部屋でじっとしてたが、怪しい音なんて何にも聞いちゃいねぇ。聞いた音といえば、坊主が嬢ちゃんと話す声と、客室に飛び降りる音ぐらいだったかな。」
─救命ボート─
健「まあもう、ここにはいないこと、わかってたんだけどな。」
桜「嘘、なんで?」
健「だってもう、どこにいるかわかってるもん。」
桜「じゃあ何で、さっさと助けに行かないのよ!?」
健「おびき出すため…じゃだめか?」
救命ボートの外に出る。すると─
船長「やあ、君達。大人しく客室で寝んねしてれば、死なずにすんだのに。」
健「バーカ。死なねーよ。」
船長「確かに、もしかしたら生きて帰れるかもしれない。」
船員の一人が、光に銃口を向けながら近づいてくる。
船長「君等が無事生還したせいで、この子の十六年の人生は終わる。さあ、どっちか選びたまえ。」
気が付くと、銃を持った男達に囲まれている。
健「両方だ。」
健は手を挙げる。そして、光を拘束している男に近づく。
健「なあお前、人質換える気はねぇか?」
船員「無いね。ボスの命令がない限り。」
健「だとよ、どうする?船長さん。」
船長「ふん、どうもこうもあるか。人質は換えん。」
健「俺が、この船唯一の、パワーウエポン戦闘科だとしても?」
船長「…!!!」
光、クスッと笑う。
光「決まりね。私、やっと解放されるんだ。」
船員「…お、起きてたのか!?」
健「さあ、人質を換えろ。俺を拘束してから諸を放すのをお勧めするぞ。」
船長「その前にだ。」
健「ん、何だ?」
船長「何故、儂等が連れ去ったと分かった?」




