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四章─プロローグ・健の生い立ち─
夜。
桜達は、老婆を連れて夜の散歩に出掛けた。
─ただ一人、健を除いて。
何でも、ここに住んでいた頃の雑巾掃除が蘇るらしく、夜に外へなんか出ていられないそうだ。
一行は、島で一番大きいと言う大木の下に落ち着いた。
老婆「フムフム、ま、出会ったのも運命じゃて。どうせなら、あ奴の昔話でもするかの。」
桜「あ奴って、健のですか?」
老婆「もちろん。こういうのはな、いない奴の話をするのが一番楽しいのじゃ。はて、何の話をしてやろうかの。」
宰「この木に登った話なんてどうです?」
老婆「おお、そりゃええの。あの頃が一番、やんちゃだったかもしれんな。でもの宰、こ奴らが聞きたいのは、あ奴の生い立ちじゃろうて。そこから先に話さねばならんのじゃ。」
桜「いえ、いいんですよ。あいつはあいつですから。」
老婆「いや、うぬにも考えてもらわねばならんのじゃ。あ奴の生い立ちは、この島の七不思議に入るほどじゃからの。」
優「どういうことだ?」
老婆「あ奴は、不思議な子ゃった…は」
宰「そういえば聞き及んでおりませんね。あの方は、どこで発見されたのですか?」
老婆「この木の上じゃ。」




