四章─桜の危機(ピンチ)と広い『ただのワンルーム』─
ここで部屋に通され、前話の冒頭に戻る。
桜の想像を越えていたもの、それは─
『ただのワンルーム』1つ当たりの広さである。
その一つが、恐ろしく広い。まるで武家屋敷の中の部屋を分ける仕切りを、そっくり抜いてしまったような広さだ。
そして桜を驚愕させたのは、
老婆「布団が1つしか余っとらんのう…はて、どうしたことか…。」
この展開である。そして案の定、
老婆「御友人!!!」
優「何でしょう?」
老婆「あんた、申し訳ないが、布団が足りんの手、なしでええかえ?」
優「いいですよ。」
老婆「おし健!!!お前は嫁さんと1つの布団で寝ぇ!」
健「ん、別にいいけど。」
─こうなるのである。
老婆「というわけで嫁さん。よろしゅう頼むぞ。あ奴に、何か至らぬ点があったら、遠慮のう言うんじゃぞ。」
桜「は…はい!」
押しが強い老婆VS押しが弱い桜
この対決は、言うまでもなく老婆の圧勝で幕を閉じた。
老婆「あ、でもそういえば、孫のやつがあったのう。宰ー!」
宰「は、何で御座いましょう。」
老婆「…の布団、確かここに置いたままだった気がするんじゃが。」
よく聞き取れなかったが、実の孫の名を口にしたようである。
宰「そういえばそんなものも…」
桜「お孫さん、おいくつなんですか?」
老婆「あんたらと同じ、十六じゃよ。縁があれば、会うこともあろう。いや、もう会っておるかもな。」
桜「同じ高校…なんですか?」
老婆「聞かずとも察せるほど、簡単な読解力をつけい。」
桜「お名前はなんて?」
老婆「名前は確か…」
宰「持って参りました。」
老婆「嫁さんや、これは、その孫が合格を報告しに来たとき、さすがに日帰りで帰れる島じゃないんで、持ってきた布団じゃ。存分に使えい。」
桜「あ、ありがとうございます!!!」




