四章─暁宰─
優「名前なんてどうでもいい!お前、退役しかけの軍人なんかじゃないのか?」
宰「いえいえ、確かにもとは軍人ですが、現在はこの津田健様の師匠に当たる方の、従者をしております。」
優「とかなんとか言って、俺等を騙して首を狩ろうってんじゃ…」
健「うんにゃ、こいつは正真正銘、御師匠様の従者、暁宰さ。」
桜「まあ、健がそう言うんなら、そうなんでしょう。」
宰「分かっていただけて嬉しいです。では御案内します。」
桜「御案内って何処に?」
宰「もちろん、我々の住んでいる家です。」
桜「ホントに?」
宰「健様の御友人、あっいえ、パートナーであるあなたを騙すなぞ、あり得ません。」
桜「やったー!」
─数分後。
優「あとどのくらいで着くんだ?」
宰「あと少しであ…ございます。」
優「どうかしたか?」
宰「何でもございません。」
健「抜けねーんだよ…軍人の時の言葉がな。」
優「そうか。さっきは、『あと少しであります。』と言おうとしてたんだな。」
宰「そんな…お恥ずかしい。」
桜「♪~♪~♪~」
健「余程楽しみらしいな。」
桜「いや~。健ほどの奴の御師匠様のお宅だよ~。さぞ豪邸なんだろ~な~って。」
健「んなこたぁねーよ。言ったろ。『ただのワンルーム』だって。」
─その言葉は、桜を絶望のどん底へと容赦なく叩き落とした。




