参章─パワーウエポン科受講資格試験①─
さて。
タクシーやバスを乗り継ぎ、島の南東の端に辿り着いた健と桜であったが、困ったことになってしまった。
─船がなければ、海をわたれない。当たり前のことではあるが、これがなかなか難しい。
『海を渡った後の試験』に気をとられ、『海を渡る』事自体の難しさを完全に忘却していたのだ。
桜「どーするー?まさか諦める?」
少し期待を込めて、聞いてみる。桜にとっては、『フツーの女子高生』を奪回する、またとないチャンスなのだ。
健「いや、それはない。んな事したら、御師匠様に怒られちまう。」
その期待は、一瞬のうちに打ち砕かれる。
桜「でも、海をわたれないんじゃ試験の受けようが…」
健「きっと方法はある。一年を全員閉め出すなんて、あとで政府に怒られちまうからな。」
桜「それはそうだけど…」
健「『謎の教師』も言ってただろ。『甘ったれた奴を入れてる余裕はない』って。ここで簡単に諦めるようなやつは、入れないってことだ。だから諦めるわけにゃいかねぇ。そうだろ、桜よぉ!」
桜にしてみれば、とんでもない迷惑である。
桜「来るんじゃなかった。この島を脱出できたら、いっそこのまま家まで帰っちゃおうかな。」
健「脱出…!!!」
桜「どうかした?」
健「なるほど、そういうことか。危うく不合格になるとこだったぜ。」
桜「え!?わかったの?出る方法!」
健「ああ、『脱出』を、そのままの意味で受け取っちゃならなかったってことだ。」
桜「え!?」
健が『腕時計』の『脱出』ボタンを押すと、辺りは光に包まれた。




