弐章─文化系の超セコい勧誘─
─部活見学。
それは、一年は全く知らないが、先輩達の間では、『壮絶な闘い』を意味する単語であった。
パソコン部。
部長「はい、体験の皆さん、今日はコンピューターウイルスに関する勉強をします。それではパソコンの電源を入れてください。」
電源を入れると、言うまでもなく『ELLOR』と現れ、部長が『優しい』『簡単な』解除法を教えてくれた。
部長「そこにクラスと名前を打ち込むだけですよ。あ、上スクロールしたら壊れるんで、気を付けてくださいね。」
─上スクロールしてみると、そこには確かに『入部届』と書かれてあった。
チャンチャン。
囲碁・将棋部
部員「あー負けちゃった。君強いね。そうだ!体験の子達のランキングをつけてるんだ!ここに名前かいて、ランキング登録しない?」
桜「ちょっと貸してください」
部員「あーちょっと…困るよお客さん!」
そこには確かに『入部届』と書かれてあった。
美術部
部長「今日は簡単な絵をひとつ描いてください。」
描き終わって絵を見せに行くと、
部長「おっ君いいね!才能あるよ!展示したいから、ここに名前を…
科学研究部
部員「おーそれ、そういう実験で証明できるんだ!後でレポートとして残したいから、ここに名前を…
読書部
部員「この本をどれだけの人が読んだか知りたいから、ここに名前を…
書道部
部長「おっ君いいね!才能あるよ!展示したいから、ここに名前を…
どっかで聞いたような台詞である。
茶道部
部員「あ、これおいしい!そのやり方を残したいので、ここに名前を…
あんたらの勧誘り方は、是非残したくないものである。
写真部
部長「おっ君いいね!才能あるよ!展示したいから、ここに名前を…
どっかで聞いたような台詞である。×2
新聞部
部員「おっ君、いいこと書くね!この『第三者からの視点』みたいなのが、特にいい!ヨシッ決めた!今月の我が部の新聞、転用させていただきたいから、ここに名前を…
ちょっと違うこと言うから、期待してしまった。
吹奏楽部
部長「おっ君、いい音出すね!今度我が部のリサイタルに参加してほしいから、ここに名前を…
まだストレートな方、かな?
桜「あー疲れたー!もういい加減、一年が入部届見飽きてることぐらい、気づけっての!!」
健「確かに。皆同じような内容だったな。」
桜「それで?健はどこ入るの?」
健「は?」
桜「『は?』じゃないわよ。どこの部活入んのか聞いてんのよ!」
健「入んねーよ。パワーウエポン科の授業は、普通の授業の後。部活やってる暇なんて、ねーんだからな。」
な、なにいいいいいいいい!?
こうして、フツーの女子高生としての生活だけでなく、『部活』という青春まで奪い去られた桜であった。




