弐章─諸さん─
─放課後。
今日は、何にもやる気がしない。
それもこれも、この隣にいる、
健「なー桜ー、何でそんなに不貞腐れてんだ?」
コヤツのせいだ。
桜「まったく、何で人の紙に勝手に書き込んで提出しちゃうかなー。」
健「あーそれか。だって、何回呼んでも返事しないし、答えはひとつだと思ったから…」
桜「まず聞く時点でおかしい!」
健「じゃあ聞かなくてもよかったのか?」
桜「そういう意味じゃないでしょ!!!まずレディの提出物勝手にいじることがおかしいって言ってんの!!!」
健「『勝手に』じゃないって…
桜「まずいじろうとすること事態おかしいでしょーが!!!」
健「『レディ』ってなぁ…」
桜「あ、そういえばあんた、『レディ』は知ってんのに、『恋人』は知らないのね。」
健「あぁ、御師匠様に毎日、『都会に出たら、レディだけは大事にしろよ。』って言われたからな。」
桜「まあここは、『都会』って言うより『離島』だけどね…」
健「まあな。でも、都会には一回出たぞ。」
桜「何処に?」
健「そりゃーお前、ここに来る前一回来たじゃん。」
桜「『来たじゃん』って…まるであたしも一緒にいたような言いぶりだけど…」
健「行ったって。あの海際の大都会!」
桜「海際には、港しかなかったけど…」
健「あったよ!御師匠様は、『人がいっぱいいて、建物がいっぱいあって、機械が多いところが都会だぞ。』って…」
桜「あぁ、あんだけ人がいて、あんだけ機械があれば、あんたにとっては十分『たくさん』だから、あんたにとってはあそこは『都会』なのね…そんなんで受験、どうしたってのよ?」
健「受験はうちの近くの林で…」
桜「え!?」
健「あ、いや、ま、まぁ、何とかしたよ、うん。」
桜「変なの。」
健「そ、そういえば、今日から部活見学だったな。一緒に行かねーか?」
桜「ごめん。今日友達と行く約束が…」
健「おー、オメーもう友達作ったのか。はえーなー。」
桜「そりゃあんた、昨日わざわざ自分の部屋まで出掛けて、一日中帰ってこなかったときに公園行って、一緒におしゃべりしたんだから!」
健「名前、なんて言うんだ?」
桜「諸さんよ。同じクラスよ?今日は来てなかったけど。双子の妹も、同じ学校にいるんだって。」
健「諸か…どっかで聞いた名前だなぁ。」
桜「当たり前でしょ。クラスメイトなんだから。」
健「いや、そうじゃなくてだなぁ…」
少女「うちの姉が、どうかしました?」
健「!!!」
桜「な、なーに見とれてんのよ。確かに美人だけど…」
少女「はじめまして。津田健さん。」
健「あ、あなたは…」




