拾四章─神襲─
桜「消滅って…」
健「あぁ消滅だ。」
琴「はァ…話してしまわれましたか…」
健「話さないわけねぇだろ。俺は桜を先に死なせるわけにはいかない。消滅も同じだ。何があろうと、絶対に阻止してみせる!」
桜「健…」
健の決意のこもった目とその言葉に、桜は頬を赤らめる。
琴「7年前。」
健「ん?」
琴「私がなぜ、なんのために、どうやって生まれたか、果たしてあなたはご存じなのですか?」
健「生まれてきた事に理由なんかねぇ。そこにあるのはただ、『生まれてきたからには、生きる』という事実だけだ。」
琴「私には、感情論の話をするつもりも、そんな時間もありません。必要なのは、私の細胞の分裂・成長の速度が常人の二倍であり、それ故実年齢は7歳と半年ですが、肉体年齢はあなたと同じ15歳、というだけです。」
桜「…!なんでそんなことが…」
琴「神の思し召しです。私は兄と同じで、神の子ですから。」
健「そういえば誰なんだ、お前の兄さんって。」
琴「あら。本当なんですね。」
健「はぁ?」
桜「そもそも何で、神襲を終わらせるのに、そんな儀式が必要なのよ?」
琴「─神襲とは言いますが、実際は、神々の王たるゼウスが、パンドラのが箱を開けたことによってこの地上に散らばり、浸透してしまった災いを取り除くために、自分の兵を投入したことを、人間が勝手に『襲撃だ』と騒ぎ立てているだけなのです。ゼウスはよく言いました。
『人間のやることなど、たかが知れている。こうしておけば、人間は我が兵に対抗する勢力を構築し、戦おうとする。その中に神界の者を入れれば、罪な人間どもを罰するには、ちょうどよかろう。』と。」
桜「そんな…」
健「そういえば、まだ爆弾学科を見てないな。」
琴「いえ。爆弾学科のお二方は、この件とは関係ありません。関係あるのは、私の未来の姉である、轟桜さん。あなたなのです。」
桜「へ…未来の…姉?」
健「さっきも言ってたんだけどさぁ。お前、誰と…けっ…ケッコ…コケコッコ?するつもりなんだよ。」
この台詞を真顔で言えるところが、この男の凄いところである。
桜「ひぇっ!?『それを聞くの?』」
健「俺は神の子じゃないし…俺じゃあないんだろ?」
健はただ、寂しかった。
何故だかは、分からない。
桜に聞こうにも、答えてくれそうにないし、何より質問を具体的に話せる自信がなかった。
でもこれだけは、訊いておきたかった。
そしたら、桜に好かれたそいつに、またひとつ訊いてやりたい。
『お前には、桜を守り通す絶対の自信と、覚悟があるのか』と。
そしてそれを問う自分自身にも、同じことを。
桜「そ、そんなこと…」
琴「邪魔はさせません。未来の願望を発音すればそれが『未来である』という認識が強まり、認識変更の妨げになります。PJDU-W」
健の目の前に、見えない壁が現れた。
他の二人は難なく通るが、健は通行不可能になる。
琴「座標指定攻撃では、こんなことでもできちゃうんですよ。」
桜「たけ─うっ!」
琴「騒がしいのは、嫌いです。」
健「クソォッ!クソォッ!クソォーッ!」
ダメじゃねぇか。桜を守りきれてねぇのは、自分じゃねぇか。
だが、だからといって─
健「桜を見捨てて逃げていい理由には、ならねぇよなぁ。」




