拾弐章─プリズンの暴走と情の眼─
不良3「フハハハハ。あいつら馬鹿で助かったよ。こんな簡単に、王女様落とす材料が手に入るってのに。」
不良3が、瀕死の健を船から引っ張り出した。
菫「…!?やめなさい!」
不良3「ほうら王女様、こうしてほしくなかったら、俺等の言うことを、さっさと受け入れちまうんだなぁ。」
健の体を海の上で抱えている。今にも落ちそうだ。
チェリア「…!!」
宰「チェリア様。ここは私が─」
チェリア?「…やめろ。」
不良3「あァン?人に物を頼むときはなァ…」
チェリア?「いいからやめろ。」
不良3「じゃあ言うこと聞くんだな。」
チェリアから、禍々しい気配が発せられる。
それとは対照的に、チェリアの眼は桜色から金色に変わった。
紀仁「…!!!!あれは!」
チェリア?「健を…放せェ!」
チェリアは、物凄い速度で飛び出したかと思うと、目にも留まらぬ速さで不良3を切りつけ、そのせいで落ちそうになった筈の健は、いつのまにかチェリアの腕の中に。
不良二名は、血塗れになった仲間に駆け寄る。
不良1「だ、大丈夫か!?」
不良2「救急車呼んでくる!」
菫「な、何てことを…」
その時、健の目が覚める。
健「…ん、さく、ら…?」
その声は、チェリアの中で眠っていた『桜』としての意識を取り戻させるには、十分であった。
桜「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
その悲痛な叫び声は、日の暮れた港町にこだました。
二台の救急車がやって来て、健と不良3を乗せていった。
菫「大丈夫なんでしょうか。健様…。」
宰「船の中での休養の甲斐もあり、意識を取り戻したところを見ると、命に別状はないものと思われます。ですが…」
菫「問題は、その後、ですわね。」
宰「はい。ブルースタインの王族は、酷く血に弱いですから。あの傷を見て、ただでさえ、自身の人生に暗い影を落とすレベルなのです。それが─」
菫「自分でやってしまったとなると、もっとダメージは大きいでしょう。」
紀仁「浅いな、お前等。」
宰「何を言っている!桜様の心の傷は、決して浅いものでは─」
紀仁「違う、浅いのはお前等の知識だ。途中から見せたあの眼。あれは、特定の条件を満たした特定の人物が発現する、『情の眼』だ。」
プリズン『あと少し。その前に─』
プリズン「死ねえ!」
プリズンが黒球を素早く溜め、全く狙いをつけずに撃ち始めた。
優「くっ!なんて野郎だ!」
調「あの速度で、あの撃ち方でこられては、いつ撃たれるかわかったもんじゃありません。」
光「でもまあ、エネルギーを使う分、」
迷「封印しやすくなるのもありますが、それは私達に当たらなかったら、の話ですよ。」
光「あ、それもそうか。」
優「でもこれじゃあ、俺も迂闊に近付けねぇ!」
明「『巨大盾斧』だ!」
優「分かってんじゃねぇか。」
優が散らばっていた調や流達を引き寄せ、巨大盾斧でプリズンからの攻撃から身を護る。
優「さあ!テキトーに撃ってちゃ、当たんねぇぜ。」
菫「『情の眼』?」
紀仁「そうだ。中でもあれは、『決意の眼』。誰かを護ると心に決めた者が、それを遂行するとき、誰かを愛する感情が、氷属性を昇華させてできると言われている。ブルースタインの王族は、様々な感情で様々な属性を昇華させ、様々な『情の眼』を見せるそうだ。フツーは、自分の属性に対応してるんだけどな。」
宰「く、詳しいな。」
紀仁「なあに、船乗りがでっけえ船会社経営してると、風の噂でいろんな知識が舞い降りてくるだけだ!」
菫「でも、今は眼は黒ですよ?」
紀仁「これは珍しいケースだな。」
宰「─もしかしたら、二重人格なのでは?」
紀仁「ないとは思いたいが、だとしたら嫌な二重人格だな。決意をすると強い方の人格が出てくるのに、事が終わると引っ込んで気が弱い方の人格になる。しかも記憶は残る。最悪だな。」
その時、宰の電話が鳴った。
宰「はい、こちら─」
隊員「大変です!津田 健さんが、入院中のベッドから抜け出しました!」




