異形はつらいよ(闇の瞳に完敗、鷹男と埒外女、彼女が人をやめた理由)
◇ここまでのあらすじ
冥魔界の大公爵ハバランダルにお友達をつくってあげようと冥魔王陛下がまた勝手に召喚術を行使して鷹男と人蜘蛛ゾンビを呼び出したよ
以前にハバランダルに怒られたから陛下は一日経過したら彼らが元の世界に戻れるように設定していたよ
待ち時間をつつがなく消化してもらうためにハバランダルが彼らを公爵家に転移させたよ←今ココ
※当小話は台本形式となっております、苦手な方はご注意ください。
大公爵家、応接室
目「この度は、陛下がまことに申し訳ないことを……」
蜘「ぎぇぁあああ化け物ぉぉぉたっ助けてミネッサーッ!」
鷹「いや、それを言えば貴方も相当化け物寄りの見た目ですよね」
蜘「は!? おまっ、出来損ないバードマンっ、お前どんだけ鈍いんだ!?」
鷹「ひどい言われようだ……鈍いというか、何だか有り得ないことが起こりすぎて逆に色々と感覚が麻痺してしまっただけというか……」
蜘「阿呆め! あの目玉ガチで桁違いの強さだぞ! 俺たちなんか奴のウインク一発で消し飛ぶぞっ!?」
鷹「なぜウインク」
目「私のこのひとつしかない目のことを言っているのでしたら、どうすればウインクになるのでしょうか」
蜘「っうわ目玉のヤツ細かいきっと神経質タイプなんだ殺されるミネッサぁーッミぃネッサぁぁあぁ!!」
目「私に貴方がたを害する意思はございません、どうか落ち着いてください」
鷹「桁違いに強いという目玉さんから助けてもらおうとしてる当のミネッサさんとは一体何者なんだ……」
ガチャ
?「おとーさまぁー」
目「っコランダム? どうしたのです、ここには来てはいけないと言いつけておいたでしょう」
娘「あのね、でもね、おかーさまが」
目「キミコさんに何かあったのですか!?」
娘「んーん。ちがうの。ステキじんがいセンサーがすごくはんのーしているから、チチオヤこいしさにイケナイとわかってはいつつもついカオをみにいっちゃったオサナゴのてーでよーすをみてきて、そして、そこでみたものをビにいりサイにいりあまさずゼンブおしえてー……っていわれたの」
目「そんな私という者がありながら堂々と浮気いや違う子どもになにをやらせているんですかキミコさんッ!?」
鷹「あの目玉の人、苦労してそうだなぁ」
蜘「ってか……お父様? どう見ても人間のその子どもが?」
鷹「きっと拾われ……」
目「実子ですよ、妻が人間なのですっ」
蜘「奥さんよくコレと一緒になろうと思ったな」
鷹「無理やり誘拐して洗脳とか」
目「してませっ……いや、厳密に言えば誘拐といえば誘拐かもしれませんが婚姻に関してはきちんと互いに同意のもとで……」
蜘「言い訳くさい言い訳くさい」
鷹「さっきまであんなに恐慌状態に陥っていたのに一気に馴染んだなこの蜘蛛の人」
娘「おとーさまとおかーさまはラブラブだもんーっ」
蜘「おう、そうかい。ま、子どもが言うなら間違いねぇな」
鷹「奇特な人もいるものだなぁ」
目「それに関しては否定できませんね」
蜘「いやでも、意外と珍しくねぇのかもしんねぇよ?」
鷹「というと?」
蜘「俺のミネッサ、あー、つがいのメスも人間だからな」
鷹「へぇー……って、じゃあさっき助けてってアンタその人間の奥さんに向けて言ってたんですかクズですか!」
蜘「ばっか、俺のミネッサ超つえーから、目玉相手に勝てるかは分かんねぇけど、逃げるだけなら確実だから」
鷹「それ本当に人間なんです?」
蜘「そこはちょっと自信ねぇなぁ。昔は間違いなく人間だったんだけどなぁ。生まれたガキ共も、あ、今5体くらいいんだけどさ、なんかちっせぇくせにテメェと同じくらいデカイ魔物ふっつーに狩ってきたりすんだけど、俺がガキの頃そんな強くなかったっつーのな。どっちの血かって言われたら多分ミネッサの方なんだよ、アイツなんか色々おかしいんだよ、まぁそこがまた良いと言やぁ良いんだけどさぁ」
鷹「あぁ、実をいうと自分のところも……いや、自分は鷹の頭をもって産まれてきただけで普通の人間のつもりなので事情は違うかもしれませんけど、宅の嫁も中々変わった人間でしてね、出会ったその日に……って、違う、そうだ、まったり雑談なんかしてる場合じゃないっ。目玉の人、どうか自分を元の場所にっ、今嫁が3人目の子を妊娠中で、いや、上の子2人がいるから正直自分はそんなに何の役にも立っていないけれど、とにかく心配しているかもしれないので帰らせていただきたくっ!」
目「……はぁ。ですから、その件につきまして私も先ほどから説明をさせていただこうとですね……」
蜘「あからさまなタメ息つくな、この目玉」
娘「おとーさま、いじけムシー? だめよー、いじけムシあっちにポーイよ」
目「わぁ、コランダムは優しいねぇー。そうだねぇ、いじけ虫さんダメだねぇー? はぁーい、あっちにポーイしましたぁポーイっ」
娘「おとーさま、えらいえらい」
蜘「…………うわぁ」
鷹「…………じー」
目「っコホンゴホン! こ、コランダムっ、そういうことで、私は今お客様のお相手で忙しいからキミコさんのところへ戻っていなさい、いいね」
娘「はぁーい。トリさん、クモさん、バイバーイ」
『ばいばーい』
パタン
蜘「…………いじけ虫さん」
鷹「…………あっちにポーイ」
目「…………だっ……どっ、どこの家庭でも、幼子相手ならこんなものでしょうっ!?」
蜘「いやぁ、うちはそんな甘やかしてねぇっつーか、ミネッサの育て方のせいで総じて野生の王国みたいになってるっつーか、そりゃ弱肉強食の世の中でそんだけ強いってのは全然悪いことじゃねぇんだけど、正直もう数年で実の子から雑魚扱いされちまいそうで心中複雑っつーか」
鷹「自分のところは呼び方だけお父さんですけど、実質ペット扱いというか、娘にお父さんエサどうぞと豆を地面に放られたことは一生の心の傷ですし、ちなみにその時の嫁はただ爆笑するばかりで娘を窘めることも自分を助けてくれることもありませんでした」
目「……えっ……あ、それは、その……も、申し訳ありません」
蜘「いや……」
鷹「別に……」
目「と、とにかくですっ。現状とご帰還について、説明させていただいてもよろしいでしょうかっ」
蜘「強引にいったな。まぁ、うちは例え1年くらい戻らなくても誰も俺の心配なんかしねぇだろうけど。いや、でも一応ミネッサが探しにくる可能性はあるか?」
鷹「自分は一刻も早く帰らないと、どこの鳥と浮気して来たんだと謂れのない責めを喰らう可能性が……」
蜘「心配って、そういう心配かよ」
鷹「最近はとみに鳥扱いが酷くなって……これって愛情が薄れてるってことなんでしょうかね」
蜘「俺に聞かれても知らねぇって」
目「…………冥魔王陛下の召喚なさる方々はいつも奇奇怪怪な者ばかりだ」
(え、呼んだ?)
(キミコさん直接脳内に……っ!?)
こうして何やかんやとグダグダに時は過ぎ去り、鷹男と蜘蛛男は無事に元の世界へと帰っていったのだった。
なお、他2名に比べハバランダルの結婚生活が順風満帆すぎたおかげで、冥魔王が期待したような友情が彼らに芽生えることはなかった。