マッチョヒーロー御三家フィーバー(赤い竜、逆ハー畑、ワンコ閣下)
幸せの赤い竜……(マッチョ)マーシャルト・グリンストン、(嫁)中島亜美
逆ハー畑でつかまえろ☆……(マッチョ)ヤン・リーツェ、(嫁?)藤堂苺花
ワンコ閣下が卒業した日……(マッチョ)倶炎・ボル・荒生田、(嫁)帆柱碧子
の6人が集められて適当にワチャワチャする、クロスオーバー?な話です。
『苺花、緊急ッ』
「あ、フェロモニー様。お久しぶりです」
『のん気に挨拶してる暇はないのよッ。
ちょっと今からゲートキーパーに作ってもらった空間に飛ばすから、そこで半日ほど篭っててちょうだい!』
「えっ」
『貴女以外の近場の世界のトリップ者も一緒だけど、まぁ相方もつけるし大丈夫!
あと、現状を説明できるのは苺花だけだから、他の子にも元の時間の元の場所に帰すから心配しないでって伝えておいて!
例えで説明すると、私たちの直轄の上司は色々ユルユルで、これまで見逃されたり、むしろ協力してくれたりしてたような、禁止ではないけど推奨されない控えないといけないと言われている行為が結構沢山あって、その内の一つが貴方たちの世界移動で、それで、もうすぐ本社からガッチガチの石頭で原理主義のお偉いさんが抜き打ちで視察に来ることが分かったから、ちょっとバレないように隠れてて欲しい的なアレ!
時間がないの! あちこち証拠隠滅するのが忙しくて、部署のみんなテンヤワンヤしてるのよ、これで分かって!』
「慌てすぎて文法メチャクチャですけど、言いたいことは分かりました」
『じゃあ、飛ばすから! あとよろしく!』
「了解ー」
などというやり取りを経て、一方的な神々の都合により、各世界から三組のカップルが限定的閉鎖空間へと召喚された。
女神との契約により自らの意思で異世界へと移住し絶世の美女となって逆ハーレムを築いた藤堂苺花と、そのハーレムメンバーの一人である山賊顔の熟練オッサン戦士ヤン・リーツェ。
異世界に落とされながらも直後に現旦那の庇護下に入り順風満帆な人生を送る比較的凡庸な見目の中島亜美と、その夫の心臓即死級の凶悪な顔面を持つ世界最強の狩士マーシャルト・グリンストン。
パラレル日本に迷い込んだ絶滅危惧種である深層ご令嬢目大和撫子科着物美人族の帆柱碧子と、その夫の暴れ土佐犬系英雄もどき帝国憲兵陸軍総司令官、倶炎・ボル・荒生田。
そんな濃すぎる面子六人が、ほとんど何の説明もなしに一堂に会することとなったのである。
当然、問題が起こらないわけもない。
「ぎゃーーーーーッ!」
まず、もっとも人間に近い顔事情のヤンが、度を越えたマサと荒生田の強面を視界に捕らえて、瞬間、恐怖に叫んだ。
彼の反応があまりにも早すぎたおかげで、女性陣の喉から出かかっていた悲鳴が「お呼びでない、こりゃまた失礼いたしました」とばかりに踵を返していく。
「なああああああ!!」
「うおおおおおお!?」
逆に、お互い怖い顔と思い固まっていたマサと荒生田が、ヤンにつられ揃って雄叫びを上げた。
すると、マサのG方向にR指定のつきそうな顔面の迫力がマッハで限界レベルを突破。
それにより、今まで何とか気丈に頑張っていたお嬢様育ちの碧子の精神値が臨界点に達して、あっけなく気絶し倒れてしまう。
「っあ……」
「みどピッピぃーーーー!」
「ギャルか」
最愛の妻が倒れ、テンパった荒生田が対外的なものではない家庭内での呼称で碧子の名を叫んだ。
即座に、この場で一番冷静さを保っていたアミが、一部の者にしか分からないツッコミを入れる。
「っあ、おい! 大丈夫か!?」
常のように顔面犠牲者が発生したことで、本来六人の中でもっとも穏やかな性質を持っているマサが正気に返った。
反射的に声はかけつつも、駆け寄りはしない。
彼は、己の見た目が他人に与える影響を誰よりも理解しているのだ。
「イィィヤッハァーーーっ!
美女と野獣カップル×2キタコレ身長差ヤバスぁーーーーッ!」
「何を言っているんだ、お前はッ!?」
唯我独尊の苺花が欠片たりと空気を読まず、閉鎖空間の中心で萌えを叫んでいる。
それに脊髄反射的にツッコミを入れて、ようやくヤンにも少しばかりまともな判断力が戻った。
「……ここは、どこだ?」
ひとまず、騒がしい荒生田と動く様子の無いマサをスルーして、ひたすら草原と青空の続く異様な空間へと視線を巡らすヤン。
「おい、イッカ。
こんなワケの分からん場所で、不用意に俺の傍から離れるな」
「やだ。私、超愛されてる」
「そういうのは、今はいらん」
眉間に皺を寄せつつ、彼は苺花の腕を掴み背後に庇うように引き寄せた。
実際、これだけの顔面凶器な武闘派が揃って、出会った瞬間即座に戦闘に陥らなかったのは、彼の咄嗟の悲鳴があったからこそであるのだが、そんな情けないファインプレーの事実など、全く本人の望むところではないだろう。
説明は後で全員を集めてから一括でしようと考えていた苺花は、ヤンの疑問に答えず、ひたすら萌えカップル二組をギンギラギンにさりげない眼差しで観察していた。
「み、みどピッピ! みどピッピぃーー!
頼むから、目を開けてくれッ! みどピッピぃ!」
抱き込んだ妻の肩をひたすら小さく揺らしながら叫び続ける荒生田。
やがて、その様子を見かねたアミが、深く息を吸い仁王立ちになって一喝する。
「いいっ加減っに、しなさいっ!
本当に心配しているのなら、倒れた人間をむやみに揺するんじゃあないッ!」
「うぉっ!」
予想外の方向からのお叱りに驚いて、彼の思考が一時停止した。
その隙に、間抜けな顔を晒す猛獣の元へと歩み寄るアミ。
相手から敵意が感じられないので、マサは一応の警戒をしつつも、最愛の彼女の後ろをノソノソとついて歩いた。
図体ばかりが大きな情けない軍服オッサンに近付きながら、アミは子どもに言い聞かせるようにゆっくりと口を開く。
この時、彼女が「夫の常識外れな容姿に比べれば、まだ人間の範囲内か」などと双方に失礼なことを考えていたのは、ここだけの話である。
「まずは落ち着きなさい。
状況から言ってマサの顔に驚いて気絶しただけだと思うし、彼女が完全に倒れきる前に貴方が受け止めてあげていたから、そうそう大事には至っていないんじゃないかしら。
そもそも、意識の無い人間はやたらと動かさないってのが常識でしょう?
貴方、古い軍人みたいな格好してるけど、そこで緊急時の処置の仕方も習わなかったの?
ほら、彼女を平らなところへ寝かせて。気道確保して」
「……あ、あぁ」
母親以外の女性から説教を喰らうなどという人生初めての経験に戸惑いつつも、全くの正論なだけに言われるがまま行動してしまう荒生田。
彼が妻に危害を加えないかと内心でハラハラ心配しつつ、マサは自分にはどうすることもできないので、ひたすら黙って彼女の背後に控えていた。
それでも、一般人からすれば、即座に逃走をはかりたくなる程度には凶悪な威圧感が放たれているのだが、幸いと言っていいのか、周囲を見る余裕の無い今の荒生田の目に彼の姿は映っていない。
的確な指示を下す妻の姿にこっそり惚れ直しつつ、この男がアミを好いてしまったらどうしようなどと、マサは自らの杞憂すぎる想像に心を痛めていた。
その四人のすぐ傍で、なぜか急にセクシャルハラスメントを働いてこようとする苺花を、ヤンは必死に制止している。
「おっ前は本当に何を考えているんだッ!?」
「何かカップル度で大幅に負けている気がした。
勝つにはもう、こうするしか方法はないと思った」
「頼むから、俺に分かる言葉でしゃべってくれ!」
カオス。
それは、現在のこの空間を表現する、もっとも適切な言葉だった。
~~~~~~~~~~
十数分後。
碧子が意識を取り戻し、迷惑をかけたと周囲に頭を下げたところで、「機は熟したり」などと呟きつつ苺花は全員に集合をかけた。
彼女が現状について端的に説明すれば、多少の悶着はありつつも、五人はどうにかこうにか落ち着くことに成功する。
そのうちに、元日本人同士、それも全員が異世界トリップ経験者ということもあって、草原に腰を下ろした嫁組の間で和やかに身の上話が展開されていた。
「へーぇ、パラレルワールドとでも言うんでしょうかねぇ。
私も多分、違う日本の出身ですよ。帆柱コンツェルンなんて初めて聞きましたし」
「本当に不思議なものですね。
亜美様の渡られた先が全くの別世界ともなれば、生活習慣なども違いましたでしょう?
大変な苦労をなされたのでは」
「いえいえ、私にはマサがいましたから。
碧子さんこそ、そんな物騒な日本なんて」
「あら、ふふ。私にも、倶炎様がいらっしゃいましたので」
「…………ャ」
「苺花様?」
「…………ぃぇ」
亜美は基本的に常識人で、碧子は世間ズレした良識人だ。
久しぶりに日本人に出会ってしまった末期の変態オタク苺花は、急に夢から醒めてしまったかのような気分に陥り、生来の人見知り気質を発動させて、すっかり萎縮しきってしまっていた。
元よりオタクは一般人から白い目で見られがちで、そういった理由から、世間に対し気後れしながら生きているような者も少なくはない。
加えて新世界でビッチと化した苺花からすれば、彼女たちは「自分は常識から外れた社会不適合者である」という自らの劣等感をこれでもかと刺激してくる、どこまでも恐ろしい存在でしかなかった。
嫁組が女同士で纏まり会話を始めた為、自然とマッチョ組三人も固まって話をする流れとなる。
「ぎゃくはあれむ? 女が男を囲うのか?
一応、世界中を旅した身なんだが、そんな話は聞いたことがねぇぞ」
「ッカぁー。お前んトコのは、とんでもねぇ女だな。
言動も何かこう奇怪だしよ」
「…………放っておいてくれ」
「っあ。ま、まぁ、顔は良いよな。すげぇ美人だよな。
俺の妻のみどピッピには敵わねぇけどよ」
「お、おう。それに、あの、何だ。健康的な感じで良いと思うぞ。
俺はアミの方が好きだが」
下手な気を使いながらナチュラルに惚気まで入れてくる二人に、ヤンの精神値はガリッガリに削られていた。
そもそも狂気的な顔面の巨大な筋肉ダルマ二人に囲まれて、平静を保てる人間も少ないだろうが。
「い、いや。アイツもアレで最低限の気遣いは出来る奴だし、顔以外だって、そんな悪い女じゃ……」
二人の感想はけして間違ったものではなかったが、それでもなんとなく苺花をフォローしてしまうヤン。
「…………お前、実は虐げられるのが好きだったりする系か?」
「あっ。なるほど、そういう……」
すると、二人からまさかのM認定されてしまうヤン。
「ち、違うぞ! 俺はっ!」
「あー。いい、いい。みなまで言うな。
認めにくいもんな、そういうことはよ」
「まぁ、その、人それぞれだからな。
別に有りなんじゃないか、本人たちさえ幸せだってんなら」
必死に否定するも、生ぬるい同情の目を向けられ話を流されるヤン。
「やっ、止めろぉーーーーーッ!!」
不憫なりヤン。
~~~~~~~~~~
特におしゃべりが好きなわけでもないマッチョ組は、やがて暇を持て余し、誰が言うともなしに戦闘訓練などを始めていた。
「っくあー、これを躱すかよ!」
「スピードはあるが、筋肉の動きがあからさまで次の動作が読みやすい。
せっかくフェイントかけても、それじゃあ格上相手にゃ通じねぇぞ」
「要するに、俺はまだ強くなれるってこった、なッ!」
「ッシィ! おいおい、早速ちょっと改善されてんじゃねぇか、化け物だな!」
「マサにゃあ言われたかねぇよ! まさか一回りも年下たぁ思わなかったぜ!」
マサに手加減してもらいながら、嬉々として剣を振るう荒生田。
「……あぁ、倶炎様。なんて勇ましい」
と、それに見惚れる碧子。
何だかんだ愛犬のため毎年のように闘犬祭に参加していた彼女である。
血すら流れることのない訓練ごときでは何を案じることもないと、育ちの良いご令嬢にしては意外と太い神経を晒していた。
「っぶっふぅ! あの吹っ飛ばされっぷりときたら、もう!
やられ芸、やられ芸の勢い! プロ級!」
早々にボロ負けして戦線離脱し仰向けに寝転がるヤンを、ゲラゲラと指差し笑う鬼畜生苺花。
さすがに我慢のきかなくなったヤンが、笑い続ける彼女を怒鳴りつけてしまったのも、至極当然の流れであっただろう。
「っお前なぁ!」
途端、苺花はピタリと口を噤み真顔になる。
そのあまりに想定外の反応に、ヤンは続けるはずであった言葉をあっけなく失ってしまった。
「……そういう流れだったからって、明らかに実力差ありそうな相手に向かってかないでよ」
「は?」
「いくら放送禁止レベルの酷い顔に似合わない優しい良い人たちだったとしても、手加減を間違えないとは……死なないとは限らないでしょ。
………………バカ」
呟いて、彼女は次第に瞳を潤ませていく。
これだから、とヤンは思う。
これだから、普段どんなにか迷惑をかけられようと、彼は彼女に愛想を尽かすことが出来ないでいるのだ。
トリップ者との邂逅で、日本人時代のネガティブ思考が広く精神を支配している今、苺花の情緒は酷く不安定だった。
「竜人族のマサならまだしも、あんなハデなアクション映画みたいな動きが出来る人間が実在するとか……世界って広いわ」
一方で、二人の人外魔境っぷりに呆れつつ、余興として観戦を楽しむ亜美。
実際は彼らの戦いにそれほど興味があるわけでもなかったが、マッチョ達のお遊びが始まった途端、主な話相手だった碧子が自身の夫に釘付け状態となってしまったので、ただただ草原が広がるばかりの空間では、そうする他に選択肢がなかったのだ。
単純な戦闘力でいえば、マサが一番、次いで荒生田、最下位がヤンとなる。
ヤンは、もしここにピ・グーがいたと仮定して、彼と連携しつつならば荒生田と良い勝負が出来る程度の実力を持っている。
ただし、本気の殺し合いなら、自らの限界を幾度と超えながら星外異形体と死闘を演じ続けた荒生田が負けることは絶対にあり得ない。
ピ・グーと同じく苺花の逆ハーレムの一員である精霊タマについては、反則なので考えてはいけない。
彼は惑星内に漂う全ての魔力とそのままイコールで繋がるような特殊な半概念的生命体であり、いち戦闘で消滅させることは基本的に不可能なのだ。
荒生田は、彼自身があと二人くらいいれば、魔法を使わないというハンデをつけたマサに何とか一撃入れることが出来るだろう。
それは、屈強な竜人族の中でも更に突出した実力を持つマサと、あくまで人間でしかない荒生田との種族的な差でもあった。
手合わせが終わって戻ってきた荒生田を、嫁の碧子は興奮した様子で褒めちぎる。
面映さに頬を薄ら朱色に染めつつも、煽てられて調子に乗った荒生田は豪快に笑った。
同じく戻ってきて座り込むマサへ、亜美は微笑みと共にねぎらいの言葉をかけ、常備していたハンカチで汗を拭ってやる。
未だピュアさを失わない乙女思考のマサは、照れすぎて顔面を鬼のように真っ赤に染めつつ挙動不審になっていた。
いつの間にやら、すっかり常の調子を取り戻した苺花は、負け犬のヤンを慰めるという名目で性的に襲い掛かろうとする。
例に漏れず、必死に抵抗するヤン。
カオス。
それはやはり、現在のこの空間を表現する、もっとも適切な言葉だった。
~~~~~~~~~~
数時間後。
最終的にかなり仲良くなったらしいマッチョ組と、そして、お互いの人種が違いすぎて会えば普通に会話くらいはするが友人と称するには微妙な、表面的には仲の良い風に見える嫁組が出来上がっていた。
ふと、碧子が首元からアンティークの懐中時計を取り出し、針の位置を確認して呟く。
「そろそろ半日、でしょうか」
「げっ、もうそんな時間か。
あーあ。今日だけなんて、もったいねぇなぁ。
闘り足りないぜ、俺はよ」
嫁の手中の時計を覗き込んで、荒生田がぼやき出す。
別れの刻限が迫っていることを知り、六人は自然と一所に集っていた。
「倶炎ほど強ければ、格上と手合わせできる機会など早々なさそうだしな」
「おー、そうなんだよ! 分かってくれるか、ヤン!
お前もそこそこ強いもんなぁ!」
言いつつ、馴れ馴れしくヤンの肩を抱く荒生田。
己には及ばないながらも、自身の世界でいえばトップレベルの実力を持つ彼を、荒生田は舎弟的に気に入っていた。
「うっ……ヤンチャ年上攻め×苦労性年下受けオイシイと涎を垂らす萌えブタ腐女子的な自分と、ワイの男に手ぇ出しとんちゃうぞゴラァと憤るスーパーダーリン的な自分がガチンコせめぎあってる苦しい」
思わず漏れたらしい苺花の独り言に、全く理解できず首を傾げる碧子と、理解できるが腐要素がなく苦笑いするしかない亜美。
だが、その対処方法としては、どちらもスルーで安定だ。
高度な空気読み能力を必要とされる日本人女性が、ほぼ同郷の人間の扱いを間違えるなど、まず滅多にないことだった。
そもそも、例えこの場に腐要素のある者がいたとして、筋肉ダルマなオッサン同士の絡みを見たい特殊な属性の持ち主はそうそういないだろう。
「……まぁ、一度でも機会に恵まれただけ良かったんだと、無理にでも納得するしかないでしょうね」
「神ってヤツの言い分からすりゃあ、そうホイホイ俺たちを会わせるってワケにもいかないだろうしな」
アミの台詞に追従するように、マサが自身の意見を述べる。
最年少夫婦に諭されてしまえば、仮にも六人の中で一番年かさの身として、荒生田もそれ以上の愚痴は吐けなかった。
そんな夫を慰めるように、碧子は彼の左腕を小さく撫でさする。
あっという間に気分を向上させる、いっそ可哀想なほど単純な荒生田。
猛獣はしっかりガッツリすっかりキッパリ妻に飼い慣らされていた。
『苺花、おまたせー。
やぁっと頑固爺がいなくなったから、今から皆を元の世界に帰すわよー』
「あ。スミマセン、皆さん。
女神から通信が来ました。今から帰……」
苺花が言葉を伝え終わらない内に、空気の読めない神々の手によって限定的閉鎖空間は消滅し、三組のカップルはあるべき場所へと帰っていった。
あまりにも唐突過ぎる別れに、誰しも束の間、その場で唖然と立ち尽くしてしまっていたという。
彼らが再び巡り会う未来が有り得るのか否か、それは本社勤務のお偉い頑固神の気まぐれのみが知ることである。