終章三節 - 春風と希望
「婚約届は、戸籍に関係することなので、橙条大臣の管轄です。お手数ですが、あす以降、再度登城していただき、橙条大臣に提出してください」
そして与羽は、薄くくまの浮かぶ顔にいつものいたずらっぽい笑みを浮かべた。放心したままの乱舞の顔を見て、声をあげて笑う。
「お前は城主をやっているんだから、誰が何をやっているかよく承知してるはずだろう」
与羽の思惑をいち早く察していた絡柳も、それにつられて笑いはじめた。
「おめでとうございます、乱舞さん」
先に衝撃から立ち直った辰海が、乱舞に近づいてきてそう述べる。
「うんうん、おめでとう乱兄」
与羽も乱舞の腕を軽く叩きながら言った。
「ん、じゃぁ私部屋に帰って寝るわ」
「あれ? 残るんじゃ……」
乱舞の脇をすり抜けようとする与羽に辰海が声をかける。
「気が変わった」
与羽の気まぐれなどいつものこと。しかし、今は――。
――待っててくれたんだろうな。
乱舞は与羽が通れるように場所を開けながら、淡くほほえんだ。
「全く、どいつもこいつも素直じゃない……」
再び絡柳がため息をつくのが聞こえる。
「与羽! 送るよ!」
慌てて辰海が駆けだしていく。
いつもの与羽なら「必要ない」と言うところだろう。しかし、今の与羽はそれをあっさり許した。よほど疲れているのかもしれない。
城主の仕事が厳しく、大変なものであることは乱舞が一番よく知っている。
「ありがとう、与羽」
乱舞は、半ば辰海支えられるようにして歩く与羽の背にそう声をかけた。
その感謝は何に対するものだったのか。今まで待っていてくれたこと、このいたずらを実行してくれたこと、他にも色々――。
与羽は振り返らなかった。そのかわり、片手をあげて頭の上でひらひら振る。
与羽らしい。あまりに与羽らしい態度に乱舞は柔らかな笑みを浮かべた。
そのほほを春の夜のひんやりした風がなでる。
冷たくても、どこからか甘い花の香を運んでくるやさしい風。
「これから、もっと楽しくて温かい日々を過ごせそうな気がするよ」
乱舞はそう言って、長い間与羽の去った方を見つめていた。
ふう、終わった。何だか久々にあとがきを書いた気がします。
本当はこんなに長いお話を書くつもりはなかったんですけどね……。
「羽根の姫」位の長さの中編ラブコメにするつもりだったのですが、出来上がってみたらこんな初々しい純愛長編(?)になってしましました。
コメディ要素皆無orz
政治とかまで関係してきて、困りましたね。そんなところまで考えてなかったので。
できるだけ正式な役職は書かずに、○○大臣はこんな感じのことをしている位で良いんですよ、この話は。
私がわからなくなってしまいますので。
しっかし、今回は雷乱と比呼の出番がほっとんどなかったですね。
比呼は「袖ひちて」で結構出てきたので良いとしても、雷乱。
次は雷乱が結構活躍してくれる(はずの)お話を書きたいと思います。
ではでは、こんなに長い――、長くなってしまったお話を呼んでくださってありがとうございました。
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最終更新日2016/8/29




