四章三節 - 白雷弓の笑み
みるみる赤くなってうつむき気味になる乱舞に、はっとして沙羅はしゃがみこんだ。
「大丈夫?」
沙羅はそう声をかけつつ、乱舞のおとした野菜を拾い集める。
「……うん。ごめん、驚かせて」
「いいえ、私こそごめんなさい。とっさに閉めようとしちゃった。どこに当たったの?」
「ん……、おでこ」
確かに乱舞の額が赤くなっていたが、それは羞恥によるだけでなく、ぶつけたことも影響しているらしい。
「そう……」
とても申し訳なさそうに顔をゆがめて、沙羅はそっと乱舞の額にふれた。
前髪をかきあげるように撫でられる額の感触に、乱舞はただうつむいている。
「痛む?」
「少し」
答えてから乱舞は強がりでも平気だと言うべきだったと気づいた。沙羅の眉がさらに申し訳なさそうに垂れる。
「冷やしましょう。入って」
袖を軽く引かれて、乱舞は立ちあがった。沙羅の拾ってくれた分の野菜を受け取ろうとしたが、やさしくほほえまれただけで、渡してくれない。乱舞に気をつかってくれているらしい。
――情けない。
乱舞は沙羅の隣をうつむき気味に歩きながら思った。
――大斗や絡柳ならこんなことにはならないんだろうな……。
自分の側近は自分よりも優秀だ。乱舞はいつもそう思っている。
――なんでみんな僕に従ってくれるんだろう?
「大丈夫?」
だまり込んでいる乱舞を心配して、沙羅が彼の顔を覗き込む。
「ん……」
浅くうなづきながら肯定すると、少しだけ沙羅の顔が明るくなった。
「皆が休みをくれたんだってね」
「うん」
さっきの恥ずかしさもあり、どうもうつむき気味になってしまう。
そんな乱舞を沙羅は何も言わずに見ている。しかし、その沈黙も気まずいものではなく、どこか落ち着くような気がしたのは乱舞だけだろうか。
「ね、ねぇ、あとでちょっと城下を散歩しない?」
あまりに脈絡のない発言に、乱舞は言ってから軽く舌先を噛んだ。もう少しうまい誘い方だってあっただろうにできなかった。
――大斗の言うとおり、僕は優柔不断で自信不足なのかも……。
「いいわよ。喜んで」
しかし沙羅は全く気にしていないのか、やわらかくほほえんで答えてくれる。やさしく温かな笑みに、乱舞もわずかにはにかんだ笑みを返した。




