わるい魔法使い
むかーし、むかし。
人から「わるい魔法使い」と言われた女の子がいました。
女の子の名前はゴック=アーク。なんだかわるそうな名前です。
ある日のことです。
ゴックはニワトリさんに卵をもらいに行きました。
「ニワトリさん。ニワトリさん。卵を一つくださいな」
ニワトリさんは言いました。
「小屋のそうじをしてくれたら一つあげよう」
ゴックはがんばってそうじをします。けれどもなかなかきれいになりません。そうじしたところをゴックは自分でまた汚してしまうからです。
ニワトリさんは言いました。
「ようりょうのわるい魔法使いだなあ」
それでもなんとかゴックはそうじを終えました。ピカピカになった小屋に満足したニワトリさんからお礼に卵をもらいます。
次にゴックは牛小屋に向かいました。
「牛さん。牛さん。お乳をわけてくださいな」
けれども牛さんは返事をしません。たくさん草を食べてお昼寝中でした。
ゴックは牛さんに何度も呼びかけました。けれどもやっぱり起きません。
牛さんの周りを飛んでいたハエさんは言いました。
「間のわるい魔法使いだね」
ハエさんは牛さんの鼻の中に入ります。「クシュン!」とくしゃみをして牛さんは目を覚ましました。
ゴックが牛さんにおねがいすると、牛さんはのっそりと起き上がり、ゴックにお乳をわけてくれました。
ゴックは牛さんとハエさんにお礼を言って別れます。
それからゴックは村のお砂糖屋さんのところに行きました。
「おじさん。おじさん。少しお砂糖をわけてくださいな」
おじさんは言いました。
「トウキビの束が何本あるか数えてくれたらわけてあげよう」
ゴックはトウキビの束を数えます。けれどもなかなか終わりません。ゴックは指の数より多く数えられないからです。
それを見ていたおじさんは言いました。
「頭のわるい魔法使いだなあ」
十束ずつ数えて、時間はかかったけれどもゴックはなんとか数えることができました。
砂糖を受け取ったゴックはすぐにお家にかえります。
ゴックはその日集めた品物、卵、牛乳、砂糖を混ぜ合わせます。混ぜ合わせたものを容器に入れておなべで蒸します。
そしてゴックが使える唯一の魔法をかけました。
しばらくして出来上がったものを持ってとなりの家に向かいます。
コンコンコン。
ゴックはドアをノックします。
出てきたおばあさんは言いました。
「あらいらっしゃい。いつもわるいわね、魔法使いさん」
となりの男の子は病気でベッドに寝たきりでした。家の中に入れてもらったゴックは男の子に持ってきたものをスプーンで食べさせてあげます。
男の子は言いました。
「おいしいプリンをありがとう、おねえちゃん」
男の子の笑顔にゴックもにっこりほほえみましたとさ。
めでたし、めでたし。
あ、そうそう。ゴックが使った魔法はね、
それはもちろん、
「おいしくな~れ!」