Those who hunt and those who are hunted?
僕の中ではこう言う種族でもいいんじゃないかな?
朝。窓からかすかに光が差し込んでいる。俺はその光で目が覚め、起き上がる。
「・・・・朝か」
昨日の痛みは消え、体が楽になっていた。もしかしたら人間の状態にも変化があったのだろうか。それより、今俺が一番しなければならないことがある。
「・・・・どうやって起こそう」
隣でギンが丸くなって眠っている。
「すぅ・・・すぅ・・・」
ギンが自分の部屋のベットを持ってきて俺の部屋に設置したのだ(一人で)。寮と行ってもそんなに狭い訳ではなく、リゾートホテル一部屋位の大きさはある。キッチンはしっかり配備、バスルームもしっかりしている。・・・なんとこれ教育費の一部で借りれるらしい。一体親父何万払ってるんだ?
「と、とりあえず起こさないとな」
しかしまぁ、自分の家の神様になにかすると考えたらちょっと怖いな・・・でも、女の子の寝てる姿ってこんな感じなんだな。
「お、おいギン起きろ。朝だぞ」
「う・・・うーん」
目を半開きしてゆっくりと起き上がる。
「あ、おはようございます~」
眠いのか体がクラクラ揺れている。なんか可愛いと思った。
「ごめんなさい。うち朝に弱くて・・・これからもできれば起こしてくださいね」
満面な笑みを浮かべてこっちを見てくる。とりあえずご飯を作るか。そう思い俺はキッチンに向かう。するとギンもテクテクと付いて来た。
「あ、あのうちがやります。」
「いいよ。朝ごはんは軽めに済ませるつもりだし。じゃあ夜はギンに頼もうかな」
するとギンは尻尾をブンブンと振って喜びを表している。
「約束ですよ!」
「ああ。期待している」
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それから俺はギンと二人で学校を登校した。その間に昨日の事を確認するためギンに話しかける。
「契約者と半魔人の違いはわかった。でも俺はこれからどうすればいいんだ?」
「別に何かをしろとはいいません。うちと一緒にクラスだけでいいんですよ。後はご自由にどうぞ」
そんな軽いもんでいいのかよ契約者って・・・ちょっとだけがっかりした。
「元々人間とヴァンパイアが契約したことから始まったらしいですよ」
ヴァンパイアねぇ・・・今思えば何もかもが驚かなくなったな。まず俺の目の前に神様いるし、昨日はガーゴイル撃退したし。このまま俺人間離れするんじゃなだろうな?
「まぁ、これからの事をどうこう言ってるよりも今を大事にしたほうがいいのかもな」
「そうですね。うちも剣迅君とずっと一緒にいることを大事にします」
そう言う会話をしていると街の中央で何やら人が集まっていた。
「ん?なんだあれは」
「人だかりですね。剣迅君、うちの目は変身しなくても使えるんですよ」
あ、やっぱり使えるのね。俺は試しに目に力を入れる。すると確かにギンの力が使えた。因みにギンの力を詳しく説明すると相手の動きが遅く見えたり、遠くのものが見えたりできる。ただし使いすぎると目眩がするから注意が必要だ。
「本当に便利だよなぁこれ」
そう思いながら見てみると街のみんなが一人の少年に集まっていた。その少年は茶色の髪で身長は俺より少し低め。体格も少し小さい。そして俺達と同じ学生服を着ており、何故か赤いマフラーをしている。
「な、なんなんだあれ?」
「あの人、紅辻家の子孫ですか。」
どうやらギンはあの少年のことを分かっているようだ。にしてもなんであんなに人がいるんだろ。俺は少し近づいてみる。すると何人かの街の人の言葉が聞こえた。
「紅人君!これからこの街のことをよろしくね!」
「ヴァンパイアハンターの君ならこの街は安泰だ!」
紅人・・・どうやらあの少年の名前だろ。それにヴァンパイアハンターって普通外国の人がやるもんじゃないのか?
「紅辻赤人。15歳にして上級のヴァンパイアを撃退したと言われる天才ですね」
「撃退?殺しはしなかったのか?」
するとその紅人と言う少年は俺達の会話に気づいたのかこっちに向かって歩いてくる。
「ハンターといってもヴァンパイアは優れた種族。そう簡単に殺したりは出来ないんだ。だから言う事を聞かせないといけない。それがヴァンパイアハンターのやる使命だ」
おお、本物っぽいセリフ。まぁ本物なんだろうけど。
「他の奴等は血を吸う悪魔とか館にひっそり隠れてる生き物だとか思ってるが。ヴァンパイアは知識が一番冴えてるんだ。強さとは二の次なんだよ」
二の次でいろんな説を残してるヴァンパイアがすごいよ・・・
「お前ら、昨日ガーゴイルと戦ってた奴だろ?報告書に書いてた特徴が全部一致してる」
報告書?もしかして昨日の話結構広まってたりしてる?
「ま、まぁそうだけど」
「・・・契約者とその神か。お前ら、今となってはこの街の小さな英雄だぞ?最近、半魔人の奴らも調子をこき始めたからなぁ」
そうなんだ。やっぱ迷惑だと思ってたんだ。
「一応自己紹介するよ。俺は音風剣迅だ。んでこいつがギン」
「銀狐乃神です。ギンと呼んでください」
いつものようにギンがペコリとお辞儀をする。
「中辻紅人だ。これからよろしく頼む」
紅人が手を出してきた。俺はその手を握り、握手をする。
「せっかくだから紅人も一緒に学校行くか?」
「ああ。そうさせてもらう」
そう言い、紅人が歩きだした瞬間だった。
「ねぇ、ちょっといいかな?」
後ろに気配がなかったのにいつの間にか後ろに誰かがいた。俺は振り向くとそこには一人の女の子がいた。金色の長い髪でツインテールにしている。そして目が・・・赤かった。身長はギンより大きい。そして俺達と同じ学生服を着ている。
「あなたたちセムスシア学園の生徒?だったら道案内してくれないかな?」
その子はニコニコと笑いこっちに近づいてくる。だけど笑顔とは別な何かを感じる。笑顔の奥の奥に・・・ドス黒い何かが。
「い、いいよ紅人もそれでいいだろ?」
この気配は紅人には分かるのだろうか俺は紅人に一応言葉を振る。しかし、返事が帰ってこない。
「紅人?」
ふと紅人を見ると紅人は顔を真っ赤にし、ずーっとその子を見ていた。
「あ、紅人?」
再び声をかけると紅人は正気に戻った。
「顔が真っ赤ですよ?」
さすがにギンも気づき、気にかけている。だが紅人は後ろを振り向く。
「へ、平気だギン。何の問題もない!」
俺とギンは一言「はぁ」と言う。なぜか金色の女の子は小さい声で笑っていた。
「や、やっぱり一人で行く。そっちの方が落ち着く」
そう言い、一人で勝手に歩いて行ってしまった。
「・・・?どうしたんだあいつ」
「さぁ?」
俺とギンは歩いてく紅人を見ながら不思議に思った。
「あら。案外照れ屋さんなんだね」
そう言い、女の子はギンに抱きついてきた。
「ひやぁあ!!な、何するんですか!?」
「あはは!可愛い!ギンちゃんだっけ?この耳と尻尾もしかして本物?初めて見たよ~」
ギンのいろんなところをまじまじ触りまくる。ギンはくすぐったいんだか体をよじっている。
「や、やめてください!いや、苦しいですよ~」
・・・・・眼福です。って馬鹿か俺は!?何ずっと見てるんだ!
「や、やめてやってくれよ。嫌がってるじゃないか」
「ああごめんごめん。可愛くてつい」
ギンを放した瞬間、ギンが「剣迅君」といい俺の腕に抱きついた。こんなにも臆病な神様だとはな・・・
「そう言えば自己紹介してないや。私アイリス・バルフォード。皆知ってるヴァンパイアよ」
「へぇー外見とは思えない種族だね~・・・・え?」
俺は驚愕の顔をする。ギンを見てみるとギンはガクガク震えていた。
「((((;゜Д゜))))」
言葉に表せない怖いらしい。顔自体が顔になっているようだ。
「そ、そんなに怯なくよかったのに・・・ヴァンパイアって行っても他の種族となんも変わらないよ」
「確かに紅人がそんな事言ってたな。強さなんて二の次だって」
その言葉を聞いた瞬間。アイリスが少しだけ汗をかく。
「そ、そうだよ知識が一番なんだよ。さすが。ヴァンパイアハンターは分かってるね」
「・・・と言う事はアイリスは頭がいいのか?」
ギクッと言わんばかりの顔をする。
「と・・・トウゼンデスヨ?」
「なんでカタコトなんだよ」
するとアイリスは少しだけ悔しがる顔をする。
「わ、私だってどうにかしたいって思ってるよ。でもお姉ちゃんが少しでも知識を得なさいなんて言って家を追い出すし、泊めてくれるところなんてどこにもないし。何もかも最悪だよ」
ついには地面に尻もちついて泣き出してしまった。この子もいろいろギャップがすごいな。するとギンがアイリスの頭をナデナデする。そしてギンがいい案を出す。
「じゃあ、うちの部屋使いますか?今空き部屋ですし」
「確かに、今ギンは俺の部屋で住んでるからなぁ。貸してやればなんとかなるな」
アイリスだけついていけなくなっている。
「なんでそのギンちゃんがあなたの部屋で暮らしてるの?」
そこに食いついて来たか。仕方がない。話すとするか。
「俺、契約者でさ。ギンと契約しちゃったんだ。だから一緒に過ごしてるんだよ。ああ俺、音風剣迅ね」
「え!?あなたたちそう言う関係だったの!?」
なぜだか何も言ってないギンが顔を真っ赤にする。そこは俺が照れるところだろ・・・
「ま、まぁギンが部屋を貸してやるって言ってるんだ。素直に甘えといたら?」
「うーん。そうしたいんだけど」
するとアイリスは何故か頭を抱え込む。何やら真剣に考えているようだ。
「契約者ねぇ・・・・あなたたちに頼みがあるんだけど」
「な、なんだよ」
アイリスは少しもじもじしながら言う。
「紅人と・・・契約したいの」
『・・・え?』
今日もまた波乱が巻き起こる予感がした。
いかがでしたでしょうか。馬仮面と申します。
というわけで新キャラ。アイリスと紅人です。
果たしてアイリスは無事紅人と契約を果たせるのか!?
乞うご期待!
というところでありがとうございました。