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第1話  はじまりは朝チュン!?   

 開けっ放しの窓から流れる風が、ふわり、とカーテンを靡かせる。

 差し込む光がゆらゆらと、瞼の向こうで揺れていて、私は薄らと目を開く。

 遠くから、小鳥の囀りが聞こえる。柔らかな風は、しっとりと汗ばんだ私の肌を撫で、身体の火照りを心地よく冷やしてゆく。


 清々しい、そう言うに相応しい朝だった。


 もう少し、このまどろみを楽しんでいたい。

 私は惰眠を貪る為、もう一度目を閉じる。ああ、何という至福の一時。このままずっと、時が止まればいいのに――。


 コロン、と寝返りを打つ。

 すると、鼻先に壁があった。

 規則正しく上下するその壁は、人肌に似た温度で、落ち着く香りがした。


 暖かくて、気持ちいい。


 私は手を伸ばして、そっと触れてみる。指先で、なぞる様に優しく。

 ピク、と反応する壁。大きく動いて、長い腕の中に、私の身体を引き寄せる。


 ――ん、腕の中?


 ぱちり。

 私は思い切り瞳を開いた。頭が急激に覚醒してゆく。

 絡め取られて、不自由な身体。だから、頭だけを動かして、その腕の主を見る。やたらと整った顔で、すやすやと眠っている一人の男を。


「おおぅ?!」


 私の口から漏れたのは、間抜けな声。

 それからぐるりと視界だけを巡らせて、ようやく彼に抱きしめられている事実に気が付く。

 衣服越しでも分かる肌の温度。私の顔が、とんでもない勢いで熱く茹ってゆく。


 ――いやいや、待て。落ち着け私。


 グルグルと、頭の中で言葉が駆け巡る。

 男と女。一つのベッド。そして言い訳無用なこの体勢。


 記憶を手繰り寄せれば、思い出すのも恥ずかしい、昨晩の痴態に辿り付く。

 焦らされ、弄ばれ、彼の腕に縋りついた自分の姿に。


 ――やっちゃった……!?


 そうして私は、およそ清々しい朝には似合わない、羞恥の悲鳴を上げる破目となった。


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