表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/27

第10話 乱入者、登場!?


 異世界に来て二年経つが、ここ数日の忙しさは怒涛の勢いだった。世界救済の旅もここまで慌ただしくはなかったし、後宮にいた頃は退屈な日々を送っていたから、目まぐるしく変わる状況に思考が追いつかない。


 家のリビングにまとめられた荷物を解きながら、昨日までの出来事を思い返してみる。一つ一つゆっくりと、これが夢ではないのだと噛み締めながら。

 

 私の荷物といっても、持ってきたものはごく僅かだ。

 この世界へ来た時に持っていた鞄、その中に入っていた手帳とシャープペン、化粧道具、読みかけの恋愛小説に、電池の切れた携帯電話。それから旅の間に買った衣類が少し。

 後宮にいた頃王子から貰ったドレスや宝石の類は、すべて売り払いお金に換えた。使えるものは全て使うという私のモットーに恥じぬ、逞しい処世術だ。

 8割がたはラグの私物なので、衣類の他は触らない事にした。魔術関係の品も多くあるはずだから、むやみに触って妙な呪いを貰っても困る。

 

 本当なら、昨夜ラグと共に片付けようと思っていたのだけれど――まぁ、色々と忙しかった為に進んでいない。

 ……『何を』していたのかは、言わずとも察していただけるだろう。


 とりあえず衣類を全て寝室のクローゼットにしまう。部屋を見渡せば、生々しく乱れたベッドが視界に入り、何故か生唾を飲み込んでしまった。

 

 昨晩の記憶が蘇る。

 間近にある青い瞳、憎たらしくなるほど見事な白い肌、形の良い薄い唇。初めて指を通した銀髪は信じられないほどサラサラだったし、細身だと思っていた身体には適度に筋肉がついていて、力強かった――。


 ……意外と男らしかったな、なんて。


 ああ、まずい。ドキドキしてきた。私は昼下がりの団地妻か。

 とりあえず落ち着け。深呼吸、深呼吸。


 いそいそとベッドの乱れを直して、逃げるように寝室を後にする。

 

 そうだ、今日の晩御飯はどうしよう。

 昨日、ワラワヘムへ行った帰りに市場を教えてもらったから、買い物に行こうかな。今のままでは日用品も不足しているし、洋服も欲しい。

 折角天気もいいことだし、散歩がてら出掛けよう。


 そんな事を考えながら、調子の外れた(実は音痴なのだ)鼻歌交じりに掃き掃除をしていると、玄関の扉が叩かれる。

 一体誰だろう?

 この住処を知っている知り合いはまだいないはずだ。荷物が届くわけもない。もしかしたら、ご近所の方だろうか。

 だが、『無闇に玄関を開けてはいけませんよ』というラグの言い付けを思い出し、扉を開ける事を躊躇してしまった。その間に人の気配が玄関先から消える。

 ……ご近所さんだったら、悪い事をしたなぁ。ていうか、そのうち挨拶にも行かなくちゃ。

 

「やる事いっぱいあるもんね。早く掃除を終わらせて、買い物行こうっと」


 気を取り直してリビングに戻り、掃除を再開するべく箒に手を掛け――。


「見つけたぜ、梨乃っ!!」


 そんな声を上げながら一人の男が押し入ってきた。

 大きな破壊音と共に、窓を突き破って……。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ