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約500文字の毎日  作者: 端役 あるく


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6/9

一度だけ鳴らなかった電話

 ベルが揺れない。スマホも。

 フローリングを滑るモップ。珍しく1人分の食器、こつこつと洗い減らしていく。濡れる髪の毛、肩から垂れる水滴と白いタオル。水滴はグレーのタンクトップに落ち、跡を残す。


 ベルが揺れない。スマホも。

 ふとももからしっかりと見えるパステルカラーのもふもふの寝巻き。黒縁の強い度が入ったメガネ。三角座りの背中がべったりと白い壁に着く。ノートPCの画面に映る好きな映画にハートをつけていく。


 ベルが揺れない。スマホも。

 ひりりと痛む背中と三角座りの私。ペディキュアが光る。触ると滑らかな感触が分かる。一応、爪も見る。伸びてきたからまた切らないといけない。上を見上げる。私は背が低い。座ってるし、すごく小さい。


 ベルが揺れない。スマホも。

 スマホの画面が暗い。天井のLED光がいつものように明るい。静かなのに、そこは変わらない。床に髪の毛が一本落ちている、それを拾ってゴミ箱へ入れる。三角座りが更に俯き小さくなる。ありとあらゆるところの影が止まって暗い。


 ベルが揺れない。スマホも。

 三角座りが下を向く。時計の秒針がカチカチと聞こえる。それだけ。


 口の中が焦燥する。大きく溜息をつく。ぐっと喉から押し上げられたものが目から滲みそうだった。






「ごめん、遅くなった。スマホの電源が切れちゃって」


「……」

上を見上げる。小さい私、大きい彼。


「ただいま」


「おかえり」

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