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言われなかった祝福


 願いが叶えられたのなら、それがどんなものでも、人は祝福されるべきなのだろうか。何かになりたい、何処に行きたい、どんな気持ちになりたい。


 強く強く、あいつがそれを願っていたのを知っている。およそこの集まりの中でそれを誰よりも俺は知っている。


「息子はよく頑張った。親元離れて、1人で暮らして、仕事もこなして……」その願いまでの労苦を想像して、あいつの父親はそんな風に表現する。涙がその年季の入った頬を伝う。


 同僚の俺はその父親のスピーチを一番最後列で聞いている。聞いていたが、最初らへんの言葉だけが頭を反芻して、それ以降父親がなんと言ったかは覚えていない。


 俺はただ、あいつの顔を見ていた。ぼんやりと映る視界の中ではっきりと映るあいつの写真がデカデカと掲げられている。


 あいつは死んだ。


 勤労の果て、孤独の極み、将来の不安。どのように彼の死因を記すのが正しいのか分からないが、俺は縊首、首吊りだったと聞いた。


 幾度と彼はその願いを俺に語った。ぼんやりとする言葉と結論を幾度も繰り返して、悩み果てている毎日を俺は隣で、電話越しで聞いていた。


 俺はもう一度、あいつのデカデカと映された写真を見る。あれは俺があいつの両親に渡した写真だ。それが一番いい写りだと判断されたのは偶然だろう。


 二つあったはずの被写体の一つがその写真に収められる。すっぽりと何かが俺の中から無くなったのが分かるみたいだった。

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