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約500文字の毎日  作者: 端役 あるく


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2/12

名前を呼ばれなかった瞬間

「私をそんな風に呼ばないで」

 彼女はそう言った。こちらを一つも見ずに、小さな彼女の小さな背中が伸びるのが僕には見える。


「……私達、そういう関係じゃもうなくなるのよ」

 固く、選んだ言葉が空気を満たす。


 彼女のことを僕は渾名で呼んでいた。付き合っていた時には関係の変化など想像した事すら無かった。彼女はそんな能天気な僕を嫌っているだろうか。背中は何も語らない。正面を確認して答えを聞くことも僕には出来ない。


「変わりたくないとか思ってる?」


「……」


「辞めてよ。私だって初めてなのよ。あなたとの関係がこんな風になるなんて」

 彼女の腕にぐっと力が満ちる。僕に痛みが伝播する。


「もっと良い気持ちになるものだと思っていたよ」


「違ったのか?」


「あまり何も変わらないように私は感じている」


「それは少しばかり寂しいな」


「今だけかも知れないよ。今はそう。現実味が無くて受け止めきれていないのかも」

 さらに彼女の腕に力が籠っていくのが分かる。声に少し涙腺のゆらめきが聞こえる。


 何を僕は彼女に言うべきだろうか。

 率直な気持ちは僕の中で川水のように流れて、掴みどころなく行ってしまう。だからもっと簡単な言葉で、ゆらめきを合わせて。


「結婚したんだね、僕たち」

 僕の腕の中に包まれる小さな彼女。上から見える唯一の背中は穏やかに力を抜いていく。


「うん」


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