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8. 私はヒロイン!(side ロベリア)

「母さんお願い、死なないで、、、ぐすん、、私をおいていかないで、、、ぐすん」

「ロベリア、、あなたには、、最期に話しておかなければいけないことがあるの、、、」


今わの際の母 アネモネがゆっくりと父親の話を始めた。どうやら、私はラヴァル男爵の落とし胤らしい。ロベリア ラヴァル...。もともとうっすらあった前世の記憶が鮮明になっていく。ああ!ここは私が日本の女子高生だったころ、交通事故で亡くなる直前まで遊んでいたゲーム『恋してルミエール魔法学園♡』の世界だ。私、ピンクブロンドに青い瞳の愛されヒロイン ロベリア ラヴァルに転生したんだ。


母さんの葬式を済ませると、形見のちょっと不気味な赤黒い宝石のついたブローチをもって、ラヴァル男爵家へ向かった。私の父親であろうラヴァル男爵は、初めこそ訝しげにこちらを見ていたが、ブローチと私の顔をマジマジみて少し何かを考えた後、口元にうっすら微笑を浮かべた。


「アネモネの件は残念だったが、よく来てくれた。君を私の娘として迎え入れたい。魔力検査を行い、手続きが済み次第、ルミエール魔法学園への編入手続きを行おう。」


そこからはとんとん拍子でことが進んだ。私の魔力は火属性で、魔法学園でも上級クラスに入れるだけの魔力量があった。あと、ブローチの使い方も教えてもらった。もともと父が母に渡したもので、真ん中についてる石は魔石でお守り効果があるらしい。でも普通につけているだけじゃダメで、初めに自分の血を一滴たらして所有者登録する必要があるんだそう。とりあえず言われた通り、ブローチの真ん中の赤黒い宝石に一滴の血を垂らすと、魔石はびっくりするくらい鮮明な赤色になり輝きを増した。


「学園ではそのブローチを肌身離さずつけておくんだよ。あと、君にはまだ決まった婚約者がいない。学園時代に素敵な人を見つけてくるとよい。」


「はい、お父様!」


***

「ラヴァル男爵家のロベリアと申します。魔法属性は火です。市井での生活が長かったため、貴族社会に不慣れ部分もあると思いますが、どうぞ皆様仲良くして下さい。」


私は二年生の夏休み明けのルミエール魔法学園に編入した。早速男爵家で教えてもらったカーテシーであいさつする。ここは上級クラスだからお貴族様ばっかりだ。ヴィクトル殿下と騎士団長の息子のアベル様。あ、悪役令嬢のリリアーヌ様とネモフィラ様もいる!あれ、悪役令嬢といえばアマリリス様は別クラスなのか。確かゲーム内では寄付金という名の賄賂を渡して無理やり殿下のいる上級クラスに入ってた気がするんだけど、まあいっか。ん?あれ、リュカ君もいない。リュカルート攻略中に私死んじゃったから、リュカ君とお話してみたかったんだけどなあ。


まずは魔力があっても使い方がよく分からないから、攻略対象者でもあるサヴォイア先生のところに行った。同じ火属性だし、基本的なところから教えてもらおう。ゲームだと妹のネモフィラ様がひたすら付きまとって邪魔してくるはずなんだけど、全然来ない。とりあえず先生のナルシストぶりは健在だから、おだてておくか。うーん、なんか距離感近い気がするけど、熱心に教えてくれるし、魔法の練習ってこんな感じなのかな?


中庭ではヴィクトル殿下が女子生徒に囲まれていた。さらさらの金髪に紫色の目、さすが王子様!前世の私の一番の推しだ。でも、女子に囲まれてニヤニヤしているような人だっけ?あ、アマリリス様がモブの女子生徒を牽制していないからか。あいつら"仕事"さぼりやがって。もしかして悪役令嬢達も転生者なのかな?足を引っかけられて転ばされることもないので、殿下の周りに女子生徒がいない瞬間を狙って近づいて、目の前でわざと躓いて教科書を落とした。


「大丈夫か?」


意外にやさしいヴィクトル殿下は一緒に拾ってくれた。チャンスだ。


「殿下ありがとうございます♡ラヴァル男爵家のロベリアと申します。私編入生でまだ学園に慣れてなくて、心細くて、、、同じクラスなので仲良くしてくださるとうれしいです♡」


上目遣いでかわいらしく言う。殿下が嬉しそうに微笑んだ。それから殿下が実習のペアを組んでくれることが多くなった。殿下の周りに群がるモブの女子生徒たちは殿下自ら追い払ってくれた。いい感じ!好感度を確認したいから、サポートキャラのマルセル ルテルに会いたいんだけど、ぜんぜん姿を見せない。殿下の側近候補じゃないの?!でも、このままいけば王太子妃も夢じゃない気がする、ゆくゆくは王妃様!一瞬そう思ったけど、今から何年もかけて王太子妃教育をこなすの辛そうだ。貴族の一般教養すらおぼつかないし。ここはゲームの世界であるけど、私の人生はゲームではない。現実的になればなるほど攻略対象者を一人に絞ることができなかった。こうなったら一旦逆ハーエンドを狙って、最後に選ぶか。


そうと決まればアマリリス様のことも気になるし、義弟のエミール様に声をかけてみよう。エミール様はアマリリス様と同じ銀髪碧眼で少年っぽい顔立ち。殿下とはまた違った魅力だが、こちらもよく人目を惹く。図書館に入っていくところを捕まえて声をかけてみた。


「え、姉さまですか?もしかしてあのクソ殿下また姉さまを放って遊び惚けて。」


ん?こちらも調子が違う。あんた、義姉にいじめられているんじゃないの?ていうか、どっちかっていうと完全にシスコンじゃん。


アベル様も同時に狙っていく。たしか攻略対象としてはちょろい方。剣術の稽古にお菓子を差し入れると簡単に好感度が上がる。そもそも頭はいいけどプライドが高い婚約者のリリアーヌ様と性格が真逆で仲良くないんだよね。リリアーヌ様って魔法はすごく得意だけど、体動かすの好きじゃなさそうだし。まずは稽古場に行ってみよう。あれ?リリアーヌ様とアベル様が仲良く話してる。っていうか差し入れのお菓子もおいしそうだな。さすが侯爵家のお嬢様だ。


それにしても悪役令嬢と攻略対象が仲良さそうにしているのは、初めてのパターンだ。なんかヒロインとしてのやる気が出てきた。まずはちょっと様子をうかがって情報収集をする。ふーん、今度の剣術大会、リリアーヌ様は来れないのか、これはチャンスだ。リリアーヌ様が来ないというその大会に行ってみよう。


「編入生のラヴァル男爵家のロベリアと申します。先ほどの試合カッコよかったです♡差し入れでクッキー作ってきましたの。もしよかったら召し上がってください♡」


「うわあ、ありがとう!」


好感触だ!その後も褒めちぎっていたら、ころりと落ちた。週明け話してかけてくるリリアーヌ様を無下に扱うアベル様。ふふふ、なんか楽しくなってきた。ついに一人じゃ心細かったのか、リリアーヌ様がネモフィラ様と一緒に現れた。


「アベル、話があるんだけど…。」


「は?来るなって言ってるだろう。」


怒気にあふれた口調で、アベル様がにらみつける。ついほくそ笑んだ。


「アベル君、大事な話だ。君は聞く必要がある。」


ネモフィラ様も一緒になって説得してくる。


「うるさいなあ。未来の王太子妃様の取り巻きどもが。」


「"悪役令嬢"さん達、必死になって大変そうね。」


そういって、私たちはその場を去った。その後は視線は感じることはあっても全く話かけて来なかった。


ああ面白いって愉悦に浸っていたら、リリアーヌ様が失踪した。実家の侯爵領には戻っていないし、騎士団が王都中捜索したけど見つからないんだそう。さすがに一か月以上経って、若い貴族令嬢が一人でこんな長いこと失踪できるわけない、自殺したんじゃないかってとうとう捜査が打ち切りになった。そういえば彼女のお母さんも自殺したんだって。最後は本当に辛そうにこっちを見てたし、私も侯爵家次男のアベル様は婚約者の一番候補っていうわけでもないし、初めて罪悪感を覚えた。


アベル様も元気がなさそうだ。そりゃそうだよね。でもアベル様が勝手に私に惚れてリリアーヌ様に冷たくしたんだよ?


「元気ないですね。マドレーヌ焼いたんで、食べて元気出してください♡」


「ああ、ありがとう」


マドレーヌを頬張るアベル様。少し元気でたみたい。やっぱりちょろいし薄情なやつだ。


***

結局、アマリリス様の義弟のエミール様は手を替え品を替え何度か話しかけて、一瞬だけこちらに(なび)きそうになったけど、結局シスコンはシスコンで(らち)が明かず諦めた。最後の攻略対象者リュカ君も学園中探しまわったけど見つからず。ゲームにあったイベントは起きたり起きなかったりで、なんか思っていたのと違ったけど、概ね攻略済みの3人とは仲良く過ごすことができた。卒業後誰か一人に絞るとするとやっぱり殿下かな?ついに卒業式だ!


逆ハーエンドのシナリオだと卒業パーティーで攻略対象者が揃ってそれぞれのルートの悪役令嬢を断罪する。でも、この学園生活、悪役令嬢達とはほぼ接点がなかったな。ヴィクトル殿下と親しくしていたら、モブの女子生徒からちょこちょこ嫌がらせはされたけど。うーん、でもこのままじゃ卒業パーティー盛り上がらないよね?ちょっと仕込ませていただきますかね?

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